自力縄解き

監禁妻への折檻



 二十五

 (あそこまで何とか届かないかしら。)
 倫子は潜り込んでいたシーツから這い出ると、縄の余裕が許すぎりぎりまで立ち上がろうとしてみる。結び目までは届かないが、余った縄の端は何とか咥えることが出来たので、それを口に咥えて下に引っ張り降ろす。結び目の部分が下に下がってきて上手く行けば歯で咥えて結び目を解くことが出来るのではという気がしてきた。縄の一部は足首にも巻かれているので、ベッドの枠に掴まりながら縄を括り付けられた片足を持ち上げて縄の弛みを作ると結び目を咥え込むことまで成功する。
 倫子が言っていた暖炉脇のクローゼットから毛布を探し当てた琢也はソファに仰け反って眠り込んでいる数馬と忠男のそれぞれに毛布を掛けると自分一人でゲストルームに戻ることにする。部屋のツインベッドの一つに横になると、さっき垣間見た倫子が寝ていた部屋でちらっとだけ見えたものを思い出してみる。
 (あれは確かに女性用のショーツだった。そして小さな鍵。あれは一体何だったのだろう。)
 琢也は倫子が夫の帰りを待ってショーツを脱いでいたという図を思い描いてみる。
 (しかし倫子は数馬の寝室は別だと言っていたっけ。すると何で脱ぎ捨てられたショーツがあんなところにあったのだろう。それにあの鍵のようなものは何だったのだろう・・・?)
 そんな事を考えているとだんだん眠れなくなってきてしまうのだった。

 一方の倫子はやっとのことで口に咥えた結び目を少しずつ緩めていくのに成功していた。結び目がやっとのことで解けてベッドポストから動けるようになると、ベッドの端にショーツと共に置いてある手錠の鍵を後ろ手で手にする。手錠の外し方は慣れてはいないものの、何度か夫が自分の両手に掛けたり外したりするのを見ていたので何となく要領は分かった。後ろ手の手探りではあったが手錠が外れるのはそれから暫くしてのことだった。
 縄と手錠から解放されて、やっと紙おむつを外しショーツに穿き替えることが出来てからこんどは琢也の事が気になり始める。
 (どこまで見られただろう。寝室には入らないでと叫んだのはそれほど変には思われなかった筈だ。でも、起きて行って説明しないのは変に思ったかもしれない。)
 あの時、琢也に助けを求めていたほうがよかったのではと思うと、倫子の方も思い悩んで眠れなくなってくるのだった。
倫子

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