
悪夢の前夜祭
第二部
三十七
「だ、駄目よ。誰かに見られたらどうするの? そ、それに寒いわ。」
菜々子は身体をぶるっと震わせる。それはしかし裸の肌に直接あたる風のせいだけではないことに菜々子は薄々気づいていた。
「ねえ、お願い。ちょっと待って。・・・・。」
菜々子はそこで言い淀んでいる。
「どうしたんだい。何か言いたいようだけど?」
「あの・・・。お、おトイレに行かせてほしいの。」
「トイレだって? トイレにいってどうしたいのさ。」
朱美は意地悪く菜々子に窮状を告げさせようというのだった。
「さ、はっきり言ってごらん。何がしたいのかって・・・。」
「うっ。お・・・。オシッコをさせてください。」
「オシッコ?」
朱美はわざと大きな声を挙げて繰り返す。菜々子は恥ずかしそうに俯いて耐えている。
「我慢出来ないのかい?」
「ううっ。は、はいっ。もう洩れそうなのです。さっきからずっと我慢していたのです。」
「しょうがないなあ。じゃ、連れてってやるよ。」
朱美が再び首輪の紐を牽いて歩きだしたので、菜々子はほっとする。しかし次の瞬間、菜々子は愕然とするのだ。
「え、ここは男子トイレじゃないの。え、ここでするの?」

「そうよ。出来るでしょ。幸い、何も服を着てないんだから便器に身体をくっつけるだけでいいのよ。」
朱美はそういうと、男子小用便器の水道管に首輪の縄の端を結び付けてしまう。
「ねえ、お願い。せめて個室でさせてっ。」
振り向いて懇願する菜々子の目に悦子が自分の方に向けてビデオカメラを構えているのが見えたのだ。
「こ、こんなところを撮るつもり? やめてっ。ああ、もう洩れそう・・・。」
呑まされた強力な利尿剤のせいで、これまで経験したことがないような尿意を募らせていた。
「う、もう我慢できないわ。」
自分がどんな惨めな格好をしているのか考えないようにして、脚をがに股に開くと男子小便器に向かって裸の下半身を押し付けるのだった。
「あ、出てる。出てる。悦子、近寄ってアップで撮ってあげて。顔もよ。」
「ああ、やめてっ。もう赦して・・・。」
しかし菜々子の願いも虚しく放尿している間中、がに股に開いた脚の付け根を後ろからと、放尿中の顔まで撮られ続けたのだった。
放尿し終わっても、陰唇からは滴がぽたぽた落ちてなかなか止まらなかった。
「先生。まだあそこから滴が垂れてるよ。ペーパーは無いんで拭いてあげれないから、身体を上下に揺すって最後の一滴を捻り出すのよ。」
朱美に言われても、そんなあさましい格好はすることが出来なかった。内腿に滴を垂らしながら、菜々子は再び男子トイレから引き摺り出されたのだ。
菜々子は、あの晩スマホの画面で見ていた水野美保が男たちの前で放尿させられた際にどれだけ辛い思いをしたかを自らの経験で思い知ったのだった。
「さあ、今度は教室に行って調教よ。」
「え、調教ですって? まだ何かさせようと言うの?」
「アンタが命令に何でもはい、はいって聞くようになる為の訓練よ。」
「ああ、そんな・・・。」

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