スカート脱ぎ

派遣通訳女子 屈辱の試練



 十九

 翌朝、鬼木が丸一日、本社に出張で来ないことを知るとスーは鍵を預かっている所長室に菜々子を呼び付けたのだった。
 「あの・・・、三倉菜々子です。失礼します。」
 てっきり所長から前日の不始末を叱責されるのだと思い込んでいた菜々子は部屋に中島スーしか居ないことを知って、安堵と不安を同時に感じたのだった。スーは所長用の机の前の回転椅子にふんぞり返って脚を組んで座っていた。そのスーの姿に菜々子は気後れを感じる。
 「こっちへ来なさいよ。」
 スーは座って腕を組んだまま菜々子に命令する。菜々子は仕方なく、すごすごとスーの真正面になる部屋の中央に進み出る。それは、何か悪さをして職員室の先生に呼びつけられた生徒のようだった。
 「どうして呼ばれたかは判っているわよね。」
 「あ、あの・・・。申し訳・・・、ありませんでした。」
 深々と菜々子はスーに向かって頭を下げる。
 「ふん、あれだけ言っておいたのに持ち場を離れたのね。」
 「ち、違うんです。ずっと待っていたのです、が・・・。ち、ちょっとだけ・・・、おトイレに立っただけなんです。」
 「ちょっとだけ? 社長がもう来るってのに、オシッコが我慢出来なかったって言うの? 小学生じゃあるまいし。」
 「で、でも・・・。」
 「でも何よ。言い訳なんか聞きたくないわ。アンタは立場がまだ判っていないようね。ようく、それを判らせてあげるわ。パンツ、脱ぎなさい。」
 「え? 今、何て?」
 菜々子は自分が何か聞き間違いをしたのだとしか思えなかった。
 「今、穿いているショーツを脱いでこっちに渡しなさいって言ったのよ。聞こえたでしょ。」
 「え、でも・・・?」
 「ショーツを脱いで、これを着けるのよ。今、すぐっ。」
 スーが手渡そうとしているものが何なのか、すぐに菜々子は悟る。
 「ぐずぐずしてるんじゃないわよ。これはちゃんと出来なかったアンタへの罰でもあるし、ちゃんと出来るようになる為の躾けでもあるのよ。」
 スーの有無を言わせぬ権幕に、菜々子は完全に圧倒されていた。半分、頭の中が真っ白になりながら、無意識のうちにスカートを捲り上げ、上履きのシューズを脱いで裸足になるとストッキングとショーツを言われるがまま降ろしていた。
 「さ、ショーツを寄こすのよ。貴方は私がいいと言うまで、今日はこの紙オムツをしたままでいるのよ。トイレに行く事も当然許さないわ。」
 「そ、そんな・・・。」
 「本当に大事なVIPにお仕えする時は、トイレに立つ事も赦されないのよ。そんな時の為にこういう物はあるの。それを貴方にも身を持って思い知って貰うのよ。わかったわね。返事は?」
 「あ、は、はいっ・・・。」
 同性ではあっても他人の前でショーツを脱ぎ、紙オムツを着けさせられるのは堪えきれない屈辱だった。しかし菜々子はスーの勢いに、そうせねばならない罰を受けなければならない身なのだと思い込んでしまっていた。震える手で腰骨の所で両サイドの粘着テープで紙オムツを固定する。その上からストッキングを穿き直すと、それが将に紙オムツを外させない為の枷であるかのように感じるのだった。
 「じゃ、行きなさい。いい? 私がいいと言うまでそれは外せないのよ。判っているわね。」
 「しょ、承知いたしました。」
 深々と首を垂れお辞儀すると、菜々子はスーの手に自分のショーツを残したまま所長室を後にしたのだった。

 「どうしたの? 何か元気ないわね、菜々子さん。」
 事務所に戻ってきた菜々子を心配そうに声を掛けたのは前日不在だった美姫子だった。美姫子は自分が居ない間に何が事務所であったのかは全く知らないのだった。
 「ああ、倉持さん。何でもないの。ちょっと元気が出ないだけ。大丈夫よ。」
 そう答えた菜々子だったが、美姫子には何か秘密があるようにしか思えないのだった。事務所に入る直前にその菜々子と美姫子の遣り取りを入口の陰で耳にしていたスーは、平然と知らん顔をして事務所に入って自分の席に着く。スーはそれとなく菜々子と美姫子の様子を窺う。
 (ふん、ほんとはアンタがそういう目に遭う筈だったのに。運が良かったわね。今度はアンタにもそういう惨めな思いをさせてやるわ。絶対にね。)
 そう心の中で美姫子に対して呟くスーなのだった。

