妄想小説
恥辱秘書
第十三章 新たなる調教の罠
六
手錠をはずし、目隠しを取って、あたりの惨状を目の当たりにして裕美は目を背けたい気分だった。自分のしたこととは思われなかった。足首の縄を外し、まずは机の上の水溜りを手近にあったティッシュで拭い始めたときだった。執務室のドアがノックされたのだ。続いて聞き覚えのある声が裕美の耳に飛び込んできた。
「長谷部専務、いらっしゃいますか。」
深堀美紀の声だった。咄嗟に内側から鍵をロックしようと思ったが、ドアまで駆けつけても間に合わないと思った。すぐに机の上にあった自分の小水のはいったバケツだけ長谷部の机の下に隠す。それから足首を縛っていたロープをさっと手繰り寄せて同じように机の下に放り込んだときに、そのドアは開いて、美紀が入ってきてしまった。
「あれ、裕美さん。ここに居たの。」
中に入ってきた美紀は怪訝そうな顔をして裕美に尋ねる。
「わ、私は、・・・専務に頼まれていた書類整理を、今のうちに済ませてしまおうと思って、・・・。貴方こそ、どうしてここへ。今日は専務は午後にならないとこちらへは戻らないと言っていたのに。」
裕美は、今自分がここで何をしていたかということから話題をそらそうと必死だった。
「あら、私、専務からここで待っているように、直接電話を貰ったの。もうすぐ戻ってくる筈でしょ。確か。」
そう言って、開き直る美紀だった。真実だけに、上手く反論することの出来ない裕美だった。
「私、ここで専務を待っているから、貴方、秘書室へ戻っていていいわよ。」
そう言われると、何とも反論できない。そのまますごすご戻るしかないのだった。しかし、自分が洩らしたものはバケツに入って、長谷部の机の下に置いたままだ。臭いがするかもしれなかった。
秘書室に一人戻った裕美は、美紀が長谷部の執務室で何か見つけはしまいか、不安でならなかった。が、只待つしかなかった。誰もいないので、こっそり机の下で、脚を開いてスカートを捲り上げる。美紀が来てしまったので、咄嗟にたくし上げたパンティとストッキングだったが、バケツに洩らしそこねた小水で股に当たる部分がじとっと濡れていた。裕美はちょっと迷ったが、思いきって脱いでしまうことにする。臭いがしてしまうので、抽斗の中からビニル袋を探して脱いだ下着を丸めてしまい、ぴっちり封をする。シャワーを浴びて洗い流したい気分だったが、会社内ではそんなことは叶わない。
何時長谷部が戻ってくるか判らないので、何とか美紀をおびきだして、その間に机の下に隠した汚物を片付けねばならない。美紀が長谷部に部屋で待っているように指示したということは、今にも帰ってくるのかもしれないと裕美は思い、気が焦った。
(さっきは気が動転して、美紀を残して部屋を出てきてしまった。が、もし今にも長谷部が帰ってきて、美紀の居る執務室に入ってしまったら・・・。美紀と話をする為に自分の椅子に座ろうとする筈だ。その時にとんでもないものを机の下に見つけてしまうだろう。美紀は、直前に自分が居たことを知っている。それをそこに残したのは、自分だと知られてしまう・・・。今すぐにも何とかしなくては。)
しかし、美紀を誘き出して、長谷部の部屋を空にするうまい案が思いつかない。しかし、長谷部が戻ってくる時刻は時々刻々と迫っている筈だったし、美紀が直接呼ばれたということは、予定を早めている惧れもあった。裕美はもうパニックに陥っていた。
もう深く考えられなかったが、衝動的に裕美は秘書室を飛び出し、長谷部の執務室に向かった。扉を開けると、窓の傍に美紀が居た。窓を開けている。その位置から少し身を屈めたら、机の下が見えてしまう可能性があった。
「あ、裕ちゃん。今、窓を開けて空気を入替えていたの。何だか、変な空気がこもっているような気がして。」
その言葉に、裕美はどきっとした。そして一刻も猶予ならないのを感じた。
「深堀さん、ちょっとこっちへ来てくださらない。」
とにかくまず、机のこちら側に美紀を来させる必要があった。美紀は、裕美が何故そんなことを言うのか知っているので、わざとゆっくりと歩きながら、裕美のそばへ来た。
「深堀さん。お願い。今、すぐにここから出て行ってくれない。・・・お願い、訳は聞かないで。」
わざと怪訝な顔をしている美紀に、裕美は最後の手段に出た。いきなり、美紀の足元に跪いて土下座したのだ。
「お願い。何も訊かないで。お願いだから、一旦事務所へ戻ってほしいの。長谷部が戻ったらすぐに連絡するから。」
執務室の床の絨毯に頭をつけて、美紀の前で土下座して頼む裕美を暫く眺めていた美紀だった。(溜飲を下げるというのは、このことを言うのね。)と密かに思っていた。
しかし、あまりに裕美を追い詰めるのは、却って怪しまれる可能性もあると判断した美紀は、この辺で裕美を許してやることにする。
「いいわ。判った。何だか知らないけれど、人には言えない都合があるのね。じゃあ、何も訊かないで、今は事務所に戻っているわ。」
そう美紀が言うと、裕美は顔を上げて、涙ぐみながら上目遣いに美紀を見上げていた。
(これで、完全に裕美を精神的に支配した。)と美紀は感じた。勝ち誇ったような思いで、執務室に残された裕美を振り向くこともなく、悠然と立ち去った美紀だった。
美紀が去った後、暫く様子を窺がって、誰もフロアに居なくなったことを充分確かめてから、机の下に潜り込んで裕美の足首を縛っていたロープを束ね、小水の入ったバケツを持ち上げた。その時、何故か裕美は最初に置いた場所とは少し違うような気がした。
美紀がドアをノックして来たとき、あまりに慌てて隠したので、正確な場所など覚えている余裕もなかった。バケツを机の下に隠し、ロープも机の下に放り込んで、残っていた机の上の水溜まりをさっと拭き取るので精一杯だったのだ。しかし、何となくだが、自分がバケツを置いた場所とはちょっと違う位置にあったような、そんな気がしてならないのだった。
(まさか、美紀に見られたのでは・・・。もし、そうだったら、訳を聞かないでと言った自分の言葉をどういう風に取っただろうか・・・。)
不安な気持ちはあったが、とにかく長谷部が帰ってくる前にバケツを片付けてしまうことが先決だった。裕美は誰にも見られないように、こっそりと注意しながらバケツを抱えて役員用トイレにむかったのだった。
美紀と芳賀は、裕美を陥れる次の策略を相談していた。相談といっても、気の進まない美紀に、芳賀がうまく誘導して、美紀が自分で策を練ったかのように思い込むように仕向けていただけだった。しかし、芳賀にそんな風に誘導されて、裕美を懲らしめる案を考えているうちに、裕美を辱めることへの快感に、自分がだんだん酔っていくことにも気づいていた。そんな思いを抱く自分を恥じてはいたが、その思いが次第に強くなることに妙な胸騒ぎと不安をも募らせていた。
芳賀に誘導されて、作り上げた策略は、今度は違うやり方で裕美に失禁させるというものだった。
美紀は、芳賀から立ったまま、放尿して思いの場所へ小便を飛ばすという訓練をさせられた。そればかりか、それを観衆の前に披露させられ、観衆の顰蹙と罵声、嘲笑を浴びせられたのだ。その屈辱、いやそれ以上のものを、裕美に甘受させたいと考えたのだ。
その計画は、以前に裕美に仕掛けた罠より、もっと巧妙で手の込んだものになった。
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