妄想小説
プール監視員
その24
「なあ、ズルいじゃないか。あんなに泳ぎが上手いなんて。手錠掛けられてるくせに脚だけであんなスピードで泳がれたんじゃ手の出しようもないぜ。こっちは泳ぎは全然駄目だからプールには水中歩行でしか入れないってのに。」
「まあまあ、お客さん。そんなに簡単に女が捕まっちゃうようじゃ、ハンティングの愉しみなんか味わえないですよ。お客さんだって女を犯すだけが目的じゃないんでしょ。やりたいだけなら別の種類の店が幾らでも選べる。」
「そりゃあそうだが。しかしこうも手も足も出せないとなるとハンティングも成立しないじゃないか。」
「お客さん。いいですか。イルカだってクジラだって人間より遥かに泳ぎは得意なんですよ。それでもイルカにしろ、クジラにしろ、人間には捕まってるじゃないですか。」
「そりゃあ、人間は網とかいろいろ道具を使うからな。」
「お客さん。こちらへどうぞ。」
男が案内したのはプールの脇にある道具室だった。コースロープや飛び込み台、水球用のゴールなどありとあらゆるものが揃っている。
「これ、何だか判りますか?」
「何だ、こりゃ。まるで捕獲網じゃないか。」
「違いますよ。これは水球の練習の時に使う仕切り用の網ですよ。練習の時に二組のチーム同士がプールを半分に分けあって使う際に真ん中に仕切りとしていれるんです。ボールが飛んでっちゃわないようにね。バレーボールなんかでもコートの後ろによく張ってあるでしょ。ボール拾いが遠くまで拾いにいかなくても済むように。」
「ああ、見たことがあるな。しかし、これ・・・?」
「意外と重たいんです。だからこれ、水の中でも沈むんですよ。」
「え、こいつを使うってのか。そりゃいいアイデアだ。何か獲物を追いこむみたいでワクワクするな。次のリベンジが楽しみになってきたぜ。」
「そうですか。料金の振り込みのほうもよろしくお願いしますよ。特殊用具の使用料は加算させて貰いますがね。」
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