近未来性教育プログラム
十五
龍之介といちはの会話を聴き終えた薫は、盗聴用のイアホンを外す。新世代性教育プログラムの受講生である特別選抜クラスの生徒の胸元にはその地位を表すピンバッジが留められていた。実はそのピンバッジには高性能集音マイクが仕込まれているのだがその事は校長と担当教官である薫以外には知られていない。特別授業の後、受講した生徒等の会話を盗聴することで、教育成果の進展をモニタリングすることも薫の重要な使命のひとつだったのだ。
来世アキトと味蕾アキホの密会の情報を聴きとった薫は早速盗聴器のイアホンでその全貌を聴きとった。本人達の意思で二人きりで行われた体育館用具室での逢引の様子は、薫の想像を遥かに超えるものではあったが、初めてのキスをするまでで終わった。二人の行為からは性行為への躊躇いと不安が感じられ、何らかの後押しが必要であることを示唆していた。
その後の樋口龍之介と芥川いちはの二人だけの生徒指導室での逢引は、いちはが薫に部屋の鍵を貸して欲しいと言ってきたことから発覚した。
同じように二人の会話を盗聴していた薫は、その内容が想像を絶するような過激なものだったことに薫自身が狼狽えてしまっていた。いちはのリードによって龍之介が勃起してゆき、射精にまで至る様子はイアホンで音を聴いているだけの薫にもその姿がリアルに想像されるのだった。龍之介の呻き声から想像されるペニスの怒張の様子に、何時の間にかイアホンを付けたまま薫の手は無意識のうちに自分の股間に延びていたのだった。
薫自身の青春時代は律新社会党が政権を取る前で、普通に男女間で恋愛が行われていた時代だった。学生時代の薫にも恋人が居たのだが、男女間の付き合いには晩生だった薫は男性の方から性交渉を迫られた際に、つい逃げてしまったのだった。その事を女友達に相談したところ、その女性にまんまと恋人を寝取られてしまう羽目に至ったのだった。
それ以来、自分が悪かったのだとは反省出来ず自分を振っていった男を恨んで男性不信に陥り、ずっと恋人が出来ないでいたのだった。
薫自身にとっても男性との性行為は未知の世界で、生徒を指導出来るような立場ではないと思っていたのだが、政府主導の新世代性教育プログラムの講師に白羽の矢が立った時にどうしても自分は処女だからと言い出せなくて引き受ける羽目になってしまったのだ。
そんなせいで、龍之介がいちはの手で射精するまでイカされるのを耳で聞いただけで刺激が強く、無意識のうちにオナニーまでしてしまったのだった。
(ああ、私もフェラチオってしてみたい・・・。私の手で男子のペニスを握ってイカせてみたい・・・。)
何時の間にか薫は自分自身が龍之介を前にしたいちはに成りきっていたのだ。
(お願いっ。貴方の太いそれで、わたしのここを慰めてっ・・・。)
薫は自身の濡れそぼった陰唇に突っ込んだ二本の指でクリトリスの裏側を必死に慰めるのだった。
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