二人被尿

妄想小説

地に堕ちた女帝王



 二十四

 あの日のシナリオは全て、横井が考えたものだった。紗姫を徹底的に虐めて屈辱を嫌というほど味わわせて、抵抗する気力を喪失させることで調教するのだと言っていた。痒みで堪らなくなった紗姫をトイレに呼び出し、まずは手錠を掛けて散々焦らしてから服従の宣誓をさせ、フェラチオで中出しをしてから、口で放尿を受け止めさせ、それに従ったら貞操帯を外してやってもいいというのだった。
 日下は手錠を掛けることも忘れていた。本当は、貞操帯を外す為なら何をしてもいいと紗姫が言ってきたら、キスをさせて貰うほうが良かったのだ。フェラチオをさせて口の中にスペルマや小便を浴びせかけるのは、可哀想な気がしたのだ。しかし、横井は絶対そうしなければならないと、きつく日下に言い含めたのだった。最後に抱きしめて唇を奪ったのも横井のシナリオにはないことだった。何故そうなったのかは、日下自身にもよく判らなかった。最後に憧れの紗姫を抱擁し、キスをしあった。それを紗姫も抗わなかったことで日下にはもうこれ以上の望みはなかった。長い、長いキスの後、そっと紗姫の身体を放し、そのまま立ち去ったので、その後、紗姫がどうしたかは日下は知らない。何かしてやりたかったが、何をしても思い出が傷つくような気がして、直ぐにその場を立ち去らねばと思ったのだった。

 翌日、紗姫は全く何事もなかったかのように、いつも通り日下が待つ喫煙室へひとりでやってきた。日下も紗姫がやってくるかは半信半疑だった。紗姫の表情をこっそり覗うと睨みつけるでもなく、微笑みかけるでもない、全くの無表情のまま、無言で日下の真正面に座ったのだった。腰を下ろす瞬間、さっと手の平を膝の前に置き、あっと言う間に脚を組むと、短いスカートから太腿を剥き出しにしているのに下着は覗かせない、これまでの紗姫の得意の座り方だった。日下は満足げに煙草に手を伸ばした。

 紗姫が最後の一服をゆっくり吐き出してから、すくっと立ち上がったところで、日下は背中に隠してあった紙袋を取り出し、紗姫に差し出した。紗姫も黙ってそれを受け取る。
 「今まで撮ったビデオと写真がすべて入っています。ただ、これと同じ物を横井さんがもう一組持ってはいます。」
 「そう。」
 紗姫は一言だけ答えるとそのまま背を向けて立ち去っていった。


 日下の報告に、横井は満足げだった。最後にキスをしたというのは勿論伏せておいたし、紗姫が「これからは素直に服従し、いっさい抗いません。」と宣誓をしたと嘘を吐いておいたのだ。勿論、ビデオや写真の入ったメモリカードなどを全て返したことも内緒にしていた。日下の心のなかで何かが以前とは変わってしまっていた。
 「横井さんは、紗姫さんはあまり好きじゃないんですか。」
 以前から訊いてみたかったことを日下は口にしてみた。
 「俺はああいう勝気な女は嫌だな。いつ寝首を掻かれるか分からないような奴とは落ち着いて抱き合えんからな。そこへいくと、あいつの子分みたいになっている真美のほうが俺は好きだな。」
 日下は紗姫と真美の顔を思い浮かべてみる。どう考えても、きつい表情が多い紗姫ではあるが、顔立ちの整った紗姫に比べ、真美は不細工で、醜女の部類にしか日下には思えない。しかし、真美から聞いた話でも横井は真美のことを満更でもないとは思っているようだった。
 「あの女なら、縛ったりしなくてもちょっと脅せばいうことを聞いて、歯向かったりしないからな。紗姫って奴は、一瞬たりとも油断出来ないから、落ち着かなくて嫌だ。」
 日下は横井が執拗に紗姫を虐め抜くのは、征服したい訳ではなく、攻撃されないようにする為であるらしいことが段々判ってきた気がした。
 「そうだ。紗姫もおとなしくなってきたようだし、そろそろ真美の方を呼びつけて一発抱かして貰うかな。このところ、御無沙汰で溜まってきてるしな。ひひひ。」
 最後のほうは、独り言のように呟いた横井だった。

 真美と紗姫は疎遠になった訳ではなかった。ただ、一緒に連れ立って日下の居る喫煙室へ行くことが無くなっただけだ。だから、資材部別館の更に奥にある秘密のプレハブ小屋でのレズビアンプレイは、今でも時折は続いていたのだ。
 そんな折に、真美は横井に呼び出されたことを白状したのだった。

