悪夢の前夜祭
第二部
三十四
「それを首に巻くのよ。」
「これって、犬なんかに使う首輪じゃないの・・・。」
「あら、よくお似合いよ。お尻を見せて頂戴。」
全裸にならされた上に首輪まで嵌めさせられた菜々子は屈辱感にさいなまれながら二人の女子生徒に裸の尻を向ける。
「悦子。その服は邪魔だからそこのゴミ箱の中に放り込んでおいて。」
「え、そんな・・・。」
「アンタの方は縛ってあげるから両手を背中で交差するのよ。」
(縛られる)と聞いて、菜々子は嫌な予感が次々に的中していくのを感じていた。悦子が廊下の端に据えられているゴミ箱に自分の服を放り込んでいくのを見ながら、菜々子は観念して両手を後ろで組む。
「さ、アンタがお願いするのよ。」
「え、お願いって?」
「この状況で何を言うべきか、分からないほど馬鹿じゃないでしょ。」
「えっ、うっ。あ、あの・・・、縛って・・・ください。」
「は? 何ですって? 先生、よく聞こえなかった。」
「あの・・・。私を縛ってください。」
縛られるのを自分から要求するように言わされ、菜々子は朱美から手首に縄が二重に巻かれ、もう片方にも同じように巻かれると結び目がきっちりと作られる。
「悦子。そのビデオカメラも持ってきてね。じゃ、先生。校内をすこしお散歩しましょ。さ、ついてくるのよ。」
(ビデオカメラが回されてただなんて・・・。)
菜々子は言われて初めて昇降口の下駄箱の上にカメラが載っていて、しかも録画中を示す赤いランプが点灯していたのに気づいたのだった。
朱美は菜々子の首に嵌められた首輪につながっているリードのような赤い紐の端を掴むとそれを引っ張って廊下を歩き始める。悦子のほうは菜々子の服を全部ゴミ箱に放り込んでしまうと、傍に置いてあった竹刀を取り上げて後ろから付いてくる。
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