
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第四部
六十八
「ねえ、鮫津さん。あの後、リ・ジウはどうしたかご存じ?」
「あのゲームの後ですか? 本国へ帰国したと聞いています。多分、引退会見をするんだと思いますが。」
「やっぱり、そう。ちょっと酷い仕打ちだったかしら。」
「いえ、聞くところによると、スポーツ記者とかカメラマンを集めたのはリ・ジウ本人だそうですよ。まさかあんな結果になるとは本人は思いもしなかったんでしょう。」
「あの日、社長が私にアンスコを着用するのを許してくれたのは、もしかして作戦?」
「さあ、どうでしょう?」
「それと、昔のゴルフ仲間の社長さんたちと先にストリップ・ゴルフをさせたのは予行演習だったのでは?」
「さあ、それも分かりません。全て社長のお考えですから。」
「そうね。そんな事詮索してみたって仕方ないわね。これで当分私の専属契約も安泰ってことになるのかしら。」
「それはどうでしょう。何処に敵が居るか分かりませんから周りには気をつけていて下さいね。」
鮫津のその心配は杞憂には終わらなかったのだ。
その日は試合もモデルとしての撮影もオフだったので、午前中軽くいつもの練習をしてから自宅マンションに戻ってきたヨンだったが、何となく違和感をかんじるのだった。
(何だろう。変な胸騒ぎがするわ。)
クローゼットにバッグを置きに行こうとして後ろに視線を感じたヨンは何気なく振り返ったのだが、そこには見知らぬ男がナイフを持って立っていたのだ。

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