理科室の悪魔
第一部
八
「あ、先生っ・・・。今、持ってきたものを戸棚にしまおうと思ってたんですが、何処にしまったらいいのかが分からなくて・・・。」
取り敢えず手近なところにあった三角フラスコを咄嗟に掴んだ美津子は背後の理科教師の方に振り向きながらそれを翳して見せる。
「あ、いいよ。しまうのは僕がやるから。」
「そ、そうですか・・・。それだったら、私はこれで失礼いますっ。」
狼狽しているのを悟られないように早口でそう言うと理科教師の横をすり抜けるようにして準備室の扉から理科室の方へ戻ってゆく美津子だった。
(あ、いけないっ。準備室の鍵を持ってきてしまった・・・。)
そう気づいたのは、もう理科室のある棟から出てしまった後だった。今更理科室に戻ることは美津子には出来そうもないと思われた。
(そうだ。職員室にこのまま返しに行ってしまおう。)
そう思った美津子はポケットに入れた鍵を持ったまま今度は職員室の方へ急ぐのだった。
「あの、理科準備室の鍵を預かってきたんですけど・・・。」
美津子は職員室に入るなり、身近にいた教員に訊ねてみる。
「あ、理科の先生から預かったのかい? だったらあそこの教頭先生の机の後ろにキーボックスがあるから、そこに名札の場所に提げておきなさい。」
「わかりました。」
美津子はぺこりと頭を下げると教えられた教頭の机の後ろにある戸棚のような扉を開く。
「あ、これね。こんな所にキーボックスってあったんだ。えーっと、理科準備室はと・・・。あった。ここだわ。」
美津子は理科準備室と書かれた札の下のフックに預けられた鍵を掛けてから、じっくりと場所を確かめて頭に入れて置く。
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