妄想小説
続・訪問者 悪夢の教団総本山
六
その像の直下に姿見があって、京子はそこに自分自身が全裸で前を隠すことも出来ず戒めを受けて立っている全身の姿を認めた。
(何故、こんな所に姿見が・・・。)
そう訝し気に思った京子は次の瞬間これはマジックミラーで、自分には自分の姿が映っているようにしか見えないが、向こう側からはこちらの姿を覗かれているのではないかと気づいた。
「そ、そこに居らっしゃるのですか。教祖さま?」
「いかにも。」
野太い声がする。それは鏡の向こう側から話しかけているというよりも、何処かに見えないように設置されている巨大なスピーカーを通して語りかけているように思われた。
「わ、私は教祖さまにこの教団から脱退することを認めて頂きたくて参りました。」
「つまりは還俗するという事かな。」
「還俗? ・・・。え、ええ。そういう意味です。」
「自分から還俗すると申し出るとは、ゆくゆくの決意のことなのだな。」
「え、ええ。何が何でも、この教団から脱退させて頂きとうございます。」
「ふうむ。・・・。還俗の為にはそなたのゆるぎない決意を示して貰う必要がある。その為に厳しい還俗の儀という試練を受けることになるが、その覚悟はあるのか?」
「還俗の儀・・・? それが何かは判りませんが、私にはそれなりの覚悟がございます。」
「そうか。ならば還俗の儀を受けてみるがよい。その上で、もう一度この場へ来るのだ。よいな?」
「わ、わかりました。どんな試練か判りませんが、必ずそれに堪えてこの場に戻ってまいります。」
「ならば、往くがよい。」
そう声がすると、すっと謁見の間の明かりが落され辺りは真っ暗闇になる。何時の間にか自分をこの場に連れてきた巫女らが京子のすぐ後ろに迫っていたらしく暗闇の中で京子の眼に目隠しが施される。そして両腕をしっかりと捉えられ、謁見の間を出てゆくらしかった。
京子が再び目隠しを取られたのは、さきほど謁見の間に入る前の部屋とは違う部屋だった。目隠しを取られると共に、背中で括られた戒めが解かれる。
「こちらの教誨衣をお召しください。」
「キョウカイイ・・・?」
「還俗の儀を受けるものが身に着ける装束です。」
「はあ・・・。」
京子の眼の前のテーブルにはきちんと畳まれた僧衣のようなものが置かれていた。京子がこの総本山の建物に入ってすぐに身に着けるように言われた僧衣とほぼ同じもののようだった。しかし、それを持ち上げて頭から被ってみて、先程着せられた僧衣とは違っておそろしく丈が短いことが判る。先程までのは踝までを蔽うような長さがあったものが、股下ぎりぎりまでしかないのだ。
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