オナニー

妄想小説

続・訪問者 悪夢の教団総本山


 十七

 京子が我に返った時には、前の日と同じ様に既に自分にあてがわれた部屋のベッドの上だった。腹上で失神して果てた自分を巫女たちが抱えて運んできたのに違いなかった。しかし、あの時の至福の愉悦感は、目を瞑るとありありと蘇ってきた。気が付くと京子は自分の陰唇に指を当てているのだった。
 (何をしに、自分はあの部屋を訪れたのだったろうか・・・。)
 もはやそれさえも、京子には判らなくなってしまっていた。
 (ああ、あの部屋で熱い肉棒にもう一度思い切り突かれたい。ああ、駄目っ。またオナニーしてしまう・・・。)
 京子は自分の指を陰唇に当てて擦り上げなたらその感触を楽しんでいる。
 (あれっ、もしかしてあの時の肉棒は彫像のペニスではなくて、本物の生身の人間のだったのでは・・・。)
 京子は自分の指の感触から、謁見の間の奥の部屋で自分から像を跨いだ時の悪魔の像のペニスとは違和感を覚えたあの肉感を思い返していた。
 (いや、そんな筈は・・・。確かにあそこに横たわっていたのは十字架上の神と同じ彫像だった。・・・。あ、でも、もし自分が目隠しされている間に摩り替ったのだとしたら・・・。)
 京子は初めて、自分が騙されていたのではないかという根拠はないが、何となくぼんやりした疑いを感じ始めていた。
 (そうだ。そもそも自分はこの教団を退会するのをお願いしに教祖に逢う為にやって来たのだった。それがどうしてこんな風になってしまったのだろう・・・。)
 一旦疑いだすと、疑惑はどんどん膨れ上がっていくのだった。

 京子は夜を待った。部屋に立ったひとつしかない天井付近の明り取り窓から見える空が青色から藍色に変り、やがて漆黒の闇に変ってゆくのを只々待っていた。そしてその間にも廊下を歩く巫女や修道女の気配に耳をそばだてていた。巫女らしき者が通り過ぎると、そっと薄くドアを開いてから巫女の背中が見えるようになった所で音を立てないように後をつけたのだった。
 その廊下から脱出するには暗号キーの必要なエレベータしかないように思われたが、巫女等の歩く頻度からしてそれ以外の方法があるように思えたからだ。
 そして何人か後をつけた巫女が何もない廊下の隅で壁を押していたと思うと、壁全体がくるっと一転して廻り、そこに隠し扉があることを見つけたのだった。壁は薄い灰色と濃い灰色の二色のパネルを交互に使った形になっていたが、巫女が突然姿を消したパネルだけが微妙に他の二色のパネルとは色が違っているのに気づいたのだ。さっき入っていった巫女が充分遠くに去ったことを見越してから京子もその場所にやってきて、同じように壁のパネルの隅を押してみる。するとすうっと音も立てずにその壁がくるりと回転して隠し扉が現れたのだった。壁の向こうには想像していた通り階段が続いていたのだった。
 夕食が運ばれてきて、その日は京子もそれに手を着けなかった。何か薬でも仕込まれているのではと警戒したからだ。最初の夜に夕食を食べた後、急に眠くなったのを憶えていたのだ。
 明り取りの窓から見える外が真っ暗になった頃合いを見計らって京子は脱出を決意した。身に着けているのは股下ぎりぎりまでの長さしかない僧衣と頭巾だけで、下には一切下着も付けていない。しかしそんな事はもはや構っては居られないと思ったのだ。

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る