新任教師 調教の罠
十三
「ふーん。すると岩清水とは男と女の関係はないままに終わったと言うんだな。」
「え? そ、そうです。」
「お前は随分嘘が下手な女なんだな、真理子先生。」
「な、何が嘘だって言うんですか。」
「だって二日目には縛られて岩清水に筆おろししてやったんだろ。」
「し、縛られて・・・? 何故そんな事、知ってるの?」
「ちゃんとビデオに撮ってあるんだよ。隠しカメラをセットしておいたからな。大事な証拠品さ。何せ、先生が優等生を誘惑してフェラチオはするわ、二日目には股開いて童貞を奪っちゃうんだからな。次からは妊娠が怖いから口でするんだって?」
「い、言わないでっ・・・。まさか、そのビデオ。どうするつもり?」
「先生がちゃんと言う通りにしていれば、校長や教育委員会に出したりはしないよ。」
「わ、わたしを脅しているのね。そんなもので・・・。」
「見られても平気だっていうのかい。先生はそうかもしれないけど、あの岩清水はどうかな。アイツの人生ももう終りだな。」
「何て酷いこと・・・。駄目よ、絶対。私はどうなってもいいから、彼の事だけは内緒にしてっ。」
「お前の心掛け次第だけどな。」
「まだ私に何かさせるつもり?」
「さすがに察しがいいな。お前にはこれからひと働きして貰うつもりなんだ。」
「ひと働きって・・・?」
「なあに、簡単なことさ。先生を演じて貰うんだよ。何せ本当の先生なんだからな。」
「演じるって・・・? どういう意味?」
「ふふふ。すぐにわかるさ。」
(まさか体育用具室に隠しカメラが仕掛けてあったなんて。迂闊だったわ。)
真理子は西尾ならそれくらいの事をやりかねないと何故気づかなかったか、悔やんでみたが後の祭りだった。自分の痴態だけならまだしも、岩清水が自分を犯すところなどが流出したら、それこそ岩清水の人生が終わりかねない。それだけは何としてでも阻止しなければならない、そう思う真理子なのだったが、その為には西尾の言うことは何でも聞かねばならないのだった。
その西尾が指示したのはとある店へ出勤しろというのだった。その場所は何度か生徒指導の為に他の同僚の先生と見廻りをしたことのある、いわゆるいかがわしい店ばかりが並ぶエリアだった。真理子が直感したのは、風俗の店に売られるということだった。その手の店の中ではどんな事が行われているのか、経験のない真理子には想像も出来ないのだった。
(ここだわ。クラブ・パラダイス・・・。)
裏通りにひっそりと置かれている雪洞のようなライト付看板に書かれた店の名の前には「イメクラ」の文字があった。
(イメクラって・・・)
真理子は西尾が言っていた謎の言葉、(先生を演じる)と言っていた意味が分かったような気がした。
真理子は変装の為にしてきた大き目のサングラスをずらして辺りに見知った者が居ないかどうかを再度確認してから古そうな木の扉を引き開ける。
「あの・・・、西尾という者から紹介されてきたものなんですが。」
モップで床掃除をしていた黒っぽい服を着た男が顔を上げる。
「あんた、真理子って子かい?」
「そ、そうです。よろしくお願いします。」
真理子はサングラスと帽子を取ると、上に羽織ってきたトレンチコートを脱ぐ。真理子が着てくるように命じられていたのは、教員採用試験の時にあつらえた所謂リクルートスーツだ。下は、あの頃の流行だった丈が短めのタイトミニだ。先に教員になっていた先輩に、面接の際はスカートは短いほど受けがいいと言われて、その薦めに従ったのだった。面接の時にはかなり年配の男性面接官からも膝の辺りを好奇の目でじろじろみられたのを思い出していた。
その真理子の様子を爪先から頭のてっぺんまで男は品定めをするかのように見回していた。
「なかなか上品そうな雰囲気でいいじゃないか。さ、奥に入んな。客との応対の仕方を教えといてやるから。」
真理子は牢獄にでも連れ去られるような気持ちになりながら、男が案内する店の奥へと入っていったのだった。
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