理科室の悪魔
第一部
四
「貴方たち。私が許さないわよ、そんな事してっ。」
美津子の剣幕に平手打ちを喰らった男子生徒も頬を抑えながら一歩後ずさりをする。既に他の男子生徒たちも尻ごみをして逃げ出し始めていた。
「てめえ。よくもやりやがったな。そんなら今度はお前のパンツを下してやらあ。」
そう啖呵を切って後ろを振り向いた男子生徒も他の男子たちが逃げ出し始めていたのに気づいて怯み始める。真弓のほうは引き下ろされてしまった下着を元に戻すことも出来ずに美津子の背後で泣きだしていた。
「ちえっ。ちきしょー。覚えてろっ。」
頬をぶたれた男子生徒も捨て台詞だけ吐いてその場を立ち去っていく。
「もう大丈夫よ、小川さん。」
背後の真弓の方に向き直った美津子は両手を目の下に当てて泣きじゃくっている真弓の代わりに男達にずり下げられてしまった下着を優しく引き上げてやるのだった。
「また前島さんに一票でーすっ。」
最終学年の新しいクラスでの学級委員の選出選挙が行われたのはその数日後だった。選出候補の最右翼は学級委員常連の樫山琢也だったのだが、途中から美津子に入れられた票が樫山のそれを上回ってきたのだった。
どんどん積み上がっていく自分への票に美津子自身は苦々しいものを感じていた。その当時の学級委員選挙は人気でも尊敬でもなく、単なる優等生への嫌がらせの為の押し付けでしかなかった。クラス一番の成績をずっと誇示していた樫山へ票が集まるのは当然だったが、今回の選挙では何故かそれを上回るように美津子に票が集まってくるのだった。それを決して美津子に対する期待や敬意ではなく、事前に仕込まれた悪童グループの男子生徒等の根回しによる誘導であるのは美津子にもよく分かっていた。だからこそ自分への票が積み上がっていくのを苦々しく見守っていたのだった。
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