痒み悶え

妄想小説

地に堕ちた女帝王



 二十三

 ふと我に返った紗姫はアパートの自分の部屋のベッドに突っ伏していたことに気づいた。目が醒めたというより、正気に戻ったというのが正直な気持ちだった。何時からここに居たのかも思い出せなかった。
 いつも寝巻きにつかっているベビードール型のネグリジェを纏ってはいる。腿を露わにしているベビードールの短い裾をそっとはぐってみる。下着はちゃんと付けていた。

 あの時、どうやってあの体育館から戻ってきたのかさえはっきり憶えていなかった。随分長い時間、ただ呆然として裸のまま体育館の床にしゃがみこんでいたような気がするのだった。日下の手で股間に当てられた熱いタオルの感触だけが今でもはっきり残っている。が、紗姫が洩らしてしまったものや、身体の汚れをどうやって綺麗にしたのか、服をどうやって着たのか、腰に嵌められていた貞操帯のベルトをいつ外されたのか、手錠は何時外して貰えたのか、思い出そうとしても浮かんでこなかった。

 「横井さん、大成功でしたよ。あの女、相当参っているみたいでした。」
 「そうか、日下。荒療治が功を奏したって訳か。」
 「そうなんです。シモの世話をしてやっている間も、目がもう虚ろで、されるがままになってまるで魂が抜けたみたいでした。」
 「へえ。あの高慢な女がしょげ返るなんざ、溜飲が下がるってもんだ。」
 「足をかけたのは僕ですが、自分から転んで、そのはずみでうんこを洩らしてしまったってえのが、とてもショックだったみたいです。」
 「だから言ったろう。ああいう生意気で強がっているやつは、一度、鼻をへし折ってやるのが一番効き目があるんだ。よく憶えておけよ。」
 「明日、どんな顔でやってくるかが楽しみですよ。横井さん。」

 その明日がやってきた。日下はいつものように喫煙室の奥に座って煙草を我慢している。紗姫は一人でやってくるような予感がした。そしてそれは的中した。子分の真美はこのところ資材部別館へ近寄ることさえ避けている様子だったのだ。
 近づいてくる紗姫はいつものようなきつい表情ではなく、どちらかと言えば無表情だ。愛くるしく微笑む顔というのを日下は見たことがなかったが、鋭い表情で睨まれないだけでも日下にとっては心地よかった。
 紗姫は無言のまますっと日下の真正面に座る。いつものように座る瞬間に手で隠すことも脚をさっと組むこともなかった。腰を下ろした瞬間からスカートの奥に白い逆三角形のショーツが丸見えになっている。ストッキングを着けていない生脚のせいもあって下着はくっきり見える。両膝をぴったり揃えて座っているのだが、スカートが飛びっきり短いのとタイトに詰めているので座るとずり上がってしまうせいだ。憎しみも恥ずかしさも感じられない無表情だった。日下から視線を外さないのだが、睨んではいない。
 日下がゆっくりと煙草に手を伸ばすと、紗姫もショルダーポシェットからいつものメンソールを一本取り出す。
 「この間はありがとう。」
 突然、紗姫が口を開いたので、日下は吃驚した。何のことを言っているのか判らなかった。
 (糞まみれになった尻を温かいタオルで拭いてやったことだろうか・・・。)
 日下が訝しげに考えていると、紗姫が再び口を開いた。
 「男子トイレから出る時、咄嗟に取り繕ってくれたでしょ。アンタの機転のお陰で変に思われなかったみたいだもの。」
 (ああ、あの事か)と日下は胸を撫で下ろす。体育館での忌まわしい出来事はもう記憶から消し去っているのかもしれないと、日下はそんな気がしたのだった。それにしても紗姫のほうからお礼を言ってくるなんて思いもしなかった。心を許し始めているのではないかと、そんな気さえしたのだ。
 「ま、ま、ま、紗姫さん・・・。あ、あの・・・、キスしていいですか。」
 突然自分の口から出た言葉に日下は自分自身でも驚いていた。ただ、今を逃してはこの後、一生言えないような気がしたのだ。
 しかし、その一言で紗姫の目が醒めたようだった。無表情だった紗姫の眉間に突然皺が寄った。いつもの鋭い目つきに戻っていた。紗姫はすくっと立ち上がっていた。
 「何時からアンタ、何様になったつもり?紗姫様にキスをしようなんて百年早いわ。いえ、一生涯あり得っこないわ。虫酸が走るっ。」
 きっぱりそう言い放つと、まだ吸い掛けの煙草を揉み消すと、喫煙室を出て言ってしまうのだった。


