
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第一部
十四
翌日ヨンはマネージャーである鮫津吾郎の運転する車で指定されたゴルフ場へ赴く。身に着けているのは何時も通りスポンサーである社長が経営するブランド、デセックス社の超ミニのゴルフウェアだ。そしてこの日も勿論アンダースコートを着けることは許されていない。ショーツはブランドのロゴが入ったクロッチ部分の無い薄手の白いものだ。前の晩には万が一スコートの奥を覗かれたり、考えたくはないが敗けてスカートを奪われるようなことがあった場合に備えて念入りに股間の生えかかった短い陰毛を剃り落としておいた。色の薄いショーツでは黒い茂みがあると透けてしまう惧れがあるからだ。
「鮫津さん、貴方はプレイには参加しないのですよね。」
「ええ。私は試合には出れない社長用に様子を実況する為のビデオカメラで撮影するように言われていますから。」
「しゃ、社長に試合の様子を実況中継するのですか? そ、そうですか・・・。わかりました。」
試合の相手をする四人の男たちは既にクラブハウスに到着していてヨンたちの到着を待ち構えていた。いずれもデセックスの社長の古くから付き合いのあるゴルフ仲間たちで、皆何らかの会社の社長を務めていると事前に鮫津が教えてくれていた。
「いやあ、ヨンさん。よく来てくださった。私の夢が叶ってこんなに嬉しいことはない。」
出迎えた四人の中の一人がヨンに握手を求める。デセックスの社長にストリップゴルフを頼んできたのはこの男に違いないとヨンは推測する。
「えーっと・・・。何とお呼びしたらよいのでしょうか?」
「ああ、ここではパーマーと呼んでくれ。本名ではちょっと都合が悪いのでな。」
「承知致しました、パーマー様。」
「こっちはニクラウス君だ。」
パーマーと呼ばせた男は隣の男を偽名で紹介する。」
「いや、ヨンさん。いつもながらにお美しい。特に脚が綺麗ですな。」
ニクラウスという男はヨンの短いスコートから剥き出しの生脚をしげしげと遠慮なく食い入るように眺め下している。
「デセックスのウェアは身体の線が特に綺麗に見えるように設計されているんです。」
「いやいや、ウェアのせいではなくて君の身体そのものが美しいのだよ。」
この男は早くスカートを剥ぎ取って見えている部分だけではなく脚の付け根までを見たくてしようがないという顔をしていた。
「このゴルフ場は随分と閑散としているんですね。」
「ははは。そりゃもちろん特別なマッチだからね。我々五人だけの貸し切りなのだよ。グリーン整備の者も今日は誰もゴルフ場に入っては来ん。我々のクラブを運ぶカートを運転するキャディの婆さんが一人だけと、あとは撮影担当の君のところのマネージャだけだ。だから安心してプレイしてくれ給え。」
ヨンには(どれだけ脱がされても外部には見られないから大丈夫だ)と言っているようにしか聞こえない。他の二人には夫々ウッズ、ジャンボと呼んでくれと言われる。
(大丈夫。二打差なら大きなミスさえしなければ負けることはないわ。一枚だって脱がされるつもりは無いのだから。)
「ルールは聞いているよね?」
「あ、ええ。二打のハンディですよね。皆さんのうちの誰かが二打以上の成績で各ホールを廻れば皆さん方の勝ち・・・ですよね。」
自分が勝つことが出来なくて四人の男達の方が勝った場合にどうなるかは敢えて口にしない。
「そうそう。それで君が勝った場合だが、1ホール辺り100万円を最下位の成績の者が君に支払うことになっとる。全部君が勝利すれば相当な金額になる筈だ。」
自分が勝った場合のことは聞かされていなかったが、あまりの賞金の多さに唖然とする。しかし賞金よりも自分が1ホールでも負けないことが一番重要なのだと自分に言い聞かせるヨンだった。

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