妄想小説
地に堕ちた女帝王
十二
「ねえ、本当にこんなことしていいの、マミー。」
「お願い。どうしても一度、試してみたかったの。お願いだから言った通りにしてみて。」
いつもの紗姫への股間嘗めの奉仕をしてたっぷりと紗姫を堪能させた後、真美は紗姫に甘えるような声で頼んだのだった。
紗姫の目の前には真美が背中に回した両手首を交差させている。その手首を真美が持って来た綿ロープで縛ってくれというのだ。真美はどうしてもマゾプレイを紗姫としてみたいと持ちかけてきたのだった。
女を縛って自由を奪うのは、自分が女総長として族を率いていた時に、タイマンを張っていた相手のグループの女総長の罠に嵌り、自らが嘗て族の男達に自由を奪われて犯されたという苦い経験があった。その時以来、紗姫は男を欲するということが無くなったのだ。それだけに、縛られてして欲しいと言ってくる真美の気持ちが理解出来なかった。しかし真美に奉仕させるばかりで真美の方は十分いい気持ちにさせている訳ではないと紗姫自身は後ろめたく思っていただけに、真美の頼みは断れなかった。紗姫は自分が縛られていた時の様子を思い出しながら、真美の両手首に縄を巻きつかせ、その先を胸元に回した。
しっかり上半身を括り上げてしまうと、紗姫は真美にせがまれるまま、真美のスカートを捲り上げ、その下のショーツを引き降ろした。その股間にあるべき草叢が自分自身と同じように綺麗に剃り上げられてつるつるになっているのを見て、思わず紗姫は「あっ」と声を挙げてしまった。真美にはもう随分前から自分があの部分をいつも処理してつるつるにしているのを見せている。それは真美に股間を嘗めさせる為でもあった。しかし、真美は夫へ見られることもあってか、これまで草叢を剃り上げるなどということはなかった。紗姫とのプレイでも、紗姫のほうが真美の股間を嘗め上げるということがなかったせいもある。
「それじゃ、そのクリームを股間に塗って。指でそおっと撫で上げるようにして。」
真美は催陰クリームなのだと称して、妖しげな白い小壜にはいったクリームも持ってきていた。
「こう、これでいいの。もっと?」
「ああ、そう。もっと、奥へも指を入れて。・・・クリトリスの周りにも。ああ、いいわ。いいっ・・・。」
妖しげなクリームを股間に塗りたくられ、次第に真美は感じてきているのか、腰を左右に振りながら両脚をすりあわせる。
「ああ・・・、ああっ・・・。か、感じるぅ・・・。まだ、まだよっ。十分に焦らして。5分は焦らして頂戴。そしたら、その黒い物で突いて欲しいの。」
黒い物というのは、真美が用意して来た道具の中に入っていたバイブの事だった。男性のペニスを模ったものだ。嘗て男に同じもので辱められたことのある紗姫には忌まわしいものだったが、女性同士が秘密の営みを行うには必須のものでもあったのだ。
「ああ・・・、ああ・・・、ああ、もう駄目。ああ・・・、もう我慢出来ないっ。入れて。その太いものを挿入してえ・・・。」
股間の疼きに堪え切れなくなった真美が身悶えしながらもんどり打って縛られた身体をばたつかせているのを見ながら、紗姫は手にしたバイブのスイッチを入れると、真美に向かって身構えた。
「そんなによかったの?」
紗姫は古マットの上で、傍らの真美を片手で抱きかかえるようにしながら訊ねた。プレイ中の真美の喘ぐ声がこれまで聞いたことのないような悶え方だったからだ。
「ああ、もう気が遠くなりそうだった。サッキーも絶対一度試してみるほうがいいわ。病み付きになるから。アタシ、話には聞いていたけど、これほど凄いものだとは思わなかったわ。SMショップで売ってた解説本に書いてあった通りだわ。あんなとこ、初めて行った時は、こんなの買う人が居るのかしらって思ってたけど、物凄く売れているらしいの。女のお客も結構多いのよ。」
興奮が冷めやらない様子で真美が熱く語るのを、不思議なものを見るかのようにみつめていた紗姫だったが、紗姫自身の心にも新しいものを試してみたい気持ちが芽生えてきているのを否定出来ないでいた。確かにこのところの真美とのプレイにもマンネリを感じて厭き始めてきているのは否めなかったのだ。
紗姫は自分自身が見知らぬ男に自由を奪われ弄ばれた時の事を思い出していた。あの時は男の目の前で排泄行為を強いられ、屈辱感だけしか感じられなかった。バイブも挿入されてしまったが、浣腸を受けた後の排泄を我慢出来なくさせる為の刺激に過ぎなかった。しかし、目の前で真美が見せた悶えようは紗姫には想像を絶するものだったのだ。