 「そうか、まだ荒療治がちょっと足りなかったようだな。しかし、大分調教出来てきているようだ。もう一歩踏み込んでやるか。」
 日下の話に、横井はひとり何やら考えついたようで、ほくそ笑んでいる。しかし日下のほうは、次第に不安になり始めていた。

 再び横井の部屋へ呼び出された紗姫は、今度も目隠しを着け、自分で後ろ手に手錠を掛けるよう命じられた。言われたことに今は逆らえない。今度もスカートを捲り上げるように命じられる。裸になって晒している腰の廻りに冷たい感触のものが巻かれた。
 「あの貞操帯だけは許してっ。」
 忌まわしい思い出が蘇えってきて、つい懇願してしまう紗姫だった。
 「今度は違う趣向だ。いつも同じことを繰り返しても詰まらないからな。」
 貞操帯を嵌められたまま、下剤や利尿剤を呑まされるのはもう勘弁してほしかった。そうでなければよいがと思いながらも不安は募ってくる。
 「お前、今度の生理は何時だ。・・・男勝りのお前だって、生理ぐらいは来るんだろう。」
 「ら、来週ぐらいだと・・・。何でそんな事、貴方に言わなければならないの。」
 「ふん、まあいいさ。お前は生理の時に何使ってるんだ。」
 「そんなこと、教えられないわ。」
 「まあ、いいだろう。だが、こいつが何かぐらい知っているよな。」
 目隠しを着けさせられて見えない紗姫の頬に何かが押し当てられた。ビニールのようなものに包まれた何か細い棒状のものだった。
 (タンポンね。)
 話の流れからすぐにそれと判った。紗姫もタンポンは多い時の初めの頃はナプキンと併用するようにしている。それでも長く使い続けるのは嫌なので、少なくなってくる後半はナプキンだけにしている。
 (そんなものを一体どうしようというの・・・。)
 「今回は、これを嵌めていて貰う。鍵は日下に預けておくから、外してほしければあいつに頼み込むことだな。」
 横井が足で立たされている紗姫の足首を押すようにして開かせる。脚を広げたところで股間に何かが押し当てられるのを感じた。横井はそれを一気に突いてきた。まだ潤っていない陰唇の中は痛みが走る筈で、思わず顔を顰めたが、ぬるっとした感触でそれはするりと陰唇の中に滑り込んだ。インサータが引き抜かれると、今度はシャキーンと金属音がした。と思う間もなく、貞操帯の股帯が締め付けられ、尻の上部分で絞り上げられてカチリとロックがかかってしまった。

 目隠しが外されると、目の前の机の上に鋏の脇に、短い紐のようなものが落ちているのが見えた。明らかに挿入されたタンポンに付いていた筈のものだ。抜き取られることを防ごうとしているのだとすぐに悟った。
 「このタンポンはこれ以上吸収出来ないように、丸一日、水に浸けておいたものだ。そして今、挿入する前に、こいつをたっぷり塗りたくってやったって訳さ。分かるかい、これが何か。大和芋を擦った汁さ。これがどういうことかすぐに判るさ。」
 芋系のものは生のものを擦って皮膚に浸けると痒くなるというのは聞いたことがあった。肥後ずいきというのは、それによって性感をわざと高める為に使われる芋だとも何かで読んだ覚えがあった。
 「こんなもので、また私を苦しめるつもり。私は絶対に屈しないわ。」
 「それは、それは楽しみだな。じゃあ、手錠は外しておくから、代わりの紐で縛らせて貰うぜ。」
 抵抗されないように、再び目隠しで視界を奪うと、手錠とは別の紐で紗姫の両手首を縛り直してから、手錠の鍵を外して、部屋の外へ突き出される。後ろでバタンと扉が閉められ中から錠を掛ける音がする。紗姫は目隠しを振り解くと、後ろ手の紐を解く為に女子トイレに走りこむのだった。

