
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第二部
四十三
ワカメ酒という言葉が出た瞬間にパーティ会場に居た女性からは悲鳴に似た声が、男性からはやったーと言わんばかりの歓声が上がる。
「ワ、ワカメ酒って何ですか・・・?」
何も知らないヨンは司会者に説明を求める。司会者は顔を赤らめながら仕方ないと言わんばかりにヨンに説明するのだった。
「ワカメ酒は江戸時代ぐらいから続く日本の伝統的な芸者遊びのひとつです。女性が全裸で正座して座るとあそこの部分に凹みが出来ます。そこへお酒を注ぎこんで盃の代わりをするのです。あそこの毛がワカメが漂っているように見えるのでワカメ酒と呼ばれているのです。」
「えーっ・・・。そ、そんな非常識なことを、今ここで・・・、この場でさせようと言うのですか?」
「あーっ。あの、さすがにお客さんに全部をお見せする訳ではありません。カーテンの向こう側で下着をお脱ぎになって正座して頂いてそこへお酒を注がせて頂くことになります。そのお酒をお飲みになる王様役の方も目隠しをされる決まりになっていまして、全裸で正座している姿を直接見ることは出来ません。全ては想像の世界の余興ということになります。」
「えーっ。何て破廉恥な罰ゲームなの? そ、そんな事・・・。絶対出来ませんっ。」
「あらっ、ヨン・クネさん。それはずるいわよ。罰ゲームをする側の籤を引いたのも貴女自身だし、それを逃れることも出来た筈の3枚の籤からこの罰ゲームのカードを引いたのも貴女自身なのよ。それを今になって出来ませんは通用すると思っているの?」
何時になく居丈高のリ・ジウの言葉にヨンはつい萎縮してしまう。
「そ、それは、そうだけど・・・。あ、そう。そうだわ。リ・ジウっ。ちょっと・・・。」
ヨンは何とかこの難を逃れようと苦し紛れの言い訳を思いつく。
「私・・・。じ、実は訳あって、あそこの毛を処理して剃り上げているの。だからワカメ酒は出来ないの。ワカメに相当するあそこの毛が無ければワカメ酒にならないでしょ?」
リ・ジウだけに聞こえるように耳元に囁いたヨンだったが、それを聴いたリ・ジウは突然マイクを持つと観衆全体に聞こえるように言い放つのだった。
「今、ヨン・クネさんから、あそこの毛を全部剃りあげているのでワカメ酒は出来ないのだと申し開きを受けました。どうしましょうか?」
まさかあそこの毛を剃毛させられていることを暴露されるとは思っても見なかったヨンは狼狽える。
(ど、どうして・・・。そんなことをこの場で言ってしまうの?)
しかし、全てはリ・ジウの作戦通りなのだった。
「じゃ、代わりに聖水酒では?」
会場の男性客の一人が言い出した。
(聖水酒・・・?)
突然出て来た耳慣れない言葉にヨンは戸惑う。

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