バナナ運び

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第二部



 三十七

 ステージ上のバナナを咥えたヨンは、目隠しをされる前に見た穴のような形状の輪っかが幾つか付いた帽子掛けと思われる場所ににじり寄っていく。しかしそれはすでに全裸の股間を大きく広げた女性の画像が貼り付けられたパネルに穿かれた孔に向かっているのだった。観客たちはもっと左とか、もっと右、もっと上、もっと下とヨンに助けを捧げるかの様に歓声を挙げていた。
 観客たちの声に助けられながら何とかターゲットの孔を探り当てたヨンだったが、何故か口に咥えたバナナはすんなりと孔の中には収まってはくれないのだった。全裸にされた女の陰唇画像が貼り付けられたパネルの孔は微妙にバナナの直径より細く作られていて、すんなりと中にバナナを押し込められないように作られていたのだった。
 「ヨン、そこ。そこだ。もっと強く押し込んでっ。」
 「もっと強く、強く突き刺せっ。」
 周りのギャラリーの声に、挿し込んだ場所は間違いないとは思うもののすんなりバナナが奥へ挿し込まれていかないことに焦りつつも涎を垂らしながらヨンはバナナを押し込んでいくのだった。もしもう一度バナナを落としてしまったり、力を入れ過ぎてバナナを噛み切ってしまったら最初からやり直しの上に、ペナルティのWクリップをもう一つ付けられることになるのだと念を押されているヨンは顎と唇が疲れ果ててくるのを必死で堪えてただただ口の中の滑るバナナを孔の中に押し込もうと悪戦苦闘するのだった。
 最後にとうとうバナナの外側が少し削れてズブッという感触のもとにバナナが穴のなかにぬめり込んでいった。
 「あ~ら、お上手。とうとうバナナ運びを歓声させてわね。皆さ~ん。拍手。」
 司会者の声にどっと沸いた観衆からの拍手に交じって笑い声が飛び交っているのをヨンは不審に思いながらも立て膝の格好から漸く立ち上がる。
 ステージの上ではダビデ像、そして全裸で大股開きの女性のパネルが急ピッチで元の帽子掛けに挿げ替えられていく。ダビデ像とパネルは完全に片付けられずにステージの奥に置かれ、ヨンの方からは像の前面とパネルの表が見えないように裏返しにされただけで残されることになったのだった。
 「ねえ、もうバナナ運びゲームは終わったのでしょ。早くこのアイマスクを外してくださいな。」
 ヨンはすぐ傍にいるらしい司会の女性に頼み込む。
 「もうちょっと待ってね。あ、そうだ。お顔がだいぶ汚れているわよ。いま拭き取ってあげるわね。」



yon

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