 「ねえ、大熊さん。貴方にちょっとご相談があるの。一緒について来て下さらないこと?」
 「ん? 何だい、藪から棒に・・・。」
 大熊は突然声を掛けられた中島スーに訝し気な目で見上げる。
 「大熊さんにとっても、ちょっと良いことよ。どうする?」
 「どうするって、言われても・・・? 良い事・・・なんだな?」
 「そうよ。うふふふ。」
 スーの妖しげな眼つきに何か惹かれるものを感じて思わずスーの後をついていく大熊だった。
 スーが大熊を連れ込んだのは、まだ使われたことのない会議室になる予定の部屋だった。二人きりになるや、切り出したのはスーのほうだった。
 「ねえ、貴方。いつもデリヘルとかで欲情を処理してるんでしょ? 聞いたわよ。」
 「なんだい、急に。誰からそんな事、聞いたんだよ?」
 「ま、即座に否定しないって事はそうなんだ。誰からかは言えないけど。でも、欲情が溜まってるんなら、いいもの差し上げようかな。っと言っても、あげる訳にはいかないから貸してあげるだけだけど。」
 「何だよ、貸すって?」
 「これよ。」
 そう言って、スーは大熊に茶色い紙袋を差し出す。狐につままれたような気持ちで大熊はスーが差し出す紙袋を受け取る。
 「こ、これっ・・・。」
 大熊が紙袋の中を覗き込んで、白い塊のようなものを見つけたときは何だか判らなかったのだが、すぐにそれが何であるかに気づく。
 「こ、これって、パンティ・・・か?」
 「私のじゃないわよ。勿論、大人のオモチャの店に売ってるようなものでもないわ。ついさっきまで誰かが穿いていた本物の生パンよ。それも貴方のよく知っている身近な人の。」
 「えっ・・・。」
 大熊は、思わず身近な女性を色々想像してしまう。すぐに思い当たったのは倉持美姫子だった。それを思い当たったのは、歓迎会と称して騙して薬を飲ませて下着を脱がせたことがあるからだった。中島スーが何かにつけ倉持をライバル視して、虐めようとしているのは傍から見ていても明らかだった。
 「どうして、こんなモンを・・・?」
 「それは言えないけど、アンタに貸してあげようと思ってね。どう、刺激的でしょ?そうね、夕方位までなら貸してあげるわ。その間、好きにしていいわよ。少しぐらいなら汚してもいいわ。」
 「え、よ、汚すって・・・。だ、誰のなんだ、これは?」
 「それは教えられないけど、想像してみるのね。じゃあね。また、夕方。」
 そう言ってスーは部屋を出ていってしまう。一人残された大熊は狐につままれた気分で袋から抓み上げた下着を、本物かどうか匂いを嗅いでみるのだった。

 スーから渡された紙袋を持ってこっそり男子トイレの個室に入った大熊は、再度他に誰も居ないか気配で確かめる。しいんと静まりかえっているのを確認すると、徐に紙袋の中に手を差しこんで、中身を抓み上げる。鼻にあててみると、微かだが女性特有の匂いがする気がしてくる。片手で匂いを嗅ぎながら、もう片方の手はズボンのチャックを降し、硬くなり始めている陰茎を外に取り出す。
 (ううむ。たまらんな、この匂い。誰のだろう。中島ってやつは、倉持のことを毛嫌いしているから、辱めるなら倉持のってところだろうか。鬼木部長は何か倉持の弱みを握ってるらしいから、それを教えて貰って倉持に有無を言わせず下着を取り上げたに違いない。)
 そんな事を考えながら自慰に耽っていると、ついにはその頼りなげな布きれを自分の陰茎に巻きつけたくなる。クロッチの内側の陰唇にあたる部分にペニスの先をなぞらせる。それからショーツの残りの布を怒張に被せると上から布地ごとしごき始める。頭の中では裸に剥いた倉持美姫子を犯している自分がいた。
 (う、ううっ・・・。)
 無意識に手の動きが速くなってゆく。
 「あ、し、しまった・・・・。」
 気づいた時にはパンティの中に暴発させてしまっていた。
 (まずいっ・・・。)
 ねっとりしたものが垂れそうになって、慌てて大熊はトイレットペーパーを繰って自分がつい洩らしてしまったモノを拭い取る。
 (『少しぐらいなら汚してもいいわよ』確か中島はそう言ってたよな。)
 拭き取ったショーツの裏側をひっくり返してみると、薄っすらとだが拭き取った痕が沁みになっているようにも見える。
 次第に萎えていく陰茎を弄びながら、大熊は射精した後のけだるい痺れを心地良く感じていた。
 (今は無理だが、もう少し経ったらもう一回は行けるかもしれないな。一回だけで終りにするのは勿体ない。)
 そんな事を考えながら萎えた陰茎をズボンにしまうのだった。

