監禁妻への折檻
三十一
「あ、ちょっと自転車押えているから先に降りてっ。」
倫子に勃起を気づかれないようにハンドルを抑える振りをして倫子を先に降ろす。
「へえ、こんな場所があるんだ。よく来るの、ここへ。」
「ええ、偶にね。一人になりたい時、ぶらぶらっと歩いて来るの。」
さり気なく倫子には背を向けるようにしているうちにズボンの中で勃起は次第に収まってくる。
「ねえ、琢也さん。奥さん、亡くされたって聞いたけど・・・。寂しいんじゃない? 」
倫子から亡くなった妻のことを切り出されて、琢也は妄想から現実の世界に引き戻される。
「いや、もう大丈夫。妻は何時でも自分の心の中に生きているから。」
ついそう嘘を吐いてしまった琢也だった。
「そう・・・。そうよね。ごめんなさい。辛いこと、思い出させてしまって。」
「大丈夫だよ。それよりみっちゃんこそ、何か相談したいことがあったんじゃないの? こっちに引きこもって、みっちゃんこそ寂しいんじゃないの? 」
「ああ、でも・・・。今回みたいにいろんな人が訪ねてきてくれるし、自然の中に居るって気持ちいいし・・・。でも、冬はちょっぴり淋しいかな。あ、もうそろそろ戻らないと。皆んなが起きてきちゃうわ。」
「ああ、そうだね。じゃ、戻るからしっかり掴まってて。」
琢也は再び倫子を後ろに乗せると、山荘ロッジへ向けて自転車を漕ぎだすのだった。
倫子は琢也の腹にしっかり掴まりながら、何も告白出来なかったことを密かに悔やんでいた。
山荘ロッジが見えてきたところで、倫子は琢也の袖を引っ張る。
「ね、ここで停めて。私、先に山荘ロッジに戻ってるから琢也はもう暫くこの辺を廻ってから戻って来て。」
琢也もすぐに一緒に戻るのは不味いのだと気づく。
「わかった。じゃ、自転車借りておくからもう一周この辺を廻って来るよ。」
「お願い。」
そういうと、倫子は山荘ロッジの勝手口に一人で向かうのだった。
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