派遣通訳女子 屈辱の試練
四
次の日、美姫子は散々迷って自分の持っているスカートの中からミニ丈のものを一枚選んでぴったり目のブラウスに合わせていくことにした。昨日一日履かされていた制服を詰めたものほど短くはないにしろ、美姫子の持っている中では結構短めのものだった。この日も少し早めに事務所に出社した美姫子は借りていた制服のスカートを鬼木のもとへ返しに行く。
「いや、それは返さなくていいよ。もしもの時の為に君のロッカーにでもいれておけ。」
(もしもの時・・・? どういう意味だろうか。)
前日、きつめのスラックスを破かれてしまった。そんな事態がまた起こるとでもいうのではないかと美姫子は不安になる。
(あれは絶対自分の失態ではない。あんな格好でしゃがまされたら絶対股部分が裂けてしまうと分かっててやらせたのだ。)
そうは思っていても口に出して言える立場ではなかった。言われたとおりに自分のロッカーの奥にそっとしまっておくしかなかった。
その日、沢海はやはりズボン姿で現れた。鬼木部長からは何も言われていない風なので、美姫子はちょっと腹立たしい気がしてきた。
「部長。あの、沢海さんのはいいんですか。」
「うん? 何の事だ。」
「スカートの事ですが・・・。」
「あ、何だ。あれはいいんだ。あんなのはスカート履いたって全然女っぽくならないからな。」
「えっ?」
そう言われてみて、確かに沢海は男っぽい感じなのは背の高さのせいばかりではないと美姫子自身も思う。
「何だ? 不服か? お前のほうが女らしいって褒めてやったつもりだが、俺は。」
「いえ、そんな事は決して・・・。失礼します。」
そう言って自分の席に戻ってきた美姫子だったが、思いは複雑だった。
(自分は褒められたのだろうか・・・。)
確かに美姫子から見て、沢海は女性的な魅力は乏しいほうだとは思った。しかしだからと言って、自分にはスカート着用が強要されて沢海にはどうでもいいというのは納得しかねるものがあるにはあった。
もう一人の石上のほうは、その日も野暮ったい長めのスカートだった。男っぽくはないが、女性らしい色気もあまり感じられない。ちょっと陰気な雰囲気が漂っている。
美姫子は自分がもし石上のような長めのスカートを履いてきたら、きっとまた部長に叱責されそうな予感がしていた。ミニのスカートは自分も好きだし、自分の魅力をより出せる服装だと思うので、それでいいのだと思うことにした。
その日は定時後に派遣女性社員三人の歓迎会が開かれるとの事だった。しかし、業務終了間際に美姫子は新たな仕事を頼まれたのだ。一通のレターを中国語に翻訳する仕事で、急ぎなので今日中に作って欲しいと言われたのだ。
「おい、戸川。お前、ちょっと残ってこの子の仕事が終わったら一緒に宴会の場所まで連れてきてやれ。初めての場所で迷うといけないからな。」
「はい。わかりました。」
「済みません、戸川さん。急いで終わらせますので。」
美姫子は申し訳なさそうに戸川のほうに頭を下げる。しかし美姫子にはこれが鬼木の仕組んだ作戦のひとつであることなど知る由もなかった。
「部長、本当にこんな事して大丈夫ですかねえ。」
「何、びびってんだよ。相手は派遣だぞ。何かあったら何時でも首が切れるんだ。やったもん勝ちよぉ。」
酔いが回ってきて、大胆になってきたところではあったが、いざ実行となると不安になってきた大熊ではあった。
「おぅ、早く美姫子が戻ってくる前に薬を仕込んどけよ。もうそろそろトイレから戻って来るぞ。」
いつも言い出すのは部長の鬼木なのだが、自分では決して手を汚さない。実行犯は部下にやらせて、その事で口封じをする。それが、いつもの鬼木のやり口なのだった。
大熊はおそるおそる鬼木に渡された薬包を開け、中からさらさらの粉薬を美姫子用に注がれた赤ワインのグラスに流し込むと、しっかり液を回すようにして薬を溶かし込む。
「ごめんなさい。お待たせしました。何か、おトイレがお化粧を直す人で混んでいて、なかなか空かなかったんです。」
暫くして戻ってきた美姫子を鬼木と大熊が間を空けて、間に座らせる。
「さあ、美姫子ちゃん。ワイン、頼んでおいてあげたから乾杯しようよ。あ、俺はこの日本酒にするからさ。大熊、お前はその焼酎のままでいいんだよな。じゃ、かんぱ~いっ。」
「宜しく、お願いしま~すぅ。かんぱ~い。」
「ちぃ~っす。」
大熊は上目遣いに美姫子の様子を窺いみながら、グラスを合わせる。
「いける口なんだろっ。ぐぐっといっちゃいなよ。ボトルで採ってるんだからさ。次、注いであげるからさあ。」