 「おい、戸川よ。玄関ホールに女の下着みたいのが落ちてたっていうんだけど、知らないか?」
 大熊は事務所の隅に居た戸川に向かってそう問いかけてみる。話し掛けたのは事務所で一番年少の戸川にだが、大熊の目は事務所に居る派遣女子たちに向けられている。びくっと首が動いたのは意外にも倉持ではなく、三倉菜々子の方だった。
 「まさかあ。そんなものが落ちてるわけないじゃないですか。私は特に気付きませんでしたけど。」
 「そうかあ? じゃ、何かの見間違いだな。きっと。」
 そう言いながら横目で女たちの様子を窺っていた大熊は、三倉菜々子が書類入れの袋を手にすくっと立上ったのを見逃さなかった。事務所の扉までは静かにゆっくりと歩いていたが、出るなり小走りになった足音を聞き逃さない。大熊も気配を殺しながらゆっくり後をつける。
 階段の踊り場から身を屈めて玄関ホールのほうを窺うと、菜々子があたりをきょろきょろ見回しているのが見て取れた。
 (ははあ、あいつのだったか。)
 大熊は駄目押しのつもりでわざと静かに音を立てないように玄関ホールへ歩いてでる。大熊の姿を認めるなり、びくっと肩を動かして明らかに平静を取り繕おうとしているのが判る。
 「あ、お、大熊さん・・・。」
 「おう、確かあんたタイ語担当の・・・。」
 「三倉です。三倉、菜々子です。」
 「どうかしたかい?」
 「あ、いえ。来客用のスリッパが揃っているか確かめるように中島さんに言われていたので。」
 「へえ、そうかい。大変だな。派遣も。通訳の仕事だけじゃ済まないんだな。」
 「そ、それは・・・。会社ですもの。仕方ありませんわ。」
 「いい心掛けだな。じゃあな。」
 菜々子に背を向けると、大熊はほくそ笑む。
 (必死で芝居をしてたって感じだな。あの長いスカートの下はノーパンなのかな。)
 パンティを奪われたのが長身の三倉菜々子だと知って、ノーパン姿をつい想像してしまう大熊だった。

 午前中は極力水分を採らないようにしていた菜々子だったが、それだけで自然の摂理に抗える筈もなく、お昼が近くなるにつれ、微かな尿意は次第に強く感じられるようになってきた。
 事務所に他の女性が居なくなるのをずっと待っていた菜々子だったが、とうとう耐え切れずスーの席に歩み寄る。
 「あの・・・。もう、赦していただけませんでしょうか。」
 菜々子は蚊の鳴くような小声でスーにすがるように言ったのだった。
 「え、何?」
 突然、甲高い声で返事をするスーに、つい皆がこちらを注目していないか振返って見てしまう菜々子だった。
 「もう返して頂けないでしょうか。」
 スーは顔をあげて、じっくり菜々子の方を睨みつける。
 「じゃあ、する事はもうしたの?」
 「あ、そ、それは・・・。」
 「まだなのね。いいこと、あれはいざという時の為の訓練のようなものなの。言ったでしょ。ちゃんと出来るようになるまでは駄目よ。」
 ぴしゃりとスーに言い放たれて菜々子はすごすごと自分の席に戻る。まわりの女性たちは何を怒られているのかと怪訝そうに二人の会話を聞いていたが、言葉に隠されたものが何なのか気づく筈もなかった。
 (ああ、もう駄目。これ以上、我慢はしきれないわ。)
 女子トイレの個室に籠った菜々子だったが、何度か腰の紙オムツを外して排尿しようかと考えたが、それを気づかれた時のスーのことを考えると怖くなって出来ないでいた。
 (ああ、こんな格好でするなんて・・・。ああ、惨めだわ。)
 我慢の限界を迎えた菜々子は、観念して括約筋を少しだけ緩めてみる。途端に紙オムツの中でじわっと生温かいものが広がるのが感じられる。しかし、すぐにその感覚は消えてなくなる。一度出してしまうともう止められなかった。菜々子は唇を噛んで口惜しさに堪えながら立ったまま放尿を続けたのだった。