 (たかが芋の汁ぐらいで)と高を括っていた紗姫だったが、その痒みは想像を絶するものだった。すぐに事務所の自分の席に座っていることすら出来なくなった。おしっこを我慢しているような格好になりそうになりながら、必死で誰にも気づかれないように事務所を出ると、ひと気のない事務本館最上階役員フロアの女子トイレに篭る。痒みを鎮めようと貞操帯の上から指で擦っても、分厚い革製の帯がガードしていて、何の救いにもならなかった。指を横から差し込むとかろうじて陰唇の外側までは指の先が届くのだが、痒いのは陰唇の内側だった。どんどん激しさを増す掻痒感は地獄の苦しみとも言えた。

 「あ、日下・・・、日下さん。お願い。助けて。もう気が狂いそうなの。」
 「・・・・。」
 「ねえ、聞いてる。鍵、持ってるんでしょ。お願い。外して欲しいの。」
 あまりに悲痛な紗姫の声に、あらかじめ横井から聞かされてはいたのだが、その効果の凄さに日下も驚いてすぐには反応出来なかったのだ。
 落ち合う場所は資材部別館一階の男子トイレ、ついこの間、目の前で紙おむつにお洩らしをさせた、そして紗姫に最初に辱めの放尿をさせたあの場所を指定した。横井から屈辱を刷り込むには何度も同じ場所を使うのがいいのだと教えられていたのだ。

 コツコツという音が廊下のほうから響いてくるので、紗姫が近づいてきたこと日下は個室の中で知った。以前なら足音を忍ばせるように歩いてきた筈だが、そんな余裕すらないのだろう。一瞬、足音が止まったのは、あたりに人影がないかを確かめているのだろう。やがてギィーッという微かな音がしてトイレの扉が開かれたことが分かった。すうっと風が入ってくる気配を感じる。
 コン、コンと小さなノックの音がして、個室の扉が開かれる。スカートの上から恥ずかしげもなく、股間を押さえて、何とか立っている紗姫の姿がそこにあった。額には脂汗が滲んでいる。
 「お願い、何でもしますから・・・。これを外してください。」
 紗姫は自分からスカートをたくし上げた。股間に食い込むように貞操帯が嵌められている。その股帯の分厚い革の上から、もどかしそうに手の甲を擦り付けて痒みを癒そうとしているのだが、痒みは一向に治らないようだった。
 「何でもするって・・・。虫酸が走るって言った、この俺にか。」
 紗姫ははっとなった。ついこの間のことが脳裏をよぎる。
 「キスでも何でもさせてあげるわ・・・。い、いえ、キスさせてください。」
 「・・・。キスだって。キスをさせろだと。・・・。百年早いんだよ。お前がキス出来るのはここだ。」
 そう言って、日下は自分の股間を指で差す。そこは、これから起こるであろうことの予感に既にもっこりと膨らみ始めている。日下はゆっくりとズボンのチャックを降ろすと、膨らみかけた陰茎を取り出して紗姫に見せる。その先端には既に先走りの汁さえ滲みでている。そのグロテスクな姿に、一瞬身を背けようとする紗姫に、そうはさせまいと紗姫の髪を乱暴に掴んで引き寄せ、自分の前に跪かせる。
 紗姫は観念して、後ろ手で個室の扉を閉めながら目を瞑って、日下のペニスを口に含んだ。饐えたような臭いが紗姫の鼻を突く。
 「咥えてしゃぶるんだ。イカセることが出来たら褒美に外してやる。ただし、一滴もこぼすんじゃないぞ。全部、飲み込むんだ。」

