プールサイド小手縛り

妄想小説

プール監視員



 その12

 「そりゃっ。」
 バシーン。
 片側の男の竹刀は空振りに終わって空を切っただけだったが、もう一人の男の竹刀は的は外れたものの里美の手首の付け根をしたたかに打つ。
 「あううっ・・・。くっ。」
 「当たってないぞ。もう一度っ。にーっ。」
 バシーン。バシーン。
 今度は的は少し逸れたものの、確実に里美の手の甲を竹刀の先が捉えていた。
 「ううっ・・・。」
 里美の両手に激痛が走る。
 「まだまだっ。さーん。」
 バシーン。バシーン。
 「あううっ。」
 「よーん。」
 バシーン。バシーン。
 みるみる間に里美の縛られた手の甲は真っ赤に腫れあがっていく。

 やっとの事で彼等が称する剣道の練習なるものが終わったのは、かれこれ里美は手の甲に十発以上の竹刀の打ち手を浴びていた。既に痛みというよりも手の感覚自体がなくなっているほどだった。
 「ようし、試合開始だ。こいつの縄を解いてやれ。但し、股縄はそのままだ。こいつの届く範囲がお前が逃げれる範囲って訳だ。もっともノーパンになりゃ、もう少し遠くまで逃げることは出来るがな。」
 里美は股縄をされた縄で一台の監視台から1mぐらいのところに繋がれたまま、縄を解かれた手に竹刀を渡されたのだったが、最早まともに受け取るのもやっとという状態だった。
 「さ、最初はお前からだ。マサ。遠慮なく戦ってやれ。始めっ。」
 マサと呼ばれた男が里美を真似して大上段に構える。里美のほうは痛む両手で竹刀を構えるが力は全く入っていない。
 「そりゃあっ・・・。」
 マサの竹刀が里美に襲いかかる。必死で受け止めようとする里美だったが、竹刀は簡単に弾き飛ばされてしまう。床に転がった竹刀を慌てて拾おうと手を伸ばす里美だったが、その傷んだ手首を更に痛めつけるようにマサの竹刀が打ち下ろされる。
 「あぐうっ。」
 あまりの痛みに顔を顰める里美だった。最早手では竹刀を握ることは出来ないと悟った里美は竹刀を肘で抱えるようにして水平に持って構える。
 「へえ、そんなんで戦えるのかな。そりゃあ。」
 更なる一撃を何とか肘で抱え持った竹刀で受け止めた里美だったが、身体を打たれないようにするのが精一杯だった。しかし両腕の肘で抱え持つ竹刀では上半身しか防ぎきれない。それに気づいたマサは今度は里美の足元を狙い始めた。
 ヒューッ。
 足元を狙ったマサの竹刀は空を切る。里美が竹刀で受け止めるのは不可能と悟って身体を宙に浮かして竹刀をかわしたからだ。
 「くそぅ。すばしこい奴め。」
 マサは相手が巧みに竹刀を避けて身体をかわすのだが、自分からは攻撃が出来ないことを知って里美を責める方法を考え始める。
 「それなら突きはどうだ。これなら竹刀では受け止めきれまい。」
 マサは竹刀を構え直すと突きに出る体勢を取る。里美は窮地に陥る。上からや横からならば両肘で抱えた竹刀で何とか受け止めきれるが真正面から突いてこられれば横にしか持てない竹刀では防ぎきれない。
 「とりゃあ。」
 マサが突いてきた竹刀をぎりぎりの所で交わした里美は、自分の竹刀を捨てマサの竹刀を脇で挟んで抱え込む。身体を回転させるようにしてマサの竹刀を奪い取ろうとする。マサの方は慌てて竹刀をもぎ取られまいと必死で力を篭めるが、そのせいで里美に引き寄せられてしまう。
 その瞬間、里美の長い脚が宙を舞いマサの顔面に回し蹴りを喰らわせる。マサの身体が瞬殺で崩れ落ちる。
 「うううっ・・・。」
 呻きながら泡を吹いて床に倒れ込むマサだった。