「いい、始めるわよ。サッキー。」
目の前で真美が謎めいた微笑みを浮かべ、手錠を紗姫のほうへ翳してみせる。縄目が肌に残ってしまう縄よりも、手錠のほうが痕が残りにくいと言ったのは、真美だった。それも解説本に書いてあったのだと説明された。マットの上に寝かせた紗姫の両手を頭の上で鉄製の柱を潜らすようにして小手縛りに手錠で繋いだ真美は足首にも革製の足枷を嵌める。それは1mほどの鉄の棒の両端に鎖で革のベルトが繋がれているもので、足枷を両足首に嵌めてしまうと、自分では脚を閉じられなくなってしまう拘束具なのだった。それも真美がSMショップで仕入れてきたのだという。
「ああ、何だか怖いわね。」
普段から気丈な紗姫も経験がないことへの不安を隠せない。ボディコンに詰めたミニの制服スカートはまだ穿いているが、その下のショーツは既に抜き取ってある。陰唇のまわりは今日も綺麗に処理されたつるつるの状態なのだった。
「いい、じゃこれを塗らせてもらうわよ。」
そう言って、真美はクリームの壜を取り上げ、中身を指に掬い取る。しかし、真美自身もそれが数日前、自分が紗姫から塗られたものとは違うということを知らされていない。真美が使ったのは単なる性感を高めるという催淫クリームとして売られているものだったが、その時真美が手にしていたのは、遥かに刺激の強い掻痒クリームなのだった。
「うっ。」
真美の指がスカートの中の開かれた脚の付け根の割れ目に忍び込んできた冷たいクリームの刺激に思わず紗姫は声を挙げてしまった。
いつもの自分から真美の頭を引き寄せて、陰唇を舌で嘗めさせるのと違って、両手の自由を奪われ、自分からは何も出来ない状態で秘部を襲われるのとでは、確かにわくわくするような刺激があるのを紗姫も認めざるを得ない。
一瞬、ひやっとしたクリームは、すぐにカッと熱い火照りに変わる。それと供に、じわり、じわりと掻痒感が忍び寄ってくるようだった。思わず、脚を摺り合わせていないと堪えられないような思いにかられてくる。しかし、両脚を固定する足枷が紗姫にその自由を与えないのだ。紗姫は自分の身体の奥深くに擡げ始めようとしている感覚に、自分ではどうにも出来ない焦燥感から、激しい渇望が生まれてきているのを敏感に感じ取っていた。
ガタンという物音がすぐ傍で聞こえたのはその時だった。一瞬、目と目を見合わせる紗姫と真美だった。二人がこの場所で秘密の逢瀬をするようになってから初めてのことだった。この場所を紹介したのは工場巡回で敷地の隅から隅までを知り尽くしている紗姫のほうからだった。工場敷地の奥に殆ど使われていない古い物置のようなプレハブがあり、工場敷地の外れの一番奥という場所柄、訪れる者は殆ど居ないこともようく知ってのことだったのだ。
「しっ。」
真美は指を口に当てて目で紗姫に合図する。露わになっていた紗姫のスカートの裾をそっと下げると、腰を低く屈めながら、音のしたほうへそっとにじり寄る。紗姫も音を立てないようにじっとして身構える。手錠を先に外して貰いたかったが、変に音を立ててしまいかねなかった。
真美が音のした方の様子を窺がいに向かって姿が見えなくなってから暫く沈黙が流れていった。紗姫のほうからは身動きが出来ないので、ただじっと待っている他はなかった。音が何もしないのは、近づいてきた誰かが何も気づかずに通り過ぎていくのを真美がそっと見届けようとしているのだろうと察していた。
真美がなかなか戻って来ないのは、やって来た者がなかなか立ち去らないからなのだろうと紗姫も思っていた。身体が自由に動かせない紗姫のほうはただじっとして音を立てないようにしているしかなかった。しかし、クリームを塗られた股間は異常な掻痒感をどんどん募らせていた。そしてそれは紗姫にじっとしていることを最早不可能にしてしまいそうなのだった。
(ああ、痒い・・・。痒いわ、誰か、何とかしてっ。)
紗姫はこめかみに油汗を滴らせながら必死で堪えていた。
(ああ、マミー。まだなの・・・。)
その時、突然バタンという大きな音がして、一瞬、真美の悲鳴のような声が聞こえた気がした。その後、バタン、バタンと揉み合うような音と、「ううっ、ううっ。」というくぐもった喘ぎ声だけが響いてきた。プレハブの出入り口の近くで何やら揉み合っているらしかった。紗姫はすぐさま真美を助けに行こうとして、自分では何も出来ないことを思い知らされた。身動きすれば何も抵抗出来ない状態に居ることを誰かに悟られてしまうだけなのだった。
