美月体育館呼出

悪夢の前夜祭


 第二部



 四十二

 「誰なの。そこに居るのは・・・。」
 気合負けしないように、わざと毅然と声を高くして言ってみる。すると美月の方を照らしていたスポットライトの光の輪が少し動いて体育館中央の床の方に移る。その光の輪の中に何かが黒い影になって置いてあるのは見えた。
 (何だろう・・・。)
 おそるおそる美月が光が当てられている部分に近寄ってみると、一枚の紙きれの上に鈍く光る手錠とアイマスクが置いてあるのが分かった。下の紙を取り上げるとDVDと一緒に届いた手紙と同じカナ釘流の文字で指示が書いてある。
 『目隠しを着けたら、手探りで自分の手首に手錠を後ろ手で嵌めて待て』
 (目隠しをしたうえで後ろ手錠だなんて・・・。そんな格好になったら犯してくれと言ってるようなものだわ。)
 美月は今すぐにも逃げ出すべきなのか迷った。しかし昼間届いた手紙の文句を思い出してしまう。
 『これをばら撒かれて困るんだったら・・・』
 (そうだわ。ここで逃げ出したらあれをばら撒くつもりなんだわ。そんな訳にはゆかない。身体を張ってでも早乙女玲子を守らなくてはならないのだ・・・。)
 昼間の決意を思い出した美月はアイマスクの目隠しと手錠を取り上げる。開いた輪っかになった手錠の嵌め方を確かめると先にアイマスクを頭から被る。
 何も見えなくなると急に不安になる。しかしもう後戻りは出来ないのだと自分に言い聞かせると手錠を持った手を背中に回して手首に嵌める。もう片方も手首に嵌めて絞めてしまう。外せないか輪っかを開こうと試してみるが手錠は既にロックされてびくともしなかった。

高野恭子顔

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