妄想小説
宇宙刑事シャイダー アニーに仕掛けられた罠
二十三
「さ、着いたわ。アニー。ここならもう何処にも逃げ隠れすることも出来ないわ。アンタはあそこに居るフーマ軍団きっての猛者戦闘傭兵の二人と闘うのよ。」
漸く目隠しを取られたアニーが見たのは、どうやら南洋の島の何処からしい広い原っぱの向こうに立つ二人の屈強そうな大男だった。
「右に居るのはカンフーの使い手名手のプラーク・リー、そして左は黒人レスラーのジャイアント・ボボよ。あの二人がアンタのお相手って訳。ちなみにアンタたちの闘いぶりはあっちにあるテレビカメラで全世界に実況中継されるのよ。せいぜい一生懸命闘って、全世界のちびっこ達をがっかりさせないことね。」
「全世界に実況中継されるですって? いったい何の為に・・・。」
「アンタがフーマに屈して無様な姿を全世界に見せつける為に決まってるじゃないの。」
「私がフーマの軍団に屈するですって。いいわ。一体何人居ようが、私が全部倒して宇宙警察の強さを見せてやるわ。」
「ほう、活きがいいわね。アンタの手錠は外してやるけど、電子レーザービーム銃はおあずけよ。素手で戦って貰うわ。」
「貴方達相手なら、素手で充分よ。負けないわっ。」
アニーはこれまで何度もシャイダーと一緒に戦ってきた戦闘を思い返していた。独りで戦うことも初めてではない。相手を全部倒すという自信はあった。
(いまこそ、ここに居る全員を打ち倒してシャイダーを救わねば・・・。)
そう決意すると、まずは二人いる屈強そうな男二人に向けて戦闘ポーズを取るのだった。
まず最初に攻撃を仕掛けてきたのはカンフー男だった。さすがにこれまでの戦闘員ミラクラー達やギャル軍団と違って、手強い。まともに組んだら男の力には敵わない惧れがあった。右、左と体をかわし、隙を窺う。
後の軍団たちは二人の死闘を固唾を呑んで見守っている。カンフー男が痺れを切らして正拳突きを仕掛けて来た一瞬をついて、アニーは宙を飛ぶ。男の頭上からの後頭部を狙った蹴りが見事に決まり、男はその場に崩れ落ちる。
続いてアニーに退治したのは、ジャイアント・ボボと名乗る黒人の巨漢だった。こちらもまともに組みあったら力負けしてしまう。男との距離、間合いを取りながら隙を窺う。巨漢の男は力は強そうだが、俊敏さに欠ける。何度もアニーの身体を捕えようとするのだが、アニーはするりと身を交わして安易に組付かせない。しかしその時、アニーの身体に異変が現れた。男が伸ばした手をさっと避けて、身を回転させながら男の背後に廻って立ち上がろうとした時だった。アニーの内腿を何かがつうっと伝わったのだ。
(え、何・・・?)
大男に向かって身構え隙を見せないようにしながら腰を落とす。
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