新任教師 調教の罠
八
午前中の授業を終えた真理子は少し気持ちを落ち着かせようと職員室に戻る前に女子職員トイレに寄っていくことにした。個室に入って深呼吸する。自分を落ち着かせなければと思うのだが、次々に浮かんでくる嫌な予想に居てもたってもいられない自分があった。
ふと午前中にトイレに行ってなかったことを思い出し、用を足そうとスカートのホックをはずして膝まで下げた時に初めて自分がずっとノーパンで居たことを思い出した。
(そうだ。スカートの下は何も穿かずに今まで授業をしていたのだった)
そんなことも思いつかないほど、ビデオの事で動転していたのだった。視聴覚室で下着を取らざるを得なかった時、ストッキングも一緒に脱いでパンティ無しでそれを着けるのもためらわれてそのまま丸めてポケットに入れていたのだった。
真理子はあらためて無毛にされてしまった自分の股間を見下ろしてみる。こんなところは絶対に誰にも見られてはならないと思うのだった。
職員室に戻った真理子は自分の席の前に友理奈が立っていることに気づいた。走り寄りたいのをぐっと堪えてゆっくりと近づいてゆく。
「友理奈さん。ちゃんと渡してくれた?」
「あ、先生。大丈夫です。」
「何かされなかった、彼に?」
「大丈夫です。あの人には変に逆らうようなことさえしなければ何かされることはないと思います。それより、先生の方こそ大丈夫ですか? この前聖子さんを庇うようなこと、してたから。」
「大丈夫よ、わたしなら。大人ですから。それより、何か彼から言付からなかった?」
「あ、伝言の事でしょうか。それだったら『ジャンヌダルクの処刑』の事ですか。」
「『ジャンヌダルクの処刑』って、彼がそう言ったのね。」
「ええ、そう言えば判るからって。何ですか、その呪文みたいのは? ジャンヌダルクってフランス革命前の頃の英雄ですよね。確か市民の為に立上ったのに、最後は捕まって処刑されちゃうんでしょ。」
「ええ・・・。よ、よく知ってるわね。あ、前にね・・・。彼と歴史の話をしていて、何だったかそんな話になったのよ。その時、彼がよく思い出せないでいて、思い出したら教えるって言ってたの。」
「ふうん、そうなんですか。ま、いいか。それじゃあ、私はこれで。」
「はい、どうも御苦労さん。」
真理子は友理奈が職員室を出るのをちゃんと見届けてからそっと視聴覚室に急ぐのだった。まだ昼食も採っていなかったが、真理子にとって何よりも一番にしなければならないのは視聴覚室からビデオテープを取り返すことだった。
(『ジャンヌダルクの処刑』か。考えたものね。まるで私をジャンヌダルクのように処刑するぞって脅しのつもりなのね・・・。)
視聴覚室に戻った真理子は西洋史のコーナーのフランス革命あたりから遡って順に見て行って、『ジャンヌダルクの処刑』と記された題名の歴史教材のビデオを抜き取った。ビデオ教材を持出す時は、ビデオ題名と貸し出し者を記名する決まりになっていたのだが、証拠として残るといけないと思い、忘れた振りをしてそのまま記名せずに持ち帰ったのだった。
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