理科室の悪魔
第一部
十九
新校舎は当初は美津子達が最終学年に進む最初の新学期から使われることになっていた。しかし工期は遅れて美津子達が新学期を迎えてもまだ工事は終わっておらず、出来上がり次第開所式を催してその後美津子達が教室を移ることになっていた。
既にほぼ全ての工事は終了していてあとは一部の塗装作業が幾つか残っているという段階まで進んでいた。それでも日曜日は工事が休みになるので新校舎は誰も居ない筈だった。工事期間中は絶えず業者が出入りするので施錠はされていない。工事が休みになる日曜日まで施錠がされていないのかどうかは美津子も知らなかった。
この日も美津子は誰かに見咎められたらいきものがかりの代わりに学級飼育小屋の兎たちに餌を遣りに来たのだという言い訳を考えていた。しかしそんな言い訳を使う必要もなく美津子は建設完了を間近に控えた新校舎の入口に来ていた。立入禁止の柵を除けて新校舎の入口玄関まで達すると、辺りに人が見ていないのを確認してから玄関ドアを押してみる。ドアは施錠されておらず、そのまますうっと音もなく開いたのだった。
「樫山クーン。居るの?」
美津子は大声にならないように玄関口から声を掛けてみる。しかし新校舎の中はしーんと静まりかえっていた。その時、微かに上の方の階で物音がするのが聞こえた気がしたのだった。
(上の方の階に居るのかしら・・・?)
美津子は意を決して出来上がたばかりのまだ薄っすらと新しいペンキの臭いのする校舎内に立ち入ることにした。
取り敢えず物音が聞こえた気がした二階にまで上がってみることにする。ピタリ、ピタリと自分の足音だけが響くひと気のない新校舎の階段をあがっていく。
二階まで上がったところで美津子はもう一度声を掛けてみることにする。
「樫山クーン、居るのーっ?」
美津子が二階の階段を昇り終えて、廊下を奥の教室の方へ向かい始めた時だった。突然ガラリという音がして奥の方の教室の扉が開いた。
「か、樫山くん・・・?」
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