
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第二部
四十二
「えーっ、ビンゴ完成者が十名出たところでこのゲームは時間切れと致します。テーブルに残っている提供された賞品は提供者の元へお返ししますので、黒服が近くに参りましたらお申し出ください。当然のことながら上位十名に引き渡された賞品につきましては返却は出来ませんので、ご寄付ということでご了解願います。」
司会がそう告げたところで、ヨンはやっとこの意味のないビンゴゲームが終了になってほっとしたところだった。
(あとはこのまま何もなくパーティ自体が早く終わってくれるのを待つしかないのだわ。)
ヨンの気持ちが通じたのか、司会者からパーティ終了へ向けての言葉が発信される。
「えー、残りのお時間も迫って参りましたので次の王様ゲームを持ちましてパーティは終了とさせて頂くことになります。皆さま、宜しいでしょうか?」
「ちょっと待ったぁ。今回はあの余興は無いのかい?」
「は? あの余興と仰いますのは・・・。」
一人の如何にも好色そうな禿げ親爺が手を挙げてつかつかとリ・ジウの方へ近寄るとリ・ジウに耳打ちする。
「え、あれっ・・・ですか?」
「だってパーティの最後には何時もやってるじゃないか。」
「ああ、そうですが・・・。あれは・・・。あれは男性が王様役で、女性が罰ゲームをする側でないと成立しないものですから。うーん・・・。」
ヨンはいつもやる余興と聞いたのだが、自分一人が何をやるのか知らないでいることに気づく。
「ねえ、何時もやる余興って何の事かしら。」
ヨンは隣にいるメリーに訊ねてみるが、メリーは困ったような顔をして言葉を濁す。
「い、いやいや。私の口からは言えないわ。」
メリーの反応にヨンは只ならぬ不安を禁じ得ない。
「じゃ、こうしましょう。最初に男性だけが籤を引いてまず王様を決めます。次に女性が籤を引いて王様の言う番号を引いた人が罰ゲームの対象者となることにします。でもそれじゃ女性の方が圧倒的に不利なので、罰ゲームにあたった女性は更に三枚のカードの籤を引きます。一枚はこの男性のお望みのあの罰ゲーム。もう一枚は逆転罰ゲームで王様の方が指名した女性から罰を受けることにします。もう一枚はドローで罰ゲームは無しとするというものです。女性側の指名された人はこの三枚のカードを引く権利を得て、男性側は自分が逆転罰ゲームを受けるというリスクを負うのです。どうですか?」
会場からは了承したという拍手が沸き起こる。最初に提案した男性もいいだろうと首を縦に振っている。
最初に男性メンバーたちが籤を引く。すると何と最後の罰ゲームを提案した禿げエロ爺じいが王様を引き当てるのだった。そしてヨンを含めた女性が籤を引く。
(あ、また4番だわ。)
ヨンは嫌な予感が否めない。
「それでは、罰ゲームの対象者をご指名ください。王様っ。」
「じゃ、4番の人に。」
(えーっ、なんでまた依りによって・・・。)
ヨンには悪夢の続きとしか思えない。しかしこれはリ・ジウによって周到に準備された罠だったのだ。この時の籤に使われたカードも実際は全て同じ罰ゲームのカードが用意されている。しかしそうとは知らないヨンは何とか自分が罰ゲームをしなくて済むカードを引けるチャンスは残っているのだと信じ切っていたのだ。
「じゃ、ヨンさん。この箱の中にある3枚のカードから罰ゲームのカードを選んでください。」
司会者がそう言って掲げる箱の穴に手を突っ込まざるを得なくなったヨンはただドローか逆転罰ゲームのカードを引き当てることだけを祈っていた。逆転罰ゲームのカードを引き当てた場合には罰の言い渡しを辞退することまでも考えていたのだ。しかしヨンが引くことになる箱の中のカードは全て男性が希望の罰ゲームが書かれたカードしか入っていないのだった。
祈るような気持ちで箱に手を入れたヨンは一枚のカードを引き抜く。
「ヨンさん。何と書いてあるかそのカードを読んでください。」
司会に促されてヨンはカードを読むしかなかった。
「お、王様に・・・、王様にワカメ酒を振る舞う・・・?」

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