さっき、いける口と言ってしまった手前もあって、自分専用にボトルで頼んで貰ったワインなので、最初の一杯ぐらいは一気に空けない訳にはゆかなくなってしまった。
「ちょっと渋いんじゃないの、その赤ワイン?」
「いえ、そんな事は・・・。美味しいですぅ。」
本当は苦味を感じた美姫子だったが、そうストレートに言う訳にもいかない。まさかそれがさきほど仕込まれた睡眠薬のせいだなどとは思いもしない美姫子だった。
睡眠薬は一般的に酒類と一緒に服用してはならないとされている。効き目が増すからだ。美姫子がワインの一杯目を飲み干してから目が虚ろになってくるまでにはさほど時間は掛からなかった。
「でも・・・、他の・・・人達・・・。何で・・・、皆・・・揃いも・・・揃って・・・都合が・・・悪いの・・・かしらね・・・。」
「いいんだよ。僕等は、美姫子ちゃんが来てくれただけで、嬉しいんだから。最初から美姫子ちゃんだけの為に計画した歓迎会なんだと思えば。」
「ええっ・・・。そ、そんなあ・・・。わ・・・、悪いわあ・・・他の・・・人にぃ。」
しかし、知らないのは美姫子だけで、後の二人の新人派遣は、都合で来れないと言うように、大熊たちから言い含められていたのだ。歓迎会と言って誘われたものが、周到に企てられた罠であるなどとは思いもしないのだった。
「結構、酔いが回っているみたいだけど、大丈夫かい?」
そう言って、鬼木は美姫子の肩に手を回す。ちょっと引き寄せるだけで意識が朦朧とし始めている美姫子は、そのまま鬼木のほうにしなだれかかってきた。倒れこんでくる美姫子が手にしていたワインのグラスが倒れそうになるのをさっと鬼木が手を添えて支えようとするのだが、そのグラスからワインが零れ、美姫子のスカートの股間部分にしたたかに掛かってしまう。
「ああ、ああ。溢しちゃったよ。ほら、グラス貸してっ。」
鬼木は美姫子の手からまだ少し残っているワインのグラスを取り上げて目の前のテーブルの上に置く。美姫子のほうは粗相をしてしまったことにも気付かない風で、既に目を閉じてしまっている。
「大丈夫かい。ああ、大分濡れちゃってる・・・。」
鬼木は美姫子の肩を支えながらゆっくり後ろに倒して寝かせると、ワインを溢して濡れてしまったスカートの股間部分を手の平で包み込むようにして濡れ具合を確かめている。しかし、それは濡れ具合を確かめているのではなく、股間を触れられて反応するかどうかで、美姫子が既に正体を失っているかどうかを確かめているのだった。ワインを溢したのも、実は鬼木がわざとやったことで、狙いを定めてグラスを持つ美姫子の手を傾けさせたのだった。
股間に手を当てられても、美姫子がぴくりともしないことを確認した鬼木は反対側の脇で見ないように顔を背けていた一番若手の戸川哲郎に声を掛ける。
「おい、戸川っ。ここへきて、濡らしちゃった貴久ちゃんのスカートを脱がしてやれよ。早くしないと染みになっちまうぜ。」
いきなり指名された戸川は、びくっとして目を白黒させる。
「ぬ、脱がしちゃうんですか。お、俺が・・・っすか?」
「おい、つべこべ言ってないで早くやってやれよ。染み付けたままじゃ、この子、帰れなくなっちゃうじゃねえかよ。」
「あ、は、はいっ・・・。」
鬼木に命じられて、立ち上がった戸川は、鬼木の後ろを回って美姫子の傍にやってくると、しゃがみこんで美姫子の腰のベルトに手を当てる。バックルを外して緩めると、脇のホックを外し、脱がし易いようにジッパーを下げる。
皆も見ない振りをしながらも、しっかりと様子を横目で見守っている。
戸川は言われたので仕方なくと言わんばかりの顔つきで、おそるおそる寝入っている美姫子のスカートを膝のほうへ下ろしてゆく。すぐに真っ白なブラウスの裾の下から、細かい刺繍の入った純白の下穿きが露わになる。その純白だった筈のショーツはスカートから染みたワインで少し薄っすらと赤く染まってしまっている。
「大熊も手伝ってやれよ。脚を持ち上げてやらないと、戸川がスカートを抜き取れないだろっ。」
「あっ、はいっ。」
言われた大熊も素直に従って、掘り炬燵の下に手を伸ばして美姫子の足首を掴み上へ引き上げる。脚が持ち上げられて、戸川はするりと美姫子の腰からスカートを引き抜くことが出来た。
「あっ・・・。」
思わず戸川から驚きの声が洩れた。
下半身がショーツ一枚のあられもない格好にさせられた美姫子の姿を観て、戸川が驚きの声を挙げたのは、露わになったショーツの股座部分が奇妙な格好に膨れていたからだ。
「なんだ・・・。ああ、ナプキン当ててるだけだ。お前、初めてか。女がナプキン当ててるところ、見るの・・・。」
