水中痴漢

妄想小説

プール監視員



 その7

 「水難事故防止の為、十分間の休憩時間となります。監視員の笛の合図ですみやかにプールから上がってください。ご協力お願いいたします。」
 美沙子は館内アナウンスが流れて皆が一斉にプールから上がっていくのにも茫然としたまま立ちすくんで動けなかった。
 ピーッ。
 「そこの方。休憩時間です。すみやかに水から上がってくださ~い。」
 鋭い笛の音に、美沙子ははっと我に返る。ふと見ると里美が監視ルームから出てこちらに向かっているのがみえた。里美が差し出す手に、美沙子は両手で掴まって水からあがる。
 「どうしたの、美沙子? 監視員のあなたが注意されるなんて・・・。」
 「あ、里美。ごめんなさい。ついぼおーっとしてしまっていたみたい。」
 美沙子は水着の内側の肉襞がまだひりひり痛んでいるのを感じながら監視ルームに戻るのだった。

 「兄貴、もうそろそろあの美沙子って娘。本番やらせてみてもいいんじゃないですか?」
 「バカ、まだ駄目だ。もっと攻めて絶望感の崖っぷちまで追いやるんだ。もう言うとおりにしなければどうにもならないんだと諦めがつくまでな。」
 「そうですか。もう充分だと思うんですけどね。結構、言う事聞くようになってきたじゃないですか。」
 「まあ、焦るな。たっぷり調教してからだ。それにまだ玉には困ってないからな。」
 「それもそうですね。」
 悪巧みを相談している二人の眼下で、今日も美沙子は監視員の制服である超ハイレグの水着から惜しげもなく太腿を腰骨ぎりぎりまで晒しながらプールサイドを廻っていく姿が垣間見られたのだった。

 その美沙子がバイトの時間になって着替えの為に自分のロッカ―を開けた際に見つけたのは白い角封筒に入った手紙だった。
 監視員用のロッカ―は一人ひとりに割り当てられているが鍵は付いていない。嘗ては鍵もバイトの一人ひとりに渡されていたのだが、失くしてしまう者が続出し、その度に鍵を付け替えねばならなかったので、何時しかロッカーの鍵は廃止されてしまったのだ。そもそもが監視員たちは見知った間柄だし、監視員の控室が空っぽになることも外部の者が侵入することもまずなかったのでわざわざ鍵を付ける必要もなかったのだ。控室そのものはその日の営業が終了して最後になった者が施錠し、翌日最初に来た監視員が管理人から鍵を受け取って開くまで外部の人間は侵入しようがない筈なので、貴重品を置きっぱなしにするバイトの監視員も少なくはなかったのだ。
 (今日は一日お前にはトイレに行くことを禁じる。したくなったら水着のままプールサイドで洩らすんだ。もし言いつけを守らなかったらどんな事をされるかは判ってるよな。)
 その日の命令も非情なものだった。さっき自転車を走らせてバイトのシフトに入る為にプールのある建物に入った時すぐ、受付の脇にある自販機からポカリスエットの小瓶一本を飲み干したばかりだった。バイト中に喉が渇いて呑みたくなるのを防止する為だった。
 美沙子は命令書の入った角封筒をロッカーのジャージなどを置いてある一番下に見つからないようにしまい込むと、いつものハイレグ水着に着替える。まだ尿意は感じていなかったが時間の問題だった。
 「じゃあ5時からのシフトに入りまあす。」
 監視員控室で寛いでいる他の男子監視員たちに声を掛けてから、サンバイザーを目深に被ると美沙子はプールサイドに出ていったのだった。

 尿意はそのシフトの最中にやってきてしまった。シフトの終了の休憩時間まであと10分ある。我慢しきれるかどうか美沙子には自信がなかった。仮に休憩時間になったとして、美沙子にはトイレに駆け込むことは許されていないのだ。しかし、プールサイドで監視をして歩きながら垂れ流すのだけは避けたかった。
 しだいに募りくる尿意に必死に堪えながらプールサイドを歩く美沙子の表情は苦痛に溢れたものになってきていた。しかしそれに気づくものは居ない。屋内プールのどこからかほくそ笑みながら美沙子の窮状を見つめているに違いない犯人を除いてはだが。

 どうしても歩幅が短くなってしまう美沙子の足取りだったが、プールの角を曲がろうとする時美沙子の脚が止まってしまう。次一歩踏み出すとどんなに括約筋を絞めていても耐え切れそうもない気がしたのだ。しかし監視員がプールサイドで立止っているのはいかにも不自然だ。
 おそるおそる片足を踏みだした美沙子の太腿の内側をつうっと生温かいものが流れ落ちた。
 (あ、いけない。)
 咄嗟に辺りを見回す美沙子の目にプールサイドからシャワー室へ出る狭い通路が目に入る。その途中には定期的に自動で流れるシャワーと足を洗う消毒液の入った水溜りがある。美沙子は夢中でその通路に小走りになっていた。堰を切ったように美沙子の股間からは滴が落ち続けている。それも構わず美沙子は一気に通路の途中にある消毒水の入った水溜り目掛けて走り込む。そこで足を滑らせたかのように尻もちを突いてしゃがみ込む。慌てて駆け込んだ為に滑ってしまったのが恥ずかしいとでも言うように頭を掻きながらゆっくり立上った美沙子の水着からはポタポタと水が滴り落ちている。誰もが消毒液にずっぽり浸かってしまったせいだと思う筈だが、相変わらず水着の股間からは迸り出る尿が漏れ流れているのを気づいたものは居ない筈だった。しかし、その姿をおかしいと思っているのは美沙子にそんな仕打ちを仕掛けた犯人以外にもう一人の目があった。先程プールサイドの監視ルームに入ったばかりの里美の目だった。
 監視員は時々シャワールームや更衣室の異変も監視する必要があるので、監視の途中でプールサイドからシャワールームの方へ移動する事は特に珍しいことではない。里美が異様に思ったのはシャワールームに抜ける細い通路に駆け込んでいた美沙子の慌てぶりだった。
 (何か変だわ・・・、あの娘。)
 里美の鋭い目は、美沙子が必死で隠そうとするカムフラージュを見破っていたのだった。



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