理科室の悪魔
第一部
二十五
「ねえ。もう目隠しだけは外してよっ。怖くて仕方ないわ。」
屋上は上がったことがないので、柵がどのくらいの高さまであるかも知らなかったのだ。男達の気配では美津子の両手首を縛っている縄の端をどこかに結び付けている様子だった。
男達は美津子を屋上の鉄柵の手摺に縄尻で繋いでしまうと漸く美津子の頭から目隠しを外す。急に明るくなって一瞬目が眩んだ美津子だったがすぐに自分が居る場所が屋上の端の手摺のすぐ傍だと分かる。建物の下から見上げると裸の尻が見られてしまうかもしれないことに気づく。
「きゃっ、これじゃ下から丸見えじゃないの?」
慌てて身を屈めてコンクリート剥き出しの床に裸の尻をぺたんと付ける。それで建物の下からは少なくとも下半身までは覗いてしまうのが防げる筈だった。
「まさか、このまま私を縛ったままで置いていくつもりじゃないでしょうね?」
しかしそれにも答えはなかった。男達は相変わらずお面を被っていて正体を明らかにしない。互いに示し合っているような素振りをした後、男達は屋上の出入り口に向かって遠ざかっていく。やがてドアがバタンと閉められる音だけが美津子の方に届いてきたのだった。
(どうしよう・・・。とにかく縄だけは何とか自分で解かなくっちゃ。)
縄尻は手摺りに通して結んであるらしいのが無理をして首を背中側に回すことで何とか見えた。手首の縄は難しそうだが手摺りに結び付けてある部分は手探りでなら解くことが出来そうに思えた。
手摺りに繋いだ縄の端が解けるのに30分は掛かったようだった。両手は後ろ手に縛られたままだが、何とか縄を引き摺って立ち上がることが出来るようになった。建物の下から覗かれないようになるべく屋上の内側を通るようにして出入り口に急ぐ。ドアに背を向けて後ろ手でドアノブを掴む。しかしドアノブは廻るのだがドアは開かなかった。
(えっ? 鍵を掛けられているの・・・?)
ドアノブを持って前後に揺すってみるがびくともしない。屋上の扉は外からの侵入者を防ぐ為に内側からノッチを回すことで鍵が掛けられるようになっているらしかった。
(これじゃ、ずっと出られないじゃないの・・・。)
美津子は途方に暮れる。屋上から降りる為には屋上の手摺から身を乗り出して外を歩く人に大声を挙げて助けを呼ぶしかない。しかし美津子はスカートもパンティも奪われた下半身丸出しの状態で、更には後ろ手の縄が股間を隠すことも許さないのだ。簡単に助けを呼ぶという訳にはいかないことを美津子は思い知らされたのだった。
次第に暮れていく新校舎の屋上に閉じ込められた美津子はもう大声を出して誰かに助けを求めるしかないと思い掛けていた時だった。屋上の出入り口の向こう側に足音が聞こえたのだ。
(誰だろう・・・。まだあいつらが居残っていたのだろうか?)
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