監禁妻への折檻
十三
「だ、駄目よ。こんな格好じゃ他人の前になんか出れやしないわ。」
「大丈夫さ。背中側を見せなければ、どんな格好をしてるかばれやしないさ。さ、行って応対してくるんだ。」
「そ、そんな・・・。」
しかし数馬が強引に肩を押してキッチンの方へ押しやるので倫子は出て行かざるを得なかった。
「あ、あの。俊ちゃん? 勝手口は開いているから入って来て・・・。」
背後でキッチンへの扉を薄く開けて数馬が様子を窺っているのが分かる。
「あ、奥さん。いつもの配達持ってきました。失礼します。入りま~すぅ。」
ドアが開いて俊介が荷物を両手に抱えて勝手口から入ってくる。俊介の目はすぐ倫子のメイド風の黒服と白いエプロンに釘付けになる。
「す、すっごい可愛い服ですね。奥さん、若く見えるから似合いますね。」
「あ、いやだわ。恥ずかしい。に、荷物はそこに置いておけばいいわ。」
「あ、それでこのオレンジなんですが。いつもの仕入れ先に入荷がなくて別の店から仕入れたんで品種が違うんですけど、いいですかね。ちょっと見てくれますか?」
そう言って俊介は配達籠の奥からオレンジを一個取り出して手渡そうとする。しかし倫子にはそれを受け取ることが出来ないのだった。
「あ、あの・・・。お、オレンジは俊ちゃんが選んでくれたのなら、それでいいわ。そこに入れておいてくれる?」
「ああ、そうですか。じゃ、これで。えーっと、次の注文リストとかはありますか?」
「あ、ごめんなさい。今日はまだ作ってないの。今度電話するからそれでお願いできる?」
「勿論ですとも。はいっ。じゃ、今日はこれで・・・。」
倫子は変に思われないかびくびくしながら、勝手口の俊介からは距離を取って近づかないようにしながら、真正面だけ向いて応対したのだった。勝手口のドアがガチャリと閉まって、遠のいていく足音が聞こえるまで倫子は冷や汗が止まらないのだった。
「どうだ。男の前で気を緩めないで緊張したままでいるというのが実感できたか? それくらいの緊張があれば、少しぐらい短いスカートを穿いていたからって男につけこまれるような隙は見せないでいられるのだぞ。」
「わ、わかりました。わかりましたから、早くこの手錠を外してください。」
倫子は涙目になりそうになりながら、数馬に頭を下げて手錠を外してくれるように請い求めるのだった。手錠の鍵を外して貰いながら、もう二度と俊介の居る前では気を緩めないように気をつけようと心に誓った倫子だった。しかし数馬の倫子への仕置きはそれだけでは終わらなかったのだ。
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