戸川はナプキンを当てている女のショーツ姿なんかを目にするのは勿論、初めてのことだった。しかし、それは傍で聞いていた大熊にとっても同様だった。大熊がその部分を注視すると、確かに恥骨の辺りが変に膨らんで滑らかなショーツの生地がその部分だけ変形している。薄いショーツの生地の下に明らかに何かが挟まれているのが判る。
「おい、早くそのスカート、トイレに持っていって、溢した部分を洗ってきてやれよ。染みが取れなくなっちまうぜ。あ、否。大熊っ。お前が行って来い。こういうの、お前の方が得意だろうからな。」
大熊は歳の功というのもあって、いろんな家事をこなすのにも長けている。若い戸川には女の衣服なんて、どうやって扱っていいか確かに判る筈もなかった。
「じゃ、貸してくれ。」
大熊は戸川からスカートを受け取ると、立ち上がってトイレに向かう。
「おい、襖はちゃんと閉めておけよ。」
出て行く大熊に鬼木はてきばき指示する。
下半身はショーツ一枚で寝かされている美姫子の姿をあらためてまじまじ観て、戸川は思わず生唾を呑み込む。
「おっ、初めてか。女のこんな格好・・・。」
初心な感じでどぎまぎしている戸川を見上げる鬼木の口元は、相好を崩しながらも歪んでいた。
「折角の機会だ。この下がどんなになってるか、拝ませて貰えよ。」
「えっ、この下って・・・。」
最初、戸川は上司の鬼木が何を言っているのか理解が出来なかった。
「パンツの中だよ。生理の女のあそこがどんなになってるかなんて、滅多に見れるチャンスはねえぞ。ま、一生無いかもな。」
「で、でもお・・・。」
「大丈夫だ。すっかり酔っ払っちまってるから、目を醒ましたりしやしねえからよ。さ、やんな。」
部長の鬼木の命令は絶対だった。へんに逆らったりすれば、あとでどんな酷い仕返しにあうか、同じ部の人間は身にしみるほど知らされている。
一旦命じられてしまったら、やるしかないと判っている戸川はおそるおそる正体なく寝入っている美姫子の腰に両手を伸ばし、ショーツの両端を掴む。
「やれっ・・・。」
鬼木の合図に反応したかのように、戸川は摘んだショーツを膝頭のほうへ一気に引き下げる。真っ赤な鮮血をたっぷり吸い込んだナプキンはショーツの裏側に貼り付いたまま、裏返しになる。
「戸川っ。お前、デジカメ持ってきてたよな。」
「えっ・・・。そ、そんなこと・・・して、いいんですか。」
鬼木は無言で戸川の顔を睨みつける。こういう時には言葉を発しないのが鬼木のやり方だ。しかし、睨まれたほうは、何を言われたのか自分で判断して行動に移さねばならない。
「は、はいっ・・・。」
戸川は部屋の隅に置いてあった自分のバッグのほうへ手を伸ばす。
パシャッ。パシャッ。
何度も閃光が走ってとんでもない光景が写し取られていく。
「あ~あ、撮られちゃったっ。こんな恥ずかしい格好を・・・。」
「ま、まずいですよぉ。ぶ、部長ぉっ・・・。」
「そりゃあ、拙いわな。こんな事。でも、やったのはお前だからな。おい、そのデジカメ、会社のものだろっ。俺が預かっとく・・・。」
手を差し出す鬼木に、戸川は渡さざるを得ない。
「おい、そこのティッシュを2、3枚取ってこい。」
鬼木が顎で指し示したのは、部屋の隅に用意されていたティッシュボックスだった。
「さっきトイレに行って替えてきたのだろうに、もうこんなに汚してやがる。してみると、もう垂れ始めているんじゃないか。」
ティッシュを二枚抜き取って傍に控えている戸川は、黙って鬼木と女の様子を見守っている。
「どれっ・・・。」
鬼木が女の片膝に手をいれて上へ持ち上げる。赤く汚れたナプキンを貼り付かせたままのショーツが踝のほうへずり下がる。それと同時に開かれた太腿の付け根があらわになる。白い内股を赤い物がつうっと滴り落ちた。
「おい、バカ。見とれてないで、拭ってやれ。床にまで染みがついちまうぞ。」
鬼木に言われて、戸川は慌てて手にしたティッシュを丸めると女の股間にあてがう。
「そおっと拭き取ったら、パンツ穿かせてやりな。駄々漏れしてるままって訳にもゆかないからな。」
「こ、これはどうしましょうか。」
どうしていいか判らない初心な戸川は、上司の鬼木に赤く染まったティッシュの塊を翳してみせている。」
「おめえ、初めてなんだろ。記念に持ってかせてやるよ。あとで、それ見ながら、匂いも嗅いだらいいオナニーが出来るぜ。」
「えっ、そんなあ・・・。」
そう言いながらも自分のポケットから出したハンケチに折り畳んで大事そうにしまいこむ戸川だった。
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