妄想小説
プール監視員
その13
翌日はプールは定休日にあたっていた。しかし、いやそれだからこそ里美は美沙子をプールへ呼び出したのだ。プール監視員をやっているからといって休日のプールに忍び込むのは勿論禁止されている。しかし里美は誰からも邪魔されずに美沙子と二人っきりで逢いたかったのだ。電話で美沙子を呼び出した時に、美沙子の方も何となくそれを察した様子だった。
プールに先に着いたのは美沙子の方だった。誰も居ないガランとしたホールを抜けて美沙子は監視員控え室で里美を待つことにした。里美がやってきたのは美沙子が着いて間もなくだった。
「どうしたの、その手?」
美沙子は里美の両手首に巻かれた包帯を見て、唖然とする。それでなくても一日前には頭に巻かれた包帯姿を見たばかりだった。
「ううん、なんでもないの。」
さすがに今度は転んだという嘘は吐けない。さり気なく誤魔化そうとしたが誤魔化しとおせる自信はなかった。それにあちこちにある痣に美沙子が気づかない筈もなかった。
「もしかして・・・。わたしのせいで? 」
美沙子は懼れていた言葉を口にする。
「ねえ、美沙子。私があなたの事を絶対守るから、何でも話してくれる? わたし、あなたが脅されてるって知ってるの。」
(脅されてるのを知っている)そう、里美が口にするのを聞いて美沙子ももう隠し遂せないと悟った。
「昨日、実はあなたのロッカ―から手紙を盗み取ったの。あなたが何で脅されているのか判ってしまったわ。」
「じゃあ、あの写真を観たのね。」
「うん。」
美沙子は自分に送られた手紙に入っていたであろう写真を思い浮かべる。
(今度は何処まで写っていたのだろうか。)
顔が全部写っていたかどうかは判らないが、里美が美沙子だと気づく程度には写り込んでいたのは間違いなかった。
「あなたが夜のプールに呼出しを受けていたので、私が代わりに行ったの。あなたの服装と髪型を真似てね。」
「それでそんな目に遭ったの? 」
「わたしが奴等を懲らしめて誰なのか突き止めようと思ってたの。でもそれは罠だったみたい。彼等は用意周到だったわ。まるで私が来るのを待ち受けていたみたいに。」
「それで何をされたの、彼等に? 」
「大丈夫よ。犯されたりなんかしてないから。竹刀でぼこぼこにされたわ。普通だったら絶対負けたりしない相手の筈だったのに。先に竹刀を持てないように手の甲を思いっきり痛めつけられたの。それで・・・。」
「ああ、里美。何て事・・・。わたしのせいで。」
「いいの、私なら。ねえ、美沙子。私があなたの事、絶対守るから、もう奴等の呼出しなんかに応じないで。」
「ええ、でも・・・。」
「大丈夫よ。あんな写真なんか絶対に取り返してあげる。だから今度もし、また呼出しがあったら私に教えてっ。」
「わ、わかった・・・けど。」
「ねえ、美沙子。こっちへ来て。」
里美は美沙子を受け入れようとするかのように包帯を巻かれた両手首を広げてみせる。その里美の身体に美沙子は自分の身体をまかせる。次の瞬間、美沙子は里美に唇を奪われたのだった。
「あっ・・・。むむむ。ううん。」
思わずとろけそうになるような甘い感触が美沙子を襲う。そのまま里美は美沙子を押し倒すように控え室のソファに美沙子と倒れ込む。
「ごめん、美沙子。もう我慢出来ないの。わたし、あなたの事が好きなの。」
里美は美沙子の上から蔽い被さるようにして唇を付けたままソファに横たわる。美沙子はどうしていいか判らず、ただ身を任せていた。
「ね、あそこ・・・。触ってほしいの。」
「あ、あそこ・・・って? 」
「脚の付け根よ。わたし、今手が不自由だから出来ないけど、あなたなら出来るでしょ? 」
「え? わ、わたしが・・・? 」
美沙子はおそるおそる里美の太腿の方に手を伸ばす。里美はその日も挑発的なミニスカートだったので、その裾にはすぐに手が届いた。内腿にそってそっと撫で上げるようにするとスカートの中の下着に触れる。里美の身体がびくっと動いたのが判った。
「ああ、してっ。」
何をするべきなのかわからないまま、美沙子は手に触れた下着を優しく撫でまわす。そこは熱くじっとりと濡れているようだった。
「中に手を入れてっ。」
それが里美の下着の中に指を挿しこめということだとはすぐに理解した。しかしなかなか手が動かない。それを促すかのように里美は美沙子の口の中に舌を挿し込んできた。ぬるっとした生温かいものが口の中に蹂躙してくると、美沙子の指が自然と里美の下着の奥に滑り込んでいくのだった。
「ああ、いい・・・。いいわ。もっと、してっ。」
(駄目よ、里美。こんな事してはいけないわ。)
そう思うのだが、美沙子の手は別人のものであるかのように勝手に動いていく。じっとりと濡れた陰唇が美沙子の指に絡みついてくるかのようだった。
「ねえ、あそこ・・・。舐めさせてっ。」
里美が美沙子の唇から離れて顔を美沙子の身体に埋めるようにしながら下半身へと動かしていく。
「だ、駄目よ。そんな事・・・。」
そう言いながらも手が使えない里美の為に、美沙子も自分のスカートを捲り上げショーツを下してゆくのだった。
誰も居ないと高を括った二人がしているあけすけもない会話は、その一部始終を盗聴器が伝えていた。そのマイクロフォンが拾った会話はそれを聞いている男には貴重な情報源だった。男は遂に里美という撥ねっ返り娘の弱点を知って思わずほくそ笑んでいるのだった。
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