妄想小説
プール監視員
その21
「えっ、これっ・・・。」
「そうだ。お前だ。どうだ、よく撮れているだろ。お前の口惜しそうな顔。それがこれからだんだん気持ちよくてたまらんって顔になっていくんだ。」
「何時の間にこんなものを・・・。」
「ほう、気づいていなかったのか。初めてあそこに入れられて・・・。あ、いや。初めてじゃないか。あそこに入れたのは初めてじゃなくても、本物の男の肉棒なら初めてだろ。バイブは何時も使ってたみたいだからな。」
「な、何言うの。」
「処女じゃなかったってことさ。ただしバイブで自分でしてただけだろ。オナニーを。だから血も出ないって訳だ。男に本物のチンポを挿されたのはそれでも初めてだったみたいだな。お前のよがる表情を観てれば分るさ。」
「な、何てことを・・・。わたしは貴方達に無理やり強姦されたのよ。」
「その割には悦んでいる顔、してるぜ。」
「くっ・・・。」
「こんな物、撮ってどうするつもり?」
「お前の最愛の女に見せてやるのさ。」
「最愛? え、まさか・・・。まさか、これを美沙子に見せるっていうんじゃないでしょうね。え、駄目よ。絶対やめてっ。あの子にだけは、これはやめてっ。」
「どうしたぃ、その慌てぶりは。あの小娘にこんな姿を見られるのは嫌なのか?」
「やめて、お願い。そんな事しないで。あの子にこんな所見られたら、もう生きていけないわ。」
「ほう、生きていけないか。そんなに嫌なのか。」
「くっ・・・。そうか。そう・・・なのね。このビデオをネタに私に言う事を聞かせようっていうのね。」
「やっぱり、物分かりがいいじゃないか。俺が見込んだだけのことはある。」
「卑怯よ。こんなの。あんまりだわ。・・・。ああ、駄目っ。絶対やめて。わかったわ。言う通りになるわ。だから、絶対、こんなのあの子には見せないで。約束してっ。」
「だったらお前も誓うんだな。何でも言う事を聞きますと。そしたらこのビデオは見せないでおいてやろう。」
「・・・。わ、わかったわ。誓うわ。誓います・・・。だから、お願いっ。」
里美は完全に敗北を悟った。その場で土下座の格好になって何処から見ているか分からない相手に向かって服従を誓ったのだった。
美沙子の準備は万端に整っていた。あの男がプールに来るのは毎週火曜、木曜、土曜の三回。プール開場の1時間後きっかりだということは調べてあった。2000m泳ぐのにはオリンピック級の選手でも20分はかかる。並みの素人なら30分以上は悠にかかるのだ。美沙子は男がいつも慣らして泳いでいるのは確認済みだ。休憩時間10分を挟んで二回のシフト分はプールに居ることは確かめてあった。
受付のオバサンのところにもしょっちゅう入り浸って、無駄話を続けては不信感を抱かれないようにしてある。オバサンが受付の手続きをしている最中に後ろの貴重品棚に入れた鍵束を摩り替えるのはもう何度も練習してあった。
受付を飛び出て自転車に飛び乗り、駅前の合鍵屋で合鍵を作るのに5分、往き帰りの所要時間が10分。余裕はないが2シフト分の時間があれば間に合うことは何度も確かめてあった。
「それでね、美沙子ちゃん。だから私、言ったの。そんなの訳ないって。そしたら。あ、お客さんだ。御免、ちょっと待ってて。」
受付のおばさんが新規の来場者に手続きの為に向かうのを確認した美沙子は何度も練習した後ろ手の背中で棚に手を伸ばして贋物の鍵束と男が預けた鍵束をさっと摩り替える。それを手にすると後は一目散だった。
「あ、おばさん。また来るからね。」
そう言うと裏の駐輪場へ素早く走り抜けて駅前まで自転車を飛ばす。
鍵束には五つ鍵が付いていた。一つは車の物。もう二つはどうみても机とか小型金庫のような物用の小さな鍵。迷ったのは残りの二つだったが、二つ合鍵を作っている時間はなさそうだ。美沙子はふと思いついて自分も持っている監視員控え室の鍵と比べてみる。同じ建物ならば同じ業者が作った同一タイプの筈だった。
(こっちだわ。間違いなく・・・。)
「おじさん。大至急でこの合鍵作って。大至急よ、お願い。」
合鍵屋から作ったばかりの鍵を受け取ると一目散でプールへと引返したのだった。
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