理科室の悪魔
第一部
五
「それじゃ、開票結果により学級委員は前島美津子さんということになりました。えーっとそれから、副委員は次点の樫山琢也君ということになりまーすぅ。」
司会役を任された女子生徒が開票結果を読み上げてから新しい学級委員を指名する。
「じゃ、新しい委員の方たちは就任挨拶をお願いします。」
担任の女教師に促されて仕方なく美津子は席を立つ。
「えーっと。指名ですので精一杯皆さんの為に頑張って学級委員を務めていきたいと思います。よろしくお願いします。」
美津子は型通りの気持ちの入っていない挨拶を無難にこなすと副委員の樫山に挨拶を促す。しかし樫山は(お前の挨拶だけで充分だよ)とばかりにそっぽを向いてしまう。
学級委員の指名は面倒な役回りを押し付けられるという嫌がらせの意味合いが強かったのだが、美津子の内心ではもしかしたら樫山と共に正副の学級委員に任命されるかもしれないという淡い期待の気持ちも芽生えてはいたのだった。美津子の期待は自分が副委員になって正の学級委員である樫山の女房役になって支えるというものだったのだが、更には正副の委員になればクラスの代表として週一回ある学級委員会に一緒に参加出来るということもあったのだ。結果正副の関係は逆になってしまったが、それでも学級委員会に一緒に参加出来るというのに変わりはなかった。
ホームルームが終わった後、美津子は自分と共に学級委員になった樫山に一緒に仲良くやっていきましょうと声を掛けに行く。が、樫山の反応は素っ気ないものだった。
「俺はこのクラスの為に頑張るなってつもりは更々ないけど、正の学級委員のお前の足を引っ張るようなことだけはしないつもりだからお前の方はせいぜい頑張るんだな。」
それは自分が正の学級委員に選ばれなかったことに対する屈辱への言い訳と取れなくもなかったが、ともかく樫山が自分の敵ではなく味方で居てくれそうだという安心には繋がった。
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