監禁妻への折檻
三十四
「ねえ、数馬。蓼科の奥さんは大丈夫なの?」
「大丈夫とは、どういう意味だい?」
「あっちの方のことよ。してるの、奥さんと?」
朱美が訊ねているのは妻とのセックスのことだと数馬はすぐに察する。
「うーん。・・・。ちょっとご無沙汰気味かな。多分、厭きてきているんだろうな。俺の方が。」
「何でも手に入れるとすぐに飽きちゃう性格だもんね、数馬は。」
「お前とはそうでもないぜ。」
「だって、わたしはアンタのものにはなってないもん。」
「あ、なるほど。そうだな。」
朱美は数馬とセックスしたことがない訳ではない。しかし数馬が朱美のところに通ってくるのは必ずしもセックスが目的ではなかった。朱美の特殊な職業に数馬が興味を持っているからだった。朱美の方もセックスの為ではなく、自分のお客に対する愚痴をぶつける相手として数馬を利用していると言ってもよかった。
「ねえ、試してみた。奥さんを縛るの。」
「ああ、やってみたさ。でも最初は結構刺激になったんだけど、同じことしてても飽きちゃうんだ。」
「わたしには何となく分かるわ。うちにくるお客と違って、SMが趣味ってわけではなさそうだものね。アンタって奥さんに対してコンプレックスがあるでしょ?」
「ああ、そうかもな。入り婿にはなってなくて苗字も俺のものだけど、ずっとあいつの親に建てて貰った実家の敷地内の家に棲んでて、あの親爺にはずっと頭が上がらなかったからな。」
「それでなのね。アンタは嫉妬心も強いけど、征服欲も強いからね。奥さんに対してはその親爺さんに頭があがらなかった時の復讐をしたいんでしょ。」
「ああ、そうなんだろうな。あいつが屈辱的と思うようなことをするのが一番感じるんだよ、俺にとって。」
「だから最初は嫌がった縛ってするっていうのが感じてたけど、だんだん奥さんがそれを受け入れるようになっちゃったんで詰まらなくなったんじゃない?」
「さすがにSMの女王をやってるだけあって、よくそういう心理がわかってるんだな。」
「そりゃそうよ。SMクラブではセックスそのものはご法度なんだけど、相手の心理をついて演技するのが仕事だからね。」
「なあ、女が一番屈辱に感じるのってどんな場合なんだ?」
「そうねえ。私の場合は白ブリーフの男かしら。何故かSMクラブに来るM男って白ブリーフが多いのよね。一応お客だから対応するんだけど、白ブリーフの男に仕えるのって屈辱よね。だって白ブリーフって男の下着の中で一番格好悪いでしょ。それをお客として仕えなくちゃならないのが屈辱よね。まあ仕えるっていってもS嬢としてだから、こいつめって鞭を本気になって使うんだけどね。」
「ふうん、白ブリーフの男かあ。白ブリーフの男としなくちゃならないとなったら屈辱なのか。」
「だってあれ、勃起したのすぐ分かるでしょ。お前は淫乱だから勃起してるのが分かるのが好きなんだろって言われてるみたいだしね。」
「ふうん。そうなんだ。今度使ってみるかな。」
「奥さんの顔色をよく見てみることね。嫌そうな顔をしたらわざと顔を抑えて唇に触れさせるのよ。ああ、裏返して口に咥えさせるってのもいいかもね。」
「ほう、なるほど。それは嗜虐的だな。白のブリーフじゃなきゃ屈辱的じゃないかもな。」
「あとは定番だけど、剃毛ね。そうだ。誰かと応対しなきゃならない前の晩に剃毛しちゃうのが効果的よ。剃るって教えないで縛って浴室に呼び込んで突然毛を剃るって宣告するの。毛を剃った上で、ノーパンにさせて男に合わせるってのもいいかもね。」
「ふうん、よくいろいろ思いつくもんだな。」
「それは商売柄よ。S嬢ってのはイマジネーションが大切なの。」
「ふむふむ。勉強になるな。」
こうした会話をするのが数馬にとっても、朱美にとってもいい気晴らしになるのだった。そしてこの朱美に伝授された妻を辱める方法はその後、数馬によってどんどん試されていくことになるのだった。
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