理科室の悪魔
第一部
十五
次の理科の授業では、美津子はまともに理科教師の方を見ることが出来なかった。もし目が合ってしまうとそのまま射すくめられたようになってしまう気がしたのだった。それで授業中はずっと顔を上げずにノートを取ることに集中することにした。しかしふと気づくと頭の中は理科準備室で見た屹立した模型と、実物は見ていないが手に握らされたモノの感触でいっぱいになり、そのことばかりが頭の中で渦巻いているのだった。
「・・・っということで、この答えが分かる人? ん、誰か居ないかな? 前島君、どうだ?」
突然、理科教師は美津子を指名したのだが、美津子の耳には何も聞こえていなかった。
「前島さんっ。当てられてるわよっ。どうしたのっ?」
「えっ? あっ、わ、私・・・?」
後ろから肘の辺りを近くの女子に引っ張られて漸く美津子が自分が教師に当てられたことに気づく。しかし、美津子は何を質問されたのかもまったく聞いていなかった。
「あ、あの・・・。先生。わたし、ちょっと気分が悪いので保健室で休んできていいですか?」
「ん? どうした、前島。そう言えば顔色が悪いな。おい、学級委員は居ないか?」
「先生っ。前島が学級委員です。」
「あ、そうか・・・。て、ことは副委員は男子か。男子じゃちょっと都合悪いな。じゃ、君。小川君。一緒に保健室まで付いていってやりなさい。」
理科教師は身近に偶々いた小川真弓を代わりに指名する。
「はい、先生。わかりました。前島さん。一緒に付いていってあげるっ。」
真弓は俯いている美津子の手を取って一緒に教室を出てゆくのだった。
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