監禁妻への折檻
二
「痛くしないでね。」
そう、か細く言った倫子だったが、自分を縛った時の数馬の行為は心持ち乱暴になるような気がしていた。縛られている状態では極力、感じているような素振りは見せまいと思う倫子なのだったが、乱暴に腰骨あたりを掴まれて仰向けにされ隠すことの出来ない陰唇を夫の前に晒さねばならない状態になる時に「ああっ・・・。」という呻き声に近い喘ぎ声挙げてしまうのを必死で抑えなければならない自分に不安を感じてもいるのだった。
(ち、違うのよ。わたし、感じてなんかいないわ・・・。)
そう叫びたいと思っても、自分の身体が痺れて口が思うようには動いてくれないのだった。
夜、寝るときは夫から強制的に着せられている腰までしかないベビードール風のキャミソールの下からすぐに覗いてしまうショーツは、数馬の手でいとも簡単に剥ぎ取られてしまう。倫子はその剥き出しにされてしまった股間に夫の手が忍び寄ってくるのを観念していた。しかし、その夜は夫の手は股間の方にではなく、倫子の肩の方に伸びてきてベッドに横たわる自分の身体を抱き起されたのだった。
「えっ・・・。」
「さあ、立ち上がってこっちへ来るんだ。」
数馬の物言いは誘いではなく、命令口調だった。
「ど、どこへ連れていくの?」
両手を縛られたままで背中を押されるがまま倫子が連れ込まれたのはバスルームだった。
「どうしてこんなところへ・・・?」
浴槽の隣の洗い場のタイルの上に肩を押されて無理やりしゃがみ込まされた倫子は、腰ぎりぎりまでの丈しかないキャミソールからは裸の下半身が丸出しなので、冷たいタイルの上に裸の尻たぶを直接載せることになる。その冷たさよりも剥き出しになってしまう股間の方が気になっていた。
「明日、昔の同期仲間がやって来るだろ。だから、その前に必要な準備をしておくのさ。」
「必要な準備って? ま、まさか・・・。」
夫の数馬が既に自分がバスルームでいつも使っている髭剃り用のT字型の剃刀を手にしているのを見た倫子は自分がこれから受ける仕打ちを悟って思わず身体を身震いさせる。身だしなみは常にきちんとしている倫子は、脇のムダ毛処理も欠かしたことはない。両手を後ろ手に縛られてされるとなれば、腋毛ではないのは明らかだった。夫のたくらみに気づいて倫子は本能的に両脚を硬く閉じて股間を隠そうとする。
「何をされるのかは分かっているようだね。だったら素直に脚を開きなさい。剃られて困る訳ではないのだろ。それともあいつらが来たら、そんなところを見られるようなことをするつもりでもあるのかい?」
「そ、そんな訳、ないじゃないですか。夫以外の男性に・・・。」
「だったら夫のボクしか知らない秘密を作るんだから、嫌がる必要は何もないわけだ。さ、夫への忠誠の証しとして大人しく剃られるんだよ。」
「で、でも・・・。」
結婚して以来、あの場所を夫から剃り上げたいなどと言われることは一度も無かった。倫子自身もデルタゾーンを処理するのは学生の時で、水泳の授業があった時以来だ。それだって水着の脇からはみ出ないように外側を少しだけ剃り上げただけだった。しかし今の数馬がしようとしているのは、脇の外側だけではない筈だと倫子は思った。
「あいつら、きっと泊まっていくだろうから。万が一にも間違いを起こすことがないようにするおまじないだよ。それとも何か期待しているものでもあるのかい?」
「そんな・・・。期待だなんて。夫の貴方を裏切るようなことは決してありませんわ。」
「ほら、あの三河屋の御用聞きのことはどうなんだ?」
突然、夫の口から出た言葉に倫子は愕然とする。
「あ、あれは・・・。ただの俊介ちゃんの勘違いですわ。貴方がいつも短いスカートばかり穿かせたがるから。」
「ミニスカートのせいにするのか? お前に隙があるからじゃないのか?」
「・・・。わかりました。どうぞ、ご自由に存分まで剃り上げてくださいませ。」
倫子は観念して両脚を大きく広げる。自分にやましい事がないのを証明するには、夫にその部分を自由に剃らせる以外にないのだと倫子は自分に言い聞かせるのだった。
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