女子自慰の仕方

近未来性教育プログラム




 七

 (ふうん。女の子って、こんな風にオナニーをするんだ・・・。)
 来世(らいせ)アキトは、新世代性教育プログラムの最後で封筒に入った状態で渡されたパンフレットを再度読み返していた。配られた封筒に入っていたのは『女子の正しい自慰の仕方』と書かれた指南書のような手引き書だった。最初は女子用のものが間違って自分に配られたのだと思っていた。しかし冷静に考えてみて間違ってではなく意図的にであるとだんだん思うようになっていた。
 アキト自身、オナニーをした経験はなくはない。その仕方を誰に教わった訳でもないが、自然に出来るようになっていた。しかし、女子が同じようにオナニーをしているものだとは思ってもみなかったのだ。
 前回突然行われた新世代教育プログラムと称する講義で、生まれて初めて同じ年代の異性の性器に触れたのだった。それは衝撃的な経験だった。性器の形は、以前に受けた小中学校の性教育では抽象的にぼやかされた形でしか学んでいなかった。それを生身の人間の肌の感触で初めて知ったのだった。更にそれに加えてのこの女子の性教育資料なのだった。
 (そう言えば、あの時女子の陰唇に指を入れたらそこは濡れていたっけ。)
 それもあの性教育プログラムで初めて知ったことだった。しかしこの指南書に依れば女子も性的に興奮してくると性器である陰唇の内部が潤ってくると書いてあるのだった。その潤みが生じるまではむやみに性器の内部に指を入れてはならないと書いてあった。女性が性器内部以外の部分への愛撫で感じてくれば自然と陰唇内部は潤ってくると指南書には書かれていた。
 (あの時の女子は身体に触れた時点で既にもう感じていたに違いない・・・。)
 アキトはそう確信していた。

 同じ頃、味蕾(みらい)アキホも新世代性教育プログラムの終わりに渡されたパンフレットを読み返していた。そこには
『男子の正しい自慰の仕方』と題された文章が図解と共に記されていた。
 (男子って、性的に興奮するとあんな風に勃起するんだ・・・。)
 アキホはあの授業で生まれて初めて握った男子のペニスの感触が忘れられないでいた。
 (あんなに大きくなるんだ・・・。それにすごく熱く感じた。)
 目を瞑るだけで、あの時の感触が蘇って来る。それだけで自分も興奮してきて、陰唇の奥が潤ってきているような気がしていた。

男子自慰の仕方

 (うわっ。もうこんなに濡れている・・・。)
 堪らなくなって思わず下着の中に手を入れてしまったアキホは自分の陰唇の奥が既に濡れてきているのに驚いているのだった。
 アキホはパートナーの男子が自分のスカートを捲り上げてお尻の方から陰唇に指を差し入れて来た時のことを思い返していた。男子の指先が自分の陰唇の中に触れた瞬間に自分の身体に電撃的なショックが走ったのを思い出す。
 (ああ、あの気持ちをどうにかしてもう一度感じたいっ。)
 アキホは自分でも意識しないまま、自分の指先を陰唇の中で擦り続けているのだった。

薫

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