 横井の執務室は中から鍵が掛かる。横井は日中、自分の部屋へ真美を呼び出しては鍵を掛けさせ、ズボンとパンツを下ろした自分の前に跪かせて、まず口で奉仕させる。それで充分硬くなったところで、真美を机に伏させ、突き出した尻のスカートを捲り上げ、下着をずり下ろして後ろから突くのだ。中出しは困ると真美が哀願すると、射精しそうになったところで再び口の中に突きたて、スペルマを全部呑みこませるのだという。秘密を暴露されたくない真美は横井の言うがままだった。そんな真美を横井は欲情の捌け口にしていたのだった。

 そんな真美の窮状を知った紗姫は、真美に日下に接近するよう指示を与えた。自分から日下に接近すると、日下の欲情に火を点けてしまう惧れがあった。真美から紗姫に言われてきたのだと言えば、言うとおりに操れそうな気がしたのだ。
 日下が殊勝にも返してきたビデオの中に、自分と真美の秘密のプレイを隠し撮りしたものがあったのを見つけていた。日下にそんな知恵があったのを知って驚いたのだったが、何かに使えそうな気がしていたのだ。
 「いいこと、真美。これはアタシから言われたことだって日下に言うのよ。そうすればアイツはアタシのことを聞く筈だから。」

 そうして、密かに横井の留守中に、横井の執務室に隠しカメラを設置させたのだった。紗姫自身も何度も横井の部屋に呼び出されていた。その執務室には壁に大きなダイヤル式の金庫が設置されているのを何度か見て知っていた。おそらく大事なものはそこに仕舞ってあるのだろうとあたりをつけていたのだ。

 「横井さん。実はゆうべ、紗姫と真美を懲らしめた時のビデオを観返していたんですが、消した筈なのに、一箇所、貴方の顔が映っちゃってるところを見つけちゃったんです。」
 日下は真美を通じて教えられた通りの台詞を、何度も練習したうえで、横井を前にして喋ったのだ。
 「何だと。いったい何時のやつだ。」
 「あの体育館で懲らしめた時のですよ。一瞬なんですが。今、有りますか?」
 一瞬、横井は不審そうな顔をした。が、自分でも不安になったようだった。
 「ちょっとお前、向こうを向いてろよ。」
 そう言って、横井は日下に窓際の方を向かせておいて、壁に設置してあるダイヤル式金庫ににじり寄ったのだ。金庫を開け、中を調べている横井の姿を日下があらかじめ設置しておいた数台のビデオカメラがしっかりその姿を捉えていた。

 ビデオテープに本当は、横井の姿は映ってはいない。しかし、誰のか判らない後姿が一瞬カメラの前を横切る場面があって、そこを指摘しろと言ってあったのだ。
 「ばーか。これはどうみても真美のほうじゃないか。おかっぱみたいにしてるから男の顔に見えたんだろ。」
 「はあ、そう言われればそうですね。でも、昨日は一瞬、横井さんの顔に見えたんですよ。本当に。じゃ、今晩、もう一度観直してみますよ。」
 「おい、いいか。そいつは大事な証拠品なんだからな。迂闊に出したりせずに、大事に保管しておけよ。紗姫とかなら盗みにも入りかねないからな。」
 そういいながら、自分の分のコピーを金庫に大事そうに仕舞う横井だった。

 横井の執務室の鍵は事前に合鍵を作ってあった。紗姫たちの属する環境安全課は、工場内の施設の安全管理をする関係上、全ての場所の合鍵を保管している。そこから鍵を持ち出して合鍵を作ることなど、紗姫たちには訳もないことだった。
 守衛たちの深夜の見回りも終わった夜更け過ぎ、紗姫は真っ黒のジャンプスーツに身を包んで、事務本館に忍び込んだ。合鍵で横井の執務室へ入ると壁の金庫へ真っ直ぐ向かう。ダイヤルは日下が仕掛けたビデオカメラがしっかりと捉えていた。
 金庫を開けると奥から日下が渡してくれた紙袋と同じものが出てきた。中身をあらためきっちりと同じものがコピーされて入っているのを確認する。そしてそれを取り出すと、用意してきた別の袋と入替える。
 ビデオテープの編集は機械操作が得意な日下がやったそうだ。その際に、横井や日下が映ってしまっている部分をカットして作り上げたものだった。しかしその際に、実は元テープも日下はこっそり取っておいたのだ。大事な二度と撮れない映像なので、少しの部分も失いたくなかったというのが動機だったが、今では全て紗姫に返したい気持ちになっていた。それで、今度は横井が映ってしまっている部分、紗姫や真美の顔が見えない部分だけで、確かに横井が女を犯している映像を編集で作らせておいたのだった。そのビデオテープと共に、横井が以前、建設中の公園で真美を犯そうとしていた時に紗姫が撮った写真を添えて、代わりに置いておくことにしたのだ。
 「さあ、これを取り返したからには、復讐の開始だわ。」
 紗姫は暗闇の中で決意をあらたにしたのだった。

金髪

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