新任教師 調教の罠
十五
その翌日も真理子は更に屈辱の試練に堪えねばならなかった。イメクラ嬢を演じさせられた時のショーツを洗わないまま持ってくるように命じられていたのだ。しかもそれを再び優等生の芳賀友理奈を通じて渡さねばならないのだ。
「あの、芳賀さん。これ、また西尾君に届けてくれないかしら。」
「ああ、わかりました。聞いています。」
授業の開始直前に友理奈のもとへ近寄っていった真理子が差し出す紙袋を、友理奈は意外にもすんなり受け取る。あらかじめ西尾が言い含めておいたのに違いなかった。そうなると、友理奈が次に取る行動が見えてきた。真理子が予感したとおり、友理奈は真理子から受け取った紙袋をしまうこともせず、机の端に置いてそのまま授業を受けようというのだった。その事について何か真理子が言い出せば、言い合いになって袋の中身は何だというような話になりはしないかと怖れて何も言い出せないのだった。
友理奈の机の上の紙袋のことが気になって、とかく上の空になりがちの授業もチャイムの音と共にやっと終りを告げる。真理子は教壇の上に暫く茫然と立って、友理奈が紙袋を持って体育館のほうへ向かって歩み去るのをただひたすら見守るのだった。
「真理子先生。」
職員室の自分の席に戻っていた所へ後ろから呼ぶ声にはっとして顔をあげた真理子だった。
「芳賀さんじゃないの。あれ、届けてくれた。」
「ええ、今持っていったばかりです。」
「そう、・・・。」
「先生。あれ、いったい何なんですか?」
「な、何って・・・。」
真理子は答えを準備していなかっただけに、何と答えていいか戸惑う。
「なま物か何かですか? 何か授業中、ずっと匂うような気がしていたので。」
真理子は背中から冷や水を浴びせられたような気がした。
「えっ、ち、違うわよ。気のせいじゃない?」
真理子にはなま物ではないが、何なのか答えることが出来ない。
「そうですか。」
友理奈はそれだけ言うと、ちょっと首を傾げ舌をぺろっと出してみせた。
(まさか、中身を見ていて、私にカマをかけたのでは・・・。)
そんなこと、ある筈がないと自分に言い聞かせる真理子だったが、一抹の不安はぬぐいきれなかった。
「で、どうだった。イメクラ嬢になった気分は?」
その日の放課後、再び視聴覚室に呼び出された真理子は椅子に座った西尾の前に立たされた訊かれたのだった。
真理子は客になった男と別れる際に言われた言葉を思い返していた。
「あんた、イメクラは初めてなのかい?」
「え、どうしてですか。」
「だって、さっきどうして私をこんな風に辱めるのって訊いたろ。」
「え、ええ・・・。」
「イメクラってのは、セックスをする場所じゃないんだ。あくまでシチュエーションを妄想して愉しむ場なんだ。罪を犯した先生を詰って、辱めるってシーンを演じてそれを楽しんでいるのさ。どうしてこんな風に辱めるのかって訊かれてもね。」
「そ、そうなのですね。」
「しかし、それにしてもあんたはイメクラ嬢の天性があるよね。言葉とあれくらいのことをされたぐらいで、下着をあれだけぐっしょり濡らすことが出来るんだものね。なかなか演技であそこまで出来るもんじゃないよ。もしかして真正マゾなんじゃないの?」
「し、真正? 真正マゾって・・・。」
「根っからのスケベだってことだよ。」
(根っからのスケベ・・・。真正マゾ・・・。)
「その様子じゃ、相当その気になってプレイしたみたいだな。あいつ、次も絶対指名するって言ってたぜ。」
「あ、アイツって・・・。あんな男と知り合いなの、生徒のあなたが。」
「ま、いろいろ付合いは広くてね。色んな知り合いがいるのさ。あの業界には。」
「あなた、ああいう場所に出入りしているっていうの?」
「俺が睨んだ通りだったという訳さ。ああいう男は真理子先生みたいのが好みなんだって、すぐに分かったから試してみたのさ。あいつ、子供の頃、女の先生にこっぴどく叱られて、それ以来コンプレックスになっているみたいでね。だから、一生分の憂さを晴らさせてやったんだよ。」
「な、何てことを・・・。で、私が芳賀さんに預けたものはどうしたの?」
「あ、あれかい。あいつに売りつけてやろうと思ってね。あれは高く売れそうだからな。」
「や、やめて。そんなこと・・・。」
「ふふふ。友理奈も怪訝な顔してたからな。」
「ま、まさか。芳賀さんに見せたんじゃないでしょうね。」
「さあ、どうかな・・・。ふふふ。まあ、また近々声掛けてやるから、次を楽しみにしておきな。」
「い、いやよ。二度とあんな事・・・。」
「先生には、断ることなんて出来ないんだよ。そうだよな。」
「くっ、・・・。」
言葉を返せないことに口惜しさを噛みしめる真理子なのだった。
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