提供呼掛け

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第二部



 四十一

 「今、身に着けていたブラジャーとショーツを提供してくださったヨン・クネさんはノーパン、ノーブラではパーティ会場に戻れないんですって。皆さ~ん。ヨン・クネさんがパーティ会場に戻れるようにどなたか代わりの下着を提供して下さる方はいませんかぁ?」
 一瞬、茶番のようなリ・ジウの提案に会場はしーんと仕掛けたが、すぐさま一人の若い男性の手が上がった。
 「ボクが今穿いているのは超きっつきつのブーメランパンツなんで、それを脱いで提供しま~すぅ。多分、ヨン・クネさんにはぴったりのサイズだと思うんですが。」
 「あ、ありがとう・・・ございます。では、こちらにどうぞ。」
 予め仕込んでおいた事なのだが、リ・ジウは意外な展開になった風を装って手を挙げた男性をカーテン衝立の奥へ呼び寄せ、下着を取ったばかりのヨン・クネをカーテンの奥から引き出す。
 男は素早く衝立の向こうへ姿を消すと、ズボンをさっと脱ぎ捨て続いてブーメランパンツを脱ぎ捨てると再びノーパンのままズボンを穿いて悠々と衝立の向こうから出て来る。その姿に観客はやんやの歓声を挙げる。

ブーメランパンツ脱ぎ

 「さ、あの方の好意を無にする訳にはゆかないわよね。」
 リ・ジウから男性が脱ぎ捨てたブーメランパンツを渡されるとヨンは仕方なくカーテン衝立の後ろに戻るのだった。
 男性が脱ぎ捨てたばかりのブーメランショーツは確かにヨン・クネの豊満な尻にはサイズがぴったりではあったが、男性自身が触れていた筈の内側のクロッチに微かな湿り気を感じると心の奥底まで穢されたように感じてしまうヨンなのだった。

 男性が直前まで穿いていたブーメランパンツを嫌々着用させられたヨンは暗澹たる気持ちで自分の席に戻る。横に居たメリーが慰めるようにヨンに言うのだった。
 「大丈夫よ。ヨンさん。ビンゴは当たった順番に好きな賞品を選ぶことが出来るんだから、自分が提供した品物を取り返すことも出来るの。貴女にだってご自分の下着を取り戻すチャンスだってまだあるんだから。」
 しかしそれはメリーのほんの気休めでしかなかった。最初の内は調子よくどんどん升目が開いていったビンゴカードもあと一歩という段になって最後の一マスがどうしても当たらない。しかしそれは予め仕組まれた最後のひとマスを埋める筈の番号の駒が密かに抜き去られていたのだとはヨンには知る由もなかったのだ。最初にビンゴを当てた禿げ親爺の男性は自分が提供した高級時計には目もくれずにヨンが渋々出した下着上下をかっさらって行ったのだった。その後はヨンにとってビンゴゲームはどうでもいいものだった。ショーツとブラを有無を言わさず提供させられ代わりに男性が直前まで穿いていたブーメランパンツを穿かされたのだ。しかもカーテン越しで見えなかったにせよ、客等の目の前で穿き替えさせられたのだ。唯一、誰よりも早くビンゴを完成させて自分が提供させられた下着を取り返すということも他の男性客に一番に獲られてしまった為に叶わぬことになってしまった。そうなってしまったからにはその後、自分自身がビンゴになろうがどうでもよく、ただただ早くこのゲーム、いやこのパーティ自体が終わってくれることを望むしかなかった。それまではスカートの中の男性用パンツを見られることのないように膝の上に両手をしっかり載せて座っていることしか出来なかったのだ。



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