監禁妻への折檻
七
「おう、数馬。招待されたんで、琢也を連れてやってきたぜ。噂には聞いていたが、いい別荘を手に入れたな。」
「ああ、忠男。久しぶり。琢也も久しぶりだな。いいところだろ。」
「蓼科の山奥だっていうから、物寂し気なところかと思ってたよ。結構明るい雰囲気なんだな。」
「外側は山荘風なんだが、内装は倫子のたっての希望でアーリーアメリカンのコロニアル風にしたからな。それで明るい雰囲気なんだろう。」
「みなさん、ダイニングのほうへいらして。今すぐ料理の方、お出ししますわ。貴方、ワインを開けてくださらない?」
「ああ、もう選んで出してあるんだ。さ、席についてくれよ。」
「そう、そうだったな。あの時、忠男が遅れてくるからいけなかったんだぜ。」
「そうだったっけな。おれはてっきり数馬のせいだと思ってたんだけどな。あ、みっちゃん。何でそんなとこに一人で居るんだよ。こっちに来てみっちゃんも話に加われよ。」
忠男がふと男たち三人から離れて、倫子一人だけでいるのに気づいて声を掛ける。
「あら、ここでも話は聞こえているわよ。」
「いいから、倫子もこっちへおいで。僕の隣が空いてるからさ。」
数馬がすかさずソファの自分の隣を指さす。倫子は一瞬ためらったが、立ち上がっておとなしく言われたとおりに夫である数馬の横に腰を下ろす。しかし身のこなしは慎重そのもので、ソファにも浅く腰掛けるだけだった。その様子に気づいていたのは琢也だけだったようだ。
「ねえ、あなた。もうそろそろ話は一旦中断して、お二人にお風呂に入って頂いたら。どうせ、この後も夜を徹して呑むんでしょうから。」
「ああ、そうだな。じゃ、二人をゲストルームに案内して、その後バスルームにも連れていってくれよ。俺はもう少しここで呑んでるから。」
「いいわ、貴方。じゃ、お二人さん。ゲストルームにご案内するわね。」
「へえ、ゲストルームがちゃんとあるんだ。」
「ゲストルームを用意するぐらいお客がよく来るんだ?」
「ええ、時々はね。でもやっぱり山奥で東京からも遠いから、そんなに頻繁ではないんですけどね。それに冬場は雪が深くなるから、人出も少なくなってちょっとさみしいのよ。」
「ふうん、そうなんだ。」
忠男と琢也はダイニングで一人呑んでいるという数馬を残して、倫子に案内されて二階のゲストルームへと向かうのだった。
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