スカG蓼科行き

監禁妻への折檻



 四

 琢也は昔からの親友の久家忠男が運転するスカイラインの助手席で、昔ながらのエンジン音に耳を澄ましながらこれから訪れる先のことを考えていた。
 「なあ、琢也。懐かしいだろ、このエンジン音。」
 「ああ、よくこんな古い車が見つかったな。しかも、こんなに程度がいいのは珍しいんだろ。」
 「完璧にレストアされているからな。ずっと探してたんだよ。本当はGTRが良かったんだが、さすがにそこまでは手が出なくてな。でも昔と同じ2000GTだったんで、これって決めたのさ。もう昔の愛車を手放してから何十年にもなるからな。」
 「昔、よくこの車で出掛けたよな。軽井沢とか、信州とか・・・。」
 「ああ、そうだな。みっちゃんも懐かしがるだろうな。みっちゃんもよく乗せたからな。そう言えば、お前大丈夫なのか。奥さんを亡くしてから初めてだろ、みっちゃんに逢うのは。」
 「大丈夫って、どういう意味だよ。」
 「いや、さ・・・。お前はあの頃、どうだったかわからないけど、みっちゃんの方は間違いなくお前に気があったと思うぜ。」
 「それはどうかな? それにしても木崎との結婚は電撃的だったからな。」
 「やっぱり周りがバタバタって結婚しちゃったからな。焦ってたんだろうと思うぜ。」
 「お前だってその一人だろ。あの史子さんも急に結婚して会社辞めちゃったからだろ。お前がそそくさと結婚することにしたのは。」
 「や、昔のことさ。蒸し返すのはよぞうや。それにしてもみっちゃんは何だって急に会おうなんて言い出したんだろう?」
 「数馬が言い出したんじゃないのか。同期会をやろうって。あいつも手に入れた蓼科の山荘ロッジを見せびらかしたいんだろ、きっと。」
 「お前のところにも来たんだろ、年賀状。是非お越しくださいって書いてあったからお前のことも誘ったんだけど・・・。」
 「ああ、何かそんな風なことが書いてあったな。俺のところにも来てたよ。」
 そう言って頷いた琢也だったが、実際のことは忠男には少し濁しておいたのだった。

倫子

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