最初聞こえたと思った真美の悲鳴が、すぐにしなくなってくぐもった呻き声しか聞こえなくなったのは、真美の口が塞がれたせいらしかった。二人掛りぐらいで真美が強姦されている姿が紗姫の脳裏を掠める。
やがて長く続いていた揉み合うような音がしいんとしなくなった。身体が自由にならない紗姫には何が起こったのか確かめる術もない。その感にも股間の掻痒感がどんどん高まってきていて、紗姫自身も身悶えせざるを得なくなってきていた。
音が全くしなくなってから随分時間が経ったのは、真美が何者かに連れ去られたに違いないことを紗姫に想像させた。それは同時に、紗姫自身も身動き出来ないまま放置されたままになることを示していた。しかも、股間のクリームによる痒みは紗姫の気を狂わせんばかりにさせようとしていた。
(た、助けてっ・・・。誰か、この痒みを何とかして・・・。)
堪え切れずに、紗姫は脚に嵌められた鉄棒の枷をガチャガチャ言わせながら身悶えしてのた打ち回っていた。
その紗姫の視野にちらっと人影が過ぎったのを紗姫は見逃さなかった。プレハブの窓は殆どが古新聞紙で内張りされていたが、数箇所は内張りが途切れていたり、剥がれている部分があって、少しだけ外の様子が窺がえた。逆には、外からも覗かれる怖れがあったのだが、普段は人通りが殆ど無い筈の場所だった。
そのすぐ後に、紗姫は見覚えのある横顔を内張りの隙間から確認した。すぐには誰だか判らなかったが、漸くいつも使っている喫煙所で時々一緒になる男の顔だと思い出したのだった。もさっとして冴えない風貌の日下憲弘の顔は見間違うことはなかった。
紗姫はいつぞや見知らぬ男に命じられて、喫煙室でミニスカートの奥に下着を覗かせる格好を日下に見られたのを思い出していた。日下は気づかぬ振りをしながらも、しっかりと何度も覗き込んでいた。紗姫には恥ずかしいというよりも口惜しい思いしかしなかった。
こんな窮状を日下みたいな男には見られたくなかった。しかし同時に、この窮状から救われるには今しか機会がないのだとも気づいていた。どうせ一度はパンツを見られてしまった男だという思いもちらっと脳裏を走った。
「誰か・・・、誰か助けてえ。」
意を決して紗姫は叫んだ。
ガラッとプレハブの扉が開く音がした。
「誰か居るんですかぁ。」
間の抜けた日下の声がする。
「こ、こっちよ。すぐ来て。」
股間の痒みに堪えながら、必死で助けを呼ぶ紗姫だった。
日下のぬぼっとした顔が柱の陰から現れた。紗姫の格好に目を丸くして唖然としているのが紗姫にも判った。日下の視線が自分の腰のあたりに注がれているのが痛いように判る。真美がずり下げてくれた裾も、痒みに身悶えしている間にかなり捲れあがっているに違いなかった。それから日下の視線が横に動く。そこには脱ぎ捨てた自分のショーツや使われる筈だったバイブが転がっているに違いなかった。
「いいから、黙ってこの手錠を外して。早くっ。」
弱みを見せないように威圧的に日下に命令する紗姫だった。が、日下の動きは何時もの通りで鈍かった。
「こっちをそんなに見ないでっ。早く鍵を捜して。その辺に落ちてると思うから。」
しかし、日下が拾い上げたのは、バイブのほうだった。
「これぐらいしかこの辺りには落ちてないんですが。あとはこれ。」
更に日下が取り上げたのは、間違いなく紗姫が脱ぎ捨てたショーツだった。
「嫌。それは見ないでっ。か、鍵を早くっ・・・。」
紗姫は痒みに堪え切れず、顔を顰めながら身悶えしながら脚をばたばたさせる。その拍子にスカートの奥が日下に見えてしまったようだった。日下は紗姫の両手、両脚が自由にならないのをいいことに、あからさまにスカートの奥を覗き込もうとしてきた。脚を閉じることが出来ないので、股間を隠すことが出来なかった。ショーツが落ちていることで紗姫がノーパンで居ることは薄々は判ってしまっている筈だった。スカートの奥をしっかり確認したらしい日下は寝転んでいる紗姫に顔を近づけてきた。
「何?何するつもりっ・・・。」
驚いて逃れようとする紗姫だったが、所詮逃れようもなかった。日下は万歳の格好で頭の上に挙げている紗姫の手錠を調べようとしているのだった。
