妄想小説
不妊治療外来
二十五
「あら、お久しぶりですね。武市さん。今日は予約、入ってましたっけ?」
「いや、今日は妻を連れて来たんです。私じゃなくて妻のほう。私の方は付き添いです。」
そう言うと涼馬は後ろに控えていた妻のなな実を前へ押し出す。
「こ、こんにちは。」
受付の応対に出た古手の看護婦、恵美は涼馬の妻であるなな実がこれまでとは若干雰囲気が違うことに何となく違和感を覚える。
「今日は私の方が先生にちょっと診察して頂きたくて。予約はしなかったんですけど、大丈夫でしょうか。」
「ええ、今日は何故か全然空いているので大丈夫ですよ。このところお見えにならなかったので、どうしたのかなと思っていたところです。おや、なな実さん。首のそれ、お洒落ですね。」
看護婦の恵美は、なな実の首に巻かれているアクセサリを目聡く見つけてお世辞を言う。
「ああ、このチョーカー? これっ。主人がどうしても着けろっていうんで。何か変じゃありません?」
恵美もその手のアクセサリーが所謂ネックレスというものではなくて、チョーカーというタイプであるのは知っていた。しかも、チョーカーには男性が女性に身に着けさせる時は、この女は自分の所有物であるということを誇示したいときに使うものだということも。チョーカーを着けさせられた女というのが、以前とは違う印象を与えているのかもしれないと恵美は思うのだった。
「先生の準備が出来たら及びしますのでそのまま待合室でお待ちください。」
「武市なな実さん、第二診察室の方へお入りください。」
名前を呼ばれて、待合室に涼馬を残してなな実は一人で診察室へ入っていく。
「おや、なな実さん。しばらくぶりですね。どうですか、調子は?」
医師はなな実に患者が腰掛けるスツールを薦めながら話しかけた。
「ええ、実はこのふた月ほど生理が無かったものですから、もしかしたらと・・・。」
「ほう? それは朗報かもしれませんね。早速、診て観ましょう。下着を取ってあちらへどうぞ。」
医師は診察専門の台を指し示す。脚を開く格好に踏み台が付いているものだ。
「先生、私のここ。今、こんなになっているんです。」
下穿きをスカートを穿いたまま抜き取ったなな実は、立ったままの格好でスカートの前を捲り上げてみせる。そこには縦真一文字の形の陰唇が剥き出しであった。陰毛を全て剃り落してあったのだ。
「夫がどうしても剃りあげてみたいと言って無理やり・・・。」
医師はあの大人しかった涼馬という夫が、目の前のなな実が嫌がるのを無理やり剃毛している姿を想像していた。
「夫は先生に何かアドバイスされてから随分様子が変って。でもそれから急に夫の精力も凄くなったんです。性交中でもとても激しくなって・・・。そしたら、途端に生理が来なくなって。」
「ははあ、よくあることですよ。で、あなたはどうだったんです?」
「性交中に今までになく快感を憶えるようになって・・・。何かセックスがこれまでと全く違うものに思えるようになったんです。」
「ほう、それは良かったんじゃないですか。」
「セックスで男の方に仕えるっていうんですか、セックスして貰うっていう気持ちで臨むと、何だかこれまでと違う自分に成れるっていう気がしたんです。」
「それが成功の秘訣だったのかもしれませんよ。」
医師はなな実の首に嵌められているチョーカーをちらっと見て、夫婦の営みが大きく変化したことをそれから想像した。
「では、あそこを診てみましょう。台に乗って脚を開いてみてください。」
医師は膣内を覗きこむ専用の器具を用意しながら、なな実を診察台へと促すのだった。
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