妄想小説
不妊治療外来
十
涼馬は手にした綿ロープをどうやって寝室に持ち込むかを色々思案した挙句、背中の方に隠し持ってなな実が居る寝室へ入っていった。なな実は股下ぎりぎりまでしかない所謂ベビードールというタイプの薄手で下着が透けて見えるランジェリーを纏っている。して欲しいという合図なのだ。ベッドの俯せになっているが寝込んでいないことは明らかだった。
ゆっくりそのなな実に近づいてゆく。
「あの・・・。」「ねえ、・・・。」
涼馬となな実が発する声が重なった。
「え? ・・・。な、何?」
涼馬がなな実に発言を譲る。
「ねえ、今日はちょっといつもと違うことをしてみたいの。」
「違う・・・事?」
「縛られて・・・みたいの。縛られてするって、どんなだか一度試してみたかったの。」
妻の方から発せられた言葉に涼馬は耳を疑う。
「ここに縄があるわ。これで私の手首を縛ってっ。」
そうなな実は言うと、寝そべった身体の下からロープの束を取り出して傍らに置き、自分は俯せになったまま、両手を背中で交差するのだった。
思わず生唾を呑み込んだ涼馬は、自分が隠し持っていた綿ロープの束をなな実に気づかれないようにそっとソファの下に後ろ手で放り投げる。
「いいのかい?」
ベッドの上に片膝を載せてなな実の身体の上に跨ると、ロープの束を手繰り寄せる。
(そうだ。いいのかなどと訊いてはいけないのだ。有無を言わせず従わせなければ・・・。)
医師の忠告を一つひとつ思い起こしながらなな実の手首を取る。看護師の柔らかな手の肌の感触が記憶から蘇ってくる。
(手早く、一気に・・・。)
心の中で医師のアドバイスを呪文のように唱える。
片方の手首にロープを二重に巻きつけると、その上にもう片方の手首を重ね一気にそちらにもロープを廻す。
「あうっ。」
両手首の自由が効かなくなるのを感じ取ったなな実の口から思わず喘ぎのような声が洩れる。解けないように縄の余り部分を何度も瘤のような結び目を作ると緩まないか縄の端を引っ張って確かめる。自由を奪ったなな実の肩に手を掛けると自分の方へ引き寄せようとするが、なな実は抵抗出来ない身体を見せるのを嫌がるかのように身を縮込ませて抗うような仕草を見せる。涼馬はまず窮屈になってきている自分の下半身を解放するためにズボンのベルトを緩めチャックを下に引き降ろす。既に硬くなり始めたモノが膝まで降ろしたトランクスの下からブルンと飛び出てくる。その熱くなってきた肉棒を自由を奪ったなな実の手の中に押し当てるようにしながら背中側からなな実の腰骨あたりを弄る。
「ああっ・・・。」
なな実が声にならない喘ぎを口にする。なな実の指に太い肉棒がからもうとする。最初は押しのけようとしていた指がその肉棒を握り始める。腰骨に掛かった涼馬の指が更に身体の中心に向けてにじりよると、その先にあるものに触れられる予感になな実は堪らず背を仰け反らせる。
「ああ、駄目っ・・。」
その声は涼馬の指の凌辱に対してではなく、自分自身がそれで感じてしまうのを禁じているかのようだった。涼馬の手が無防備な短いランジェリーを捲り上げる。下着一枚で露わにされた下半身を想像して、なな実は肢体をくねらせて抗う振りをする。しかしその太腿は簡単に涼馬のがっしりとした手に抑え込まれてしまう。その太腿を捉えた手の指が、腿の肉を揉みしだくようになな実の下半身を弄びながら次第に上のほうへ這い上がってくる。なな実は堪らず身悶えをし始める。
「ああ、駄目っ。ああ、そんな事・・・。」
その言葉とは裏腹に、なな実の喘ぎ声はその指が早く到達して欲しいことをせがんでいるかのようだった。
「ああ、そんなに焦らさないでっ。」
その声に涼馬は思わず嗜虐的な思いに駆られる。いきなり肩を掴んで無理やり俯かせると、尻からランジェリーを引き剥がすように捲り上げ、露わになったショーツの両端を掴んでいきなり引き降ろした。
「ああっ、いやっ。」
いきなり裸に剥かれた尻を丸出しにしているのが恥ずかしくてなな実は身体を捩らせる。しかし涼馬がその太腿に馬乗りになってそれを抑えつける。
パシーン。
軽く乾いた炸裂音が寝室に響き渡る。涼馬の平手がなな実の白い尻タブを打ったのだ。
(下着を降ろしたら、裸の尻を音がするように平手で打つのです。その痛みがではなく、抵抗出来ない無念さが、女の欲情を更に呼び覚ますのです。)
医師の言葉を思い出しながら、涼馬は更にもう一発なな実の無防備な尻に平手打ちを与えるのだった。
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