牢屋椅子

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第二部



 三十一

 「皆さーん。ちょっと無理があるけど、あれが牢屋だと思ってくださいね。あ、王様の、いや警官役のメリーさんが戻ってきました。皆さん、メリーさんに拍手っ。」

警官コスプレ

 何時の間にかメリーという王様に当った女性はコスプレの警官の衣装に着替えていた。そしてその手には鈍く光る手錠が握られているのだった。
 ヨンはこっそり自分が引いた籤の番号を確認する。四番だった。
 (どうぞ、今回も当たりませんように・・・。)
 「さ、メリーさん。逮捕される麻薬密売犯人役の番号を指名してくださいっ。」
 「はーい。それは4番の人でぇ~すっ。」
 (えーっ? そ、そんな・・・。)
 当たってしまったヨンは思わず顔を蒼褪めさせる。
 「はーい。4番に当ったのはどなたですかぁ?」
 司会役の加代が辺りを見回す。王様ゲーム参加者たちは互いに顔を見合わせている。
 「あ、あの・・・。わたし・・・です。」
 仕方なくヨンは手をそっと挙げて名乗りを上げる。
 「じゃ、メリーさん。麻薬密売犯人を逮捕して手錠を掛けちゃってください。」
 メリーと呼ばれた警官のコスプレを纏った女が意気揚々とヨンの傍にやってきてヨンの片手を取って高々と差し上げる。
 「はーい。麻薬密売犯を今、現行犯逮捕しました~っ。」
 そう言うと手にしていた手錠を高々と上げさせた手首にガチャリと掛けてしまう。
 「それじゃ、警官は麻薬密売犯を牢屋に投獄してくださ~いっ。」
 司会役がそう高らかに告げると、ギャラリーとなっていたステージ周辺の客たちがやんやの喝采の声を挙げる。
 「さ、あそこの牢獄に行くのよ。」
 「え、あの椅子に座るのですか?」
 「そりゃもちろんよ。貴女は麻薬密売犯なんですから。私は警官として貴女をあそこに連れていく義務があるのよ。」
 お茶目っ気たっぷりにウィンクして見せると片手に繋いだ手錠のもう片方を持ってヨンを牢屋に見立てた一段高い壇上の椅子の方へ引っ張って行くのだった。
 ヨンは仕方なくそれでなくても短いスカートがずり上がってしまう裾をもう片方の手で抑えながらスツールの上にあがる。
 「さ、もう片方の手にも手錠をするから、背中の方に手を回すのよ。」
 「え、何ですって? 後手に繋ぐつもり。そんな事したら・・・。」
 (パンツが丸見えになってしまう・・・)その言葉はさすがに口に出しては言えなかった。しかしメリーという女性は有無を言わさず渾身の力を篭めてヨンのもう片方の手首を掴むと後ろに捩じ上げてスツールの背もたれに手錠を通した上で自由だったもう片方の手首に手錠嵌めてしまう。
 (ああ、そんな・・・。ひ、酷いわ。)
 メリーはヨンが両手を後ろ手に拘束されて裾の奥を隠せなくなってしまった膝の方に廻って、下着が露わになっているかどうか確認すると、意気揚々と自分の席に帰っていってしまうのだった。
 「ああ、嫌っ。こんな格好・・・。いつまでこんな格好を晒さなければならないの? リ・ジウっ。お願いだから、助けてっ。」
 「あーら、ヨンちゃん。何を慌ててるの。ただのゲームなんだから。次の回に王様を引き当てて誰かに命じて手錠を外させればいいだけなんだから。それまでの辛坊よ。」
 壇上のスツールの上でパンティを丸見えにさせられたまま隠すことも出来ずにいるヨンの方をあざ笑うかのように見上げると加代にゲームの続行を促すのだった。



yon

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