 「へえ、なかなかやるじゃないか。得意なのは剣道だけじゃないみたいだな。おい、ヒロシ。今度はお前だ。相手は手強いぞ。注意してかかれよ。」
 「まかせておけって。」
 一人は何とか倒した里美だったが、既に息は荒い。床に落ちた竹刀をなんとか拾い上げ、再び両肘で抱え持つ。
 「迂闊に近寄ると危なそうだからな。まずはお前の足を狙うか。」
 重心を低くして里美の足元を狙って構えるヒロシに、いつでも飛びあがって逃れる準備をする里美だった。
 「そりゃっ。」
 ヒロシが里美の足首を狙って竹刀を振り回す。すかさずジャンプしてその竹刀をかわす筈だった。が、ヒロシの竹刀は途中でピタリと止まってしまったのだ。巧みなフェイクだった。それに引っ掛かった里美が着地した所をヒロシの竹刀が襲う。勢いは付いてなかっただけにダメージはそれほど大きくはないものの、弁慶の泣き所をしたたかに打たれてしまい、里美は顔をしかめて膝を突いてしまう。
 「どうだ。だいぶ痛かったようだな。」
 再び立ち上がろうとするところを再度足首を狙われる。今度は身体を回転させて逃れようとする里美だったが、無情にもトランクスに結び付けられた縄が限界までピンと張られてしまう。そのせいで穿いていたトランクスがパンティ毎ずるっと下がってしまう。
 「きゃっ。」
 覗いてしまいそうになる股間を慌てて膝を丸めて隠そうとする里美だったが、無防備になった尻をしたたかに打たれてしまう。
 パシーン。
 「ううっ・・・。」
 「へっへっへっ。いい格好になってきたぜ。それ以上逃げればノーパンになっちまうぜ。」
 里美の苦境を愉しむかのように、竹刀で腰のあたりをこづいてくるヒロシに里美は何も防戦出来ない。下手に動けばヒロシの言う様にトランクスが完全に脱げてしまいそうだった。
 「そりゃっ。」
 ヒロシの竹刀が真横から里美の二の腕を襲う。咄嗟に腕に抱えた竹刀で受け止めようとするが間一髪間に合わない。肘の辺りを強烈に竹刀の先が打ち当てられ、堪らずに里美は竹刀を取り落としてしまう。そこをすかさずヒロシの竹刀が里美の落した竹刀を払いのける。最早、竹刀は里美の手の届かない場所に滑っていき、里美には竹刀を取り戻すにはみずからトランクスを脱ぐしか方法がない。それはさすがに躊躇われた。
 丸腰になってしゃがみこんでいる里美にヒロシはじわり、じわりと間を詰める。腰を落とした体勢からでは足蹴りを喰わせることも出来ない。立ち上がろうにも先ほど打たれた脛の痛みが走って思うように身体が動かないのだ。
 「そりゃあっ。」
 里美の顔面を狙って振り出された竹刀を受け止めるには、痛めつけられた両腕で庇うしかなかった。
 バシーン。
 顔を被う里美は、痛めつけられた両手首を更に打たれてしまうのだった。最早戦う術を全て喪った里美はヒロシに滅多打ちにされながらただ痛みに耐えているしかないのだった。

 「どうします、兄貴? あの生意気な女、みんなで回して犯しまくってやりましょうよ。二度と逆らう気持ちも起させないように。」
 「いや、駄目だ。あの女を犯すのは今じゃない。もっと最適なタイミングを選ばなくちゃな。あの女は意外と使えそうだ。今日はこのくらいにしといてやれ、いいな。」
 「え、そうですか? ちぇっ、残念だな。じゃ、あいつらに伝えてきます。」
 プールのほうへ撤収を伝えに走っていく子分格の男を見送りながら、兄貴と呼ばれた男は次なる策を練り始めていた。



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