恵美

妄想小説

不妊治療外来



 十八

 「あら、芙美ちゃん。診察室、追い出されちゃったのね。」
 「あ、恵美先輩。追い出されちゃったってことはないと思うけど、何か患者さんが恥ずかしがるから外に出ているようにって先生が仰って。」
 「ふふふ。と言う事は、そろそろ始まったって訳ね。」
 「え、始まった?」
 「あ、いいのよ。判らなくて。先生、あの患者さんの事、大分気にいってるみたいね。」
 「ああ、そう言えば最近診察時間長くなってますよね。」
 「先生のタイプなのよ、ああいうの。」
 「へえーっ。そうなんですか。」
 「だって旦那だって結構な齢でしょ。あんな若い奥さん貰って。もしかして、奥さんのほうが財産目当てなのかも。」
 「えーっ、まっさかあ・・・。でも、案外、そうなのかな。あ、でもだから何としても子供が欲しいのかもしれない。」
 「って事は、結構な遺産があるってことね。ありそうな話だわ。そう言えば最近、あのイケメン君と年上女房、あまり来てないわね。」
 「あ、武市さんて夫婦ね。一時はあんなに熱心にしょっちゅう通ってられたのに。うまく行ってるのかしら・・・。」
 「開眼したのよ、きっと。いや、先生が開眼させちゃったってことかな。不妊外来に通う暇も無いくらいセックスしまくってるのよ、きっと。」
 「まあ、そんな・・・。」
 芙美子はついあの武市涼馬という青年とその妻、なな実のことを想像してしまう。あんな自分ではなかなか射精も出来ないような男性が、年上の女性相手にちゃんとセックス出来るのだろうかなどと考えながらも芙美子が思い描く二人の性交シーンでは涼馬になな実のほうが跨っている姿しか思い描けないのだった。

 「奥さん、いいですか。きつくないですか?」
 医師は優愛にビロードの帯で目隠しをして頭の後ろでそれを括り上げる。
 「旦那さんをずっと思い浮かべているのです。いいですね。いつものように・・・。寝室で。貴方の後ろにきて、貴方の手首を掴む。こんな風にね。」
 医師は目隠しをされた優愛の手首を優しく掴むと背中に導き、手にした綿ロープを巻き付けていく。
 「さ、そっちの手も・・・。いつもの夜みたいになりましたか? さ、思い浮かべて。」
 両手の自由を奪うと、医師は優愛の肩を掴んでそっと診察室の簡易ベッドの上に押し倒す。
 「旦那さんは? ああ、もう寝てしまったようだ。貴方を縛ったままで残して。貴方はもっと愛撫して欲しいのに・・・。そうでしょう? こことか。」
 医師は優愛のキャミソールの肩紐を肩から外すと、下に引き下げていく。背中のブラのホックを外すと、たわわな乳房がやっと自由になれたとばかりにぶるんと震える。その中心で既に大きくなって上を向いている乳首に医師の指がそっと触れる。横から擦り上げるように撫でていくと、優愛の口から大きな吐息が洩れた。
 「あそこも・・・、して欲しいのですよね。」
 医師の手が優愛の腰骨の辺りに触れただけで、優愛は身体をびくんと反応させる。その医師の指がそっとキャミソールの端を掴むとゆっくりと裾を引き上げていく。優愛は医師の指が自分の太腿に直接触れた感触で、キャミソールがすっかり肌蹴させられてしまったことを認識する。医師の指がその下のスキャンティに掛かる。優愛は思わず生唾を呑み込んでしまう。
 スキャンティがゆっくりと下げられ始めるのが判るともう我慢が出来なくなる。
 「ああっ・・・。」
 思わず挙げてしまった喘ぎに自分の口を押さえたいのに、両手首を縛った縄がそれを許さない。途中まで下されかけたスキャンティに沿って、医師の指が腰骨の方から身体の中心へ向けてゆっくり滑るように動いてくる。
 (夫が・・・・、夫があそこに触ろうとしている。)
 優愛はビロードの目隠しで見えない宙に夫の存在を思い浮かべている。
 「あっ。」
 指がつるつるに剃り上げられた割目の端にまで届いてしまった。
 (あ、そこ・・・。もっと奥っ・・・。)
 言葉を発しないように必死で優愛は堪える。
 (ああ、そこに入れてっ・・・。)
 しかし医師の指は割目の上で躊躇している。その代りに仰向けになった優愛の尻の下にもう片方の手が挿し入れられてきた。柔らかな尻たぶの肉を押しのけるようにして後ろ側から鼠蹊部に迫ってくる。そしてその指の先端がついには会陰の部分にまで到達する。優愛の陰唇が上と下から蹂躙されてゆく。
 「ああ、いいっ・・・。」
 優愛は自分の陰唇から何かが滴り出るのを確かに感じ取っていた。

 30分が経って、芙美子が診察室のドアノブに触れようとした時にその向こう側でガチャリと何かが外れる音がした。芙美子は音が聞こえなかった振りとして、もう数十秒待つことにする。
 「先生、そろそろよろしいでしょうか?」
 そう声を掛けてから芙美子は第二診察室へ入ってゆく。医師の前でスツールに腰掛けた患者が身繕いを直しているところだった。
 「もうあと何回かセラピーをお受けになれば、大分改善するでしょう。忍耐強く身体を慣らしてゆくことが大切です。では、お大事に。」
 「ありがとうございました、先生。」
 患者は深くお辞儀をして椅子を立つと、近づいてくる看護師には軽く会釈だけして擦違う。
 「お大事に。」
 芙美子も決まり文句の言葉を発しただけで優愛を見送ったのだった。

芙美子3

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