全裸両手挙げ

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第一部



 五

 「ううむ。そうだな・・・。君の股下長はどれくらいかね?」
 「え? ま、股下長ですか? わ、わかりません。測ってみたことがないので。」
 「測ってみたことがないのか。ふむ。ならば今ここで測ってみなさい。そこのテーブルの上に三角定規と鉛筆とメジャーがある筈だ。」
 ヨンがカーテンの向こうの男が指差したと思われるテーブルの方を見てみると、確かにメジャーと三角定規、それに鉛筆が置いてあるのがわかった。
 「壁に背を向けて真っ直ぐに立って、足の指先を持ち上げるようにして踵をぴったりと床に付けるのだ。その状態で三角定規を使って壁に垂直になるようにした面を股間に当てて股の位置を確認したら鉛筆で壁に記しを付けるのだ。後はその位置と床との間をメジャーで測ればよい。」
 「あ、はいっ。」
 ヒールを履かない生の脚の股下部分の長さを測らされるのは屈辱的な感じさえした。しかしそれを測れと言うのに逆らうことは出来なかった。

股下率測定

 ヨンは少しでも脚の長さが多く出るように自分の股間に三角定規の一つの辺を押し上げる。しかし所詮どう持ち上げてみても本当の股以上に三角定規を押し上げるのは無理なのだった。
 「あ、あの・・・74cmちょうどです。」
 「ふむ、そうか。君の履歴書には身長は167cmとあるがそれは間違いないね?」
 「ええ。日本のプロテストで何度も測定されている公式記録ですから間違いはないです。」
 「すると股下率は・・・、えーっと44.3%か。まあ、物凄く脚が長いとは言えないが、日本女性の標準以上ではあるな。まずは合格としておこうか。」
 「あ、ありがとうございます。」
 「女子ゴルファーは試合のウェアでの撮影がどうしても多くなる。そうなるとヒールの高い靴でスタイルを誤魔化すという訳にはいかなくなる。平べったいシューズを履いての脚の長さというのが重要なポイントになるのだよ。」
 「ああ、そうなのですか。知りませんでした。勉強になりました。」
 「では、今日のオーディションは合格ということにする。今後の事についてはエージェント、つまりマネージャーとして鮫津君を指名する予定なので、彼の指示に従ってくれたまえ。」
 「わ、わかりました。ありがとうございます。」
 ヨン・クネはスポンサー契約の申し出に応じてあげるという積りで参上したのが、すっかり自分が品定めされて合格を受けるという立場になっていたことに違和感を覚えながらもなんとか専属契約を勝ち取ったことで安堵の念を抱きながら、脱ぎ捨てた衣服と下着を拾い集めるとシャワールームで着直して部屋を後にしたのだった。

 社長の面談を終えてすぐにマネージャーを指名された鮫津吾郎を通じてスポンサー契約の契約書が送られてきた。ヨンは鮫津が社長と呼んでいる人物の名前すら知らされていなかった。どうも不動産関係の社長をしているらしいことまではそれとなく鮫津から聴き込んではいたが、その会社からの出資で新たに立ち上げたスポーツウェアのブランド、デセックスも経営しているとのことで、ヨンは日本におけるプロツアーの出場に関わるもろもろの援助を受けながらデセックスの専属モデルとしての仕事もするという契約だった。契約書の相手側の署名欄は空白になっている書類を二通渡されてヨンだけが署名させられた。二通の一方は本来ヨンが預かるものの筈だったが、社長が署名後マネージャーである鮫津が預かるとのことだった。スポンサー援助をする為の秘密の条件も契約書の中に記載されているのをヨンはちらっとだけ読むことを許されたが、「二人きりで逢うさいにはどんな命令にも従うことを誓います」という文言がしっかりと記載されているのだった。



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