妄想小説
続・訪問者 悪夢の教団総本山
二十二
翌朝、ホテルで吾郎とは別のテーブルで京子と一緒に朝食を採った悦子はホテルのチェックアウトを済ませると一緒に駐車場へ向かう。後でホテルのお金などを送るからという京子には嘘の住所を書いた紙を渡しておく。車には先に吾郎に乗り込ませて後部座席で隠れていて貰うことにした。
「じゃ、お玉ヶ池峠というバス停まででいいのね。わかったわ。行きましょう。」
そう言うと、申し訳なさそうな顔をしている京子を尻目に車をスタートさせる。車はどんどん山を昇って教団総本部に近づいていく。その途中の最初のバス停がお玉ヶ池峠なのだった。
「あれ、今通り過ぎたの。お玉ヶ池峠じゃなかった?」
「えっ、違うと思うけど。」
「そんな筈ないわ。最初のバス停だった筈だから。これじゃ、どんどん教団総本山に戻って行っちゃう。」
「いいじゃないの。ちょうど私も総本山に用があるから。」
「え? 何ですって? 貴方、教団総本部の人なの?」
「ふふふ。そうよ。今頃、気づいた?」
「停めて。今すぐ止めて車から降ろして。」
「そうは行かないわよ。吾郎、もう出てきていいわ。そしてその縄でこの女を縛っちゃって。」
「あ、はあい。わかりましたぁ。」
「え、後ろに誰か居たの? あ、止めて。は、放してっ。ああ、縛らないで。」
「静かにしなさい。吾郎、このクロロフォルムを沁み込ませたハンカチ、こいつの口の中に押し込んで。その縄で猿轡もするのよ。」
「あ、いやっ。やめてっ。あぐ、あぐぐぐっ。むふっ、むむむ・・・。」
「さあ、総本山までのドライブ。おとなしく連れて行かれるのよ。ふふふ。」
捕獲された京子は樫山との待合せの場所を通り過ぎて、悦子の車で教団、総本山まで連れ戻されてしまうのだった。
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