
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第一部
六
契約書が交わされるとすぐにヨンは公式ユニフォーム作成の為の採寸に都内某所にあるアパレル設計事務所のスタジオに呼ばれる。デセックスから正式にユニフォーム制作の委託を受けているとのことだった。
鮫津から渡されたメモを頼りにそのデザイン事務所をたった一人で訪ねていったヨンは、あるビルの地下にあるスタジオで採寸を受けることになる。履歴書に身長、体重、スリーサイズまでしっかり記入して提出してあったのだが、ユニフォームを制作するには再度正確な採寸が必要とのことだった。
(また、股下長まで測られるのかしら・・・。)
そのヨンの危惧は現実のものとなった。しかしそれだけでは済まなかったのだ。
ヨンが案内されたドレッシングルームには若い女性スタッフが一人だけだったので助かったと思ったのだが、マスクをして薄めのサングラスを掛けて顔を隠しているそのスタッフから下着まで全部取るように指示されたのだった。
「えっ? ブラジャーもショーツも・・・ですか?」
「はい、そうです。下着などで矯正された状態では理想的なプロポーションを作る為の正確な寸法が出せません。生の身体の状態を正確に把握しなければ、理想のバストライン、ヒップラインなどを作り上げるインナーの設計が出来ないのです。ご理解ください。」
ヨンの股間は社長の前で陰毛を全て剃り落とされたばかりだった。それをアパレルの専門デザイナーとはいえ、知られるのは忍びなかったのだ。しかしウェアのブランドモデルを引き受けてしまった以上は断ることは出来ないだろうとヨンは覚悟を決める。
「わ、わかりました・・・。」
(専属契約を獲る為なのだから、この小娘のような女にあそこの毛が無いことを知られて笑われるぐらい我慢しなくちゃ・・・。)
そう思いながらも腰骨のところでショーツに手を掛けたヨンはそこからなかなかショーツを引き下げる勇気が出ない。
「あの、もしかして・・・。あそこの処理がまだお済みではないのですか?」
「え、あそこのって。あ、あの・・・。実はわたし、あそこの毛が・・・。」
「あ、もう既に剃ってらっしゃったのですね。助かります。もし剃り上げてなければこれからお願いするところでした。」
「えっ? あそこの毛は剃っておくものだったのですか?」
「ええ。デセックスさんのモデルの1次選考に通った方には皆さん、あそこの毛の処理をして頂いています。それがデセックスさんの方針ですから。」
「ええっ? デセックスの方針・・・?」
「ええ。デセックスさんは女性のセクシーさをとても大事になさるクライアントさんです。なのでもしもショーツから陰毛などがはみ出てしまうと折角のセクシーさが台無しなんだそうです。」
「そ、そうなの・・・。良かったわ。事前に処理しておいて。」
ヨンは狐につままれたような気持ちでショーツを下ろして無毛の陰唇を露わにする。
採寸は身長、スリーサイズは勿論のこと股下長も念入りに測られ、腰のくびれまでの位置も何度も正確を期すように測定されたのだった。また乳房の周り、腰周りも何度もメジャーを当てられ入念に測定されるのだった。
「も、もういいですか・・・?」
「ええ。私の採寸は以上ですが、最後にコンピューターで3D映像を撮って頂いて3次元データを作成する必要があります。では下着は取ったまま、こちらへどうぞ。」
ヨンはカーテンで仕切られた別の場所に案内される。そこには前後、左右に四つのカメラが設置されているのだった。
「こちらでお客様の身体の寸法をコンピュータで3次元データとして記録させて頂きます。両腕を頭の後ろに当てるようにして乳房と股間が正確な測定が出来るようにしてください。あ、カメラの方が自動的に移動して撮影していきますので、ただじっとして立っていて頂くだけで結構です。」
「は、裸を撮影される・・・のですか?」
「いえ。撮影ではなくてデータ取りです。理想的なボディラインを作る為の下着の基礎データを取るのです。」
「そ、そう・・・ですか。わかりました。」
ヨンは言われたとおりに両腕を挙げて頭の後ろに当て、乳房と股間を機械的なカメラの視線に晒すのだった。そのカメラの視線は機械的なものだったとはいえ、ヨンの身体、それも何も身に着けていない素っ裸の身体を舐め回すように捉えていくように思えてならないのだった。
日本のスポーツウェア会社のスポンサー契約を受けての最初の日本でのトーナメントマッチ出場の報せを受けたのは新しいウェア作成の為の採寸を受けてからそんなに日は経っていなかった。ウェアの作成が間に合うのか心配だったが、いざとなれば隣国でのスポンサー契約の際に使っていた自前のウェアを使えばいいと考えていた。その当時はスポンサーにはスポーツウェア会社は含まれていなかったからだ。しかし新しいウェアは試合の直前になってスポンサーメーカーから届けられた。

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