 所長が不在の時のスーはしたい放題で、その部屋の主になったかのような気分で所長の椅子にふんぞり返って電話で大熊を呼び付けたのだった。
 「ちゃんと持ってきてやったぜ。」
 「その顔は存分に愉しめたみたいね。」
 「そりゃ、まあな。もう俺も齢だし、三回が限界だな。もうあそこが芯の部分でジンジン痺れてら。」
 「まあ、いやね。露骨な表現。」
 「でも、どうやって脱がさせたんだい。あいつだろ? あのコケシみたいな背の高いやつ。」
 「さあ、どうかしらね。何か私が誰かを脅迫したみたいな言い方しないでね。大事な訓練の間に預かっていただけなんだから。」
 「訓練? 何の訓練なんだい、それって。」
 「それは、ヒ、ミ、ツ。」
 スーは舌をぺろっと出してウィンクしてみせる。
 「いつでもその訓練とやらに協力してやるから、また声を掛けてくれよ。」
 「そうね。考えとくわ。」
 スーは大熊から紙袋に入ったものを受け取ると、大熊が出ていくのを待ってから中身を取出し、裏返してその表面を検めてみる。鼻に近づけるとつうんと栗の花のような匂いがする。沁みは思ったほどくっきりとはついていないが、目を凝らせば何かを拭きとったような痕が残っていなくもなかった。
 スーは携帯を取り上げると、今度は菜々子を呼び出すのだった。

 「あの・・・。もう返して頂けるのでしょうか?」
 「ちゃんと中に出せたの?」
 「え? あ、はい・・・。」
 「何度したの?」
 「え・・・、あの、さ、三回です。」
 「どうやってしたの?」
 「どうやってって?」
 「立ってしたの? それともしゃがんで?」
 「あ、あの・・・。立って・・・、立ってしました。」
 「アンタ、立ったまま出来るの。器用ね。」
 「そ、そんな・・・。」
 「見せてみなさい。」
 「え、見せるって・・・?」
 「捲りなさいって言ってるの。」
 「え、そんな。」
 「返して欲しくないの?」
 「そ、それは・・・。わかりました。」
 菜々子は恥ずかしさに首をうなだれたまま、スカートの前部分を捲り上げる。

自捲り

 「一度も外さなかったわね。」
 「あ、はいっ。言い付けを守りました。」
 「今度から私が着けなさいっていったらちゃんと着けたまま出来る?」
 「え、ええっ。」
 「ええじゃなくて、何が出来るのかちゃんと口に出していいなさい。」
 「え、あ、あのう・・・。か、紙オムツをして、トイレを我慢します。」
 「それで?」
 「トイレに行きたくなったら、紙オムツの中に出します。」
 「ちゃんと言えたじゃない。それでいいのよ。じゃ、これっ。穿き替えたらその辺の汚物入れなんかに入れといちゃ駄目よ。ちゃんと自分の家まで持帰るのよ。いい、わかったわね?」
 「わ、わかりました・・・。失礼します。」
 半泣きになって帰っていく菜々子の姿に笑いを噛み殺しているスーだった。
 菜々子が出ていった後、ふとスーは鬼木の所長机の鍵付の抽斗が少し開き掛かっているのに気づいた。
 (あら、鍵、掛かってないのかしら?)
 試しにスーが抽斗を引いてみると、すうーっとそれは開いてきた。一番上に乗っかっている書類がスーの目に留まる。
 「あら、何かしら? え、こ、これは・・・。こんなものがあったのね。ははあ。それであの倉持美姫子はあんな短いスカートで天突き体操なんか皆の前でやらされて文句も言えなかったって訳ね。これはいい事を知ったわ。だったら私もアイツに言うことを聞かせてやろうじゃないの。アイツだったら、紙オムツを嵌めさせるぐらいの罰じゃ済まさないわよ。」
 秘密を知ったスーには、嗜虐心をそそらせる悪巧みが次々と浮かんでくるのだった。

mikiko

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