監禁妻への折檻 第二部
二十六
「あれ、もう起きてたんだ。」
ゲストルームを出て一階のリビングに降りた時に、数馬と忠男がまだソファで眠りこけているのを見て音を立てないようにキッチンのほうに来た琢也だったが、そこには既に倫子が居たのだった。
「あ、琢也だったのね。おはよう。今、珈琲淹れてたとこ。呑む・・・よね?」
「ああ、ありがとう。何だかあまり眠れなくて、うとっとはしたんだけどすぐ起きちゃって。」
少し大きめのマグカップに珈琲を注いで琢也に渡した後、倫子も自分用にいつものマグカップに珈琲を注いでキッチンテーブルの向かい側に座る。
「私も実はあまり寝てないの。なんだか興奮しちゃったみたい。」
「そうだったんだ。呑みには来なかったから疲れて寝ちゃったんだと思ってた。来ればよかったのに。」
「ああ、だって男同士で話したいこともあるでしょ。随分盛り上がってたみたいだけど。」
「いや、まあそうだけど。そう言えば、夕食の時にこの近くに是非見せたい場所があるって言ってたよね。」
「ああ、そうだったわ。ねえ。まだ暫く他の人達、起きて来ないと思うから今行ってみない?」
「二人で? 」
「ええ、そう・・・。」
倫子に言われて琢也が山荘ロッジの半地下になっているガレージの傍で待っていると、自転車を牽いた倫子が現れた。
「え、自転車? 」
「ええ。でも実はわたし、恥ずかしいんだけど自転車って乗れないの。小さい時に練習してて転んで大怪我してから怖くてもう自転車の練習が出来なくって・・・。琢也さんが漕いで私を後ろに乗せてくれない?」
「ああ、いいけど。」
「歩いていくと時間が掛かっちゃうから、皆んなが起きてきちゃうかもしれないでしょ。」
「わかった。じゃ後ろから案内して。」
琢也が倫子から自転車を引き取り、跨ってから倫子に後ろに乗るように指示する。
「あ、そんな所持つと危ないから、僕の腰に手を回して捉まって。」
「いいの? じゃ、はいっ。」
「じゃ、行くよ。えいっ。」
琢也が掛け声を掛けて自転車を滑り出させる。
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