お手本

凋落美人ゴルファーへの落とし穴



 第二部



 三十四

 何とか気配だけで帽子掛けに突き立てられたバナナを、半分だけ剥かれた皮を根元まで口だけで剥きだすとバナナの実の部分を口に咥えて反対側に据えられている孔の空いた帽子掛けの方へ向かうのだった。

 (何だか卑猥なゲームだわ。まるで・・・。)
 ヨンは自分が想像したものを打ち消すかのように脳裏から拭い去る。
 「はいっ。今、上手にミクちゃんがバナナ運びゲームの要領を実演してくれました。ミクちゃんに盛大な拍手をっ。」
 会場からはやんやの喝采の拍手が沸き起こる。
 「それでは、王様の方から今回のバナナ運び罰ゲームに当ってしまった人の番号を発表して頂きます。どうぞ。」
 ヨンは自分が引いたとされるリ・ジウから密かに見せられた籤の番号を思い浮かべる。今回もまたしても4番だった。
 (何だか妙に4番ばかりが私に当ってしまうわ。まさか・・・。)
 嫌な予感を打ち払うかのように首を大きく横に振って自分が当たらないように祈るヨンだった。
 「罰ゲームに当ったのは4番で~すぅ。」
 (え? まさか、嘘でしょ・・・。)
 ヨンは自分が罰ゲームをしなければならない当人になってしまったことで狼狽えていた。そこへ籤を代わりに引いたリ・ジウが近づいてくる。
 「貴女、本当に籤運が悪いみたいね。でも約束だから仕方ないわね。ああ、それにちょうど都合よく両手が使えないゲームだから後ろ手錠された貴女にはぴったりかもね。」
 リ・ジウは両手が自由にならないヨンの二の腕を取って高椅子からヨンを下ろさせると牢屋として設定させている一段高い壇上からヨンをステージ中央の方へ導いていく。
 「さ、ここに立って。あのバナナの位置と高さ、それからそれを挿し込む孔の位置と高さをよおく頭に叩き込んでおくのよ。」 そう言い終えると、有無を言わさずに視界を奪うアイマスクをヨンに着けさせてしまう。

 ヨンがアイマスクを着けたのを確認するや、ステージ上では俄かに舞台の変更が急ピッチで進められていた。最初にバナナが差してあった帽子掛けのところには等身大のダビデ像のレプリカが運び込まれた。その股間部分にはスタッドボルトが埋め込まれていたのだった。

股間スタッド

 そのスタッドボルトに差し込まれることになる半分皮を剥いたバナナには入念にオリーブオイルが垂らし込まれるのだった。



yon

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