首押さえフェラ

 非情な日下の言葉は半分も紗姫には聞えていなかった。痒みを忘れようと必死で日下のペニスをしゃぶりまくった。唇と舌に力を篭めて激しく前後にピストン運動をする。その刺激に日下のペニスはどんどん硬くなり、天を向いてくる。三白眼になりながら、紗姫が上目遣いに日下の顔を見る。もう少しでいきそうなのを見て取ると、手を陰嚢へ伸ばした。そっと包むように掴んで下へ引っ張りながら、更に強くペニスを口の中で絞る。
 「あうううっ・・・。」
 突然、紗姫の口の中でペニスは暴発した。口中に甘酸っぱいものが溢れかける。大きくゴクリと一回呑んでから、舐め取るように太いペニスをもう一度しっかり吸い取りながら唇をペニスから離す。口の端から白濁したスペルマが一滴垂れていた。それを手で拭いながら紗姫は潤んだ目で日下に懇願する。
 「お願い・・・。これを外して。」
 日下は尻のポケットから小さな鍵を取り出す。スカートを完全にたくし上げたままの紗姫を後ろ向きに立たせ、尻の上のバックル部分の鍵穴に指すと股帯に繋がる鎖をベルトから外してやる。途端に紗姫は両手を陰唇にやって、揉みしだき始める。
 「ああ、痒い・・・。ああ、痒いわ・・・。」
 股間を掻き毟りながら、身悶えする紗姫の姿をみて、むらむらとしてきた日下は、紗姫の肩を掴んで自分のほうを向かせる。
 「あそこを洗ったらいい。」
 そう言うと、紗姫の身体を引き寄せながら、自分は便座の上にあがって、便器の後ろの棚に腰を下ろす。そうしておいて、紗姫には便器を逆さに跨ぐようにさせて、陰唇を剥き出しにさせる。紗姫の髪を掴んで、再び自分の股間に導きながら足の先で洗浄器のボタンを探る。紗姫の唇がペニスを捉えるのと、洗浄器のボタンが押されるのが同時だった。チューという音とともに、温水が紗姫の陰唇を直撃すると、その刺激に反応して、ペニスを含んだ紗姫の唇が更に強く引き絞られる。
 「うううう・・・。」
 ペニスを含んだままで声が出せないのだが、温水の刺激が陰唇の痒みを癒してゆく快感に紗姫は思わず、声にならないため息を洩らした。
 ペニスを咥えられて怒張しかけた日下だったが、思いっきり射精した直後だったので、別の欲求が湧いてくるのを感じていた。
 横井から、紗姫がやってくる前は小便を我慢していろと言われていたのだ。尿意が溜まっているほうが勃起が持続し、より硬くなるからだというのだ。そして射精した後、紗姫に口で放尿を受け止めさせろと言ったのだった。
 尿意が高まってくるのを感じると、紗姫に一旦ペニスを口から外させる。そして紗姫を目の前にして便座の上に立ち上がった。紗姫は陰唇を直撃する噴流が余程気持ちいいのか目を閉じてうっとりとしている。
 「口を開けるんだ。」
 日下が命じると、紗姫は目を瞑ったまま素直に従った。何をさせるのか判っているような素振りだった。
 勃起しかけたペニスからはなかなか思うようには放尿出来なかった。日下が何度か下腹部に力を篭めた後、突然、短い奔流が迸り出た。それは紗姫の喉の奥を直撃し、すぐに口の端から溢れ出た。それでも紗姫は顔を背けず、日下の両腿にしっかりしがみついたまま上向きの顔に口を開けて、次の奔流を待っていた。

 日下が溜まった小水を全部出しきってしまう頃には紗姫の衣服は小水だらけになってしまっていた。それでも紗姫は口を開けて日下の放尿を受け止め続けた。そんな姿を観ていて、日下は紗姫がいとおしく見えてきた。
 いきなり紗姫に抱きつくと、自分の小水で汚れた唇を奪った。紗姫も抵抗はせずに素直にそれを受け止めていた。日下はそのまま時間が止まってしまえばいいとさえ思ったのだった。

金髪

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