「ああ、これは鍵が無いと無理ですね。」
呑気そうに言う日下が紗姫には憎らしかった。が、怒らせる訳にはゆかないのだとも判っていた。
「これ、使おうとしてたんですかぁ。」
突然、日下は手にしていたバイブを翳してみせ、スイッチを入れてみるのだった。ブウンという鈍い音と共に、バイブの先端が振動しながらくねり始めた。
紗姫が思わず生唾を飲み込んだ。股間の掻痒感をそれで癒されることがちらっと紗姫の脳裏を掠めたのだった。それを表情に読み取ったかのように、日下がその切っ先を紗姫の身体に沿って下げてくる。臍のすぐ下あたりにその物がスカートの上から当てられるだけで、紗姫には電撃が走るような甘美な衝撃が走った。
「や・・・・。」
止めてという言葉を思わず呑み込んだ紗姫だった。それだけ紗姫の股間は疼いていた。
「あっ、ううっ。」
(いい)という言葉を必死で堪えた紗姫だったが、それ以上我慢出来なかった。
「もっと・・・、もっと下よ。もっと下を突いて。」
日下が手にするバイブの先が、紗姫の陰唇を探り当てる。スカートの上からなのがもどかしい。その思いを察したかのように日下のもう片方の手が紗姫のスカートの裾を手繰り始めた。それを紗姫は拒むことが出来なかった。生身の肌に振動するバイブが触れるのを感じると、思わず紗姫は深い溜息をついてしまう。
「いいんですね。これが・・・。」
耳元で囁く日下の声に、溜まらず目を閉じて頷いてしまう紗姫だった。
「お願い・・・。それを挿して。」
紗姫は我慢出来ず、自分から膝を立てて股間を大きく広げた。
「あううう・・・。ああ、いいっ・・・。」
遂に紗姫は感情に抗し切れなくなって声を挙げてしまった。
紗姫がよがり声を挙げたことが日下の動きを一層大胆にさせたかのようだった。扱いなれているかのように日下の手は巧みにバイブを操って、紗姫の陰唇の襞から襞へと刺激を与える。紗姫は堪らない痒みが甘美なバイブの振動で癒されるだけでなく、この上ない愉悦へと変わっていくのを感じとっていた。
(これが真美が言っていたものなのだろうか。)
「ああ、そこ、そこがいいの・・・。」
一旦引き抜かれたバイブの先がクリトリスを剥き上げるように下から擦り上げられると堪らなくなって紗姫は絶叫する。あまりの刺激に夢中になっていて、紗姫には周りの様子が最早見えていなかった。日下は紗姫をバイブで感じいらせながらも、ズボンから屹立したものを既に取り出していた。
いきなり半身に起き上がるとバイブを横に置いて鉄棒の枷のまま紗姫の脚を上へ持ち上げ、股間を自分の前に引き寄せると、いきなりずぶりとペニスを突きたてた。
「ああ、駄目・・・。いい・・・。」
それは紗姫にとって事実上の降参を意味した。男に挿し抜かれて気持ちよくなるなど、自分にはあってはならないことと言い聞かせてきた自分の敗北だったのだ。
掻痒クリームとバイブの振動の刺激で昇り詰めさせられていた紗姫の全神経は、男の挿入の誘惑に抗し切れなくなってしまっていたのだった。
「ああ、いい・・・。もっとぉ・・、ああ、もっとしてぇ。」
既に声を挙げるのを憚ることをも、忘れ去ってしまった紗姫は日下の激しい腰の動きにあられもない叫び声を上げて応じてしまっていたのだった。
日下が(ああっ)と声を上げて、射精してしまいそうになるのだけは何とか我に返って気づいた紗姫だった。
「駄目っ、中に出しちゃあ・・・。」
必死で身を捩ると、日下は我に返って屹立したペニスを引き抜く。と同時にスペルマが宙を飛んで、その一部が紗姫の頬を濡らしたのだった。
はあはあ言う息が収まるまで暫く二人は放心したように寝転がっていた。先に立ち上がったのは日下のほうだった。ズボンをたくし上げ、身繕いを調えるとまだ放心状態で打ちひしがれて横を向いて寝転んでいる紗姫の痴態をちらっと眺めると、出口のほうへ向かう。
「取り合えず、何か手錠を外すものを捜してきます。」
日下の声に、紗姫は返事をする元気さえなかった。
一旦、出口のほうへ向かった日下だったが、すぐに戻ってきた。
「手錠の鍵って、これじゃないですか。それと、まだ他に誰か居たんでしょうか。こんなものが落ちていて。」
戻ってきた日下の声に顔を振り向かせた紗姫の目に映ったものは、真美のものらしい引き千切られた無残